採用スケジュールの見直しやオンラインへの採用体制の移行…。
コロナ禍という未曾有の事態において、2022年新卒の就活環境は大きな混乱に見舞われています。企業にとっても今回の採用活動は苦労の多いものとなったのではないでしょうか。
そこで、実際に22卒として就活を行った筆者が自身の体験談をご紹介します。
私は都内の4年制大学に通っており、20年12月からREADY TO FASHIONでインターンを始めました。就活ではあまり志望業界を絞っていなかったので、ファッション・アパレル業界をはじめ、幅広い業界の選考に参加しました。
就活をするなかで、それぞれのフェーズでどのようなことをして、何を感じたのかを包み隠さずお伝えしていきます。オンラインという新たな手法が浸透した今後の採用活動のご参考になれば幸いです。
<目次>
ここから就活スタート!インターン(20年夏〜20年冬)
一般的には大学3年生の夏からインターンに参加して就活を本格的にスタートする人が多いと思います。
しかし、22卒の就職活動はイレギュラーなものだったので、今までのスケジュールで進めることができなかった人も多かったと思います。
私自身、夏のインターンは1社のみ選考に参加しただけでした。その最大の理由として、情報共有の機会が少なく夏の時点で就活の実感が湧いていなかったことが挙げられます。
まず、3年生になった20年夏の時点では登校制限のため大学に行く機会が一切なく、友達と就活について話したり、大学内で就活ムードを感じられたりする場面があまり多くありませんでした
また、22卒向けのインターンは開催自体が延期・中止になっていたり、開催されたとしてもオンラインがほとんどだったりと、就活生の間でのコミュニケーションの機会が限られていたと思います。
就活は情報戦と言われることもありますが、これらの情報共有の場が減ったことで就活の進め方がわからず、私を含め22卒の学生は苦労したと思います。
コロナ禍以前であれば、夏のインターンは就活準備のために他大学の学生と情報共有ができる貴重な場でした。先輩の話によると、そこで出会った他大学の人と話した時に、大学ごとの就活支援の充実度に差があることや、自分の大学が学生の就活に比較的無関心であることなどを知って焦りを感じたそうです。
実際、私は20年秋ごろにオンラインのインターンに参加して、他の就活生と交流することでようやく就活の実感が湧きました。
このように学生にとってインターンは他の就活生と情報を共有することで自分の現在地を把握する重要な機会です。
そのため、オンラインでのインターンであっても学生同士でコミュニケーションを活発に取れるようなものが望ましいと思います。
オンラインが主流!説明会(20年冬〜21年春)
私が本格的に説明会に参加し始めたのは、21年の2月ごろからです。説明会は大手採用情報サイトから応募していました。
参加した説明会のほとんどはオンライン開催でした。オンラインであれば、選考に進むか決めていないけれども少し興味があるという程度でも参加できる上、質問もチャットで行えるため、”気軽さ”という点でオンライン説明会はかなりありがたかったです。
もちろん対面式の説明会もありましたが、オンラインの気軽さに慣れてしまっていたので、よっぽど志望度が高い企業でない限り、対面での説明会に参加する気にはなれなかったというのが正直な感想です。
オンライン説明会は大きく分けて、収録済みの映像を配信するオンデマンド配信とリアルタイムで配信するライブ配信の2種類がありました。個人的には、ライブ配信の方が社員の方の雰囲気を感じられたり、他の就活生の顔が見えるので好きです。
ある企業では、会社概要や事業内容などを事前にオンデマンドで配信し、説明会当日はライブで社員の方が働き方について詳しく話して学生の質問に答えるという形式をとっていました。
会社概要や事業内容などの基本内容を伝えるには、一方向的に説明可能なオンデマンド配信の方が繰り返し見ることもできるため適しています。また、働いている人の空気感を伝えたり、学生の質問に答えたりできる点で、双方向的にコミュニケーションが取れるライブ配信が適しています。こうしたそれぞれの特性を活かして使い分けるのは良い方法だと感じました。
21卒の就活では、各社が情勢を見つつ対面での説明会を行なっていました。特にファッション・アパレル業界の企業は対面を重視している企業が多かったようです。21卒の先輩は繊維商社(アパレル商社)のみで行われる合同説明会に参加し、新たな企業を知ったり、参加企業の特徴をその場で比較することができたと話していました。
22卒でも大規模な対面での合同説明会は行われていたようですが、感染対策に不安を感じて参加しなかった学生も一定数いたと思われます。オンラインでも合同説明会は開催されていたものの、企業ごとの特徴を肌感覚で比較することや直接人事とコミュニケーションをとって印象に残るというテクニックは対面だからこそ可能であり、オンラインでは代替できない部分も多かったと思います。
一番苦労したかも…書類選考(21年春)
ほとんどの企業がオンラインで書類提出をすることができました。
提出方法は私がエントリーした企業の中では、企業ごとに作成したマイページ経由が10社、大手採用情報サイトのオープンES(エントリーシート)経由が5社、その他(メールやGoogleフォーム、郵送)が4社となっていました。
サイトの仕様なのか、マイページのフォームに直接入力すると文章の折り返しがうまくいかないことが多かったので、ワードソフトで作成した文章をフォームに貼り付けて提出するという方法が一般的です。マイページ上で提出したESは、後から確認することができないので、何を書いたのか記録しておくためにもワードファイルを保存しておくことをおすすめします。
オープンESは学歴や住所など同じ内容を何度も入力する手間が省けるためとても助かりました。使い回しができるとはいえ、自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)などはエントリーする企業に合わせて言い回しを変えていました。
メール提出ではファイルにパスワードを設定すべきかでかなり悩みました。ネットにはビジネスマナーとして必要という意見と企業の手間が増えるので必要ないという2つの意見がありましたが、私は結局パスワードを設定しないまま提出しました。
21年2月〜3月が書類提出のピークで、毎日何かの締め切りに追われてとても忙しかったです。
なかには書類だけでなく、自己PR動画を撮影して提出するような選考もありました。話す内容を覚えて、制限時間内に噛まずに言い切るというのはESを書くよりも大変だったため、2分程度の動画を撮るのに1時間くらいかかってしまったこともあります。しかし、文字だけでは伝わらない自分の良さを伝えるには効果的な方法だと感じました。
ここから本番!面接(21年春〜21年夏)
面接の約7割はオンラインで行われました。1次面接はオンライン面接、選考が進むと対面面接というような企業もいくつかありました。
オンライン面接は自分の部屋など慣れた空間で話すことができるため、対面面接よりもリラックスして臨めました。なにより交通費を節約できることが大きなメリットです。
一方で、通信環境の乱れで会話のリズムが合わなかったり、相手の表情の変化がわかりづらかったり、対面に比べるとコミュニケーションが取りづらいと感じる場面もありました。
対面面接の最大の利点は、実際に企業に訪れて社内の雰囲気を肌で感じることができる点です。面接終了後に社員の方と話すことができたり、面接以外の部分で得ることがたくさんありました。これはオンライン面接にはできない大きな強みです。そのため、個人的には選考の中で1度でも良いので実際に企業を訪れる機会があると良いと思います。
一方で、最近の情勢を踏まえて対面面接を行うのであれば感染対策を徹底することは必須です。ある会社の選考で対面面接でマスクを外すように言われた時は正直驚きました。
オンラインや対面によらず、選考の中で企業が誠実に対応をしてくれると印象が良くなります。選考を通過しなかった学生にも結果を伝えてくれる、面接でリラックスして臨むように声かけをしてくれるなど、小さなことですが苦労の多い就活の中ではそうした対応で気持ちが軽くなりました。
例えば、あるアパレル企業では説明会兼1次選考で、人事の方とコミュニケーションを取りながら自分と企業がマッチするのかを考えることができました。その企業は社長もかなりラフな格好で参加しており、親しみを感じられてよかったです。
このように、選考を通じて企業と就活生が双方向的に理解を深めるようなコミュニケーションをとることが大切だと思います。
アフターコロナの採用に向けて
就活に限らず日常生活全般がオンラインへと移行して、人との交流が希薄になったために、就活の情報や悩みを共有する機会が奪われたことが22卒にとって一番の不安の種だったと思います。
オンラインという新たな就活の手段の登場は学生にとって悪いことばかりではありません。時間や場所の制約がなく、学業との両立がしやすくなったり、金銭的にも余裕が生まれるなどのメリットもありました。
実際に、2021年5月にエン・ジャパン株式会社が運営する新卒学生向けスカウトサービス『iroots』上で行われた調査によると、22卒の学生のうち全体の92%がオンライン就活にメリットを感じると回答しています。
1年前の20年時点での結果と比べると、その割合は22ポイント増加しており、実際に選考に参加する中でオンライン就活をポジティブに捉える学生が増えたことがわかります。
しかし、社員の人柄やオフィスの雰囲気などは実際に会うことで初めて直感的に感じられることであり、これをオンラインで代替することはできないと実感しました。
そのため、アフターコロナの時代の採用活動は、全面的にオンラインに移行したり、コロナ以前の対面方式にただ回帰するのではなく、状況に応じてそれぞれの良さが活かせして使い分けていく柔軟な姿勢が求められるのではないでしょうか。
text:岩田日向子(READY TO FASHION FOR JINJI編集部)