「KEISUKEYOSHIDA(ケイスケヨシダ)」というブランドを知らない人でも、このルックをどこかで見たことがある人は多いのではないでしょうか。
あるTwitterの一般投稿がきっかけで”ゲーマールック”と話題になり、瞬く間に2000を超えるRTを得たKEISUKEYOSHIDAの16ss。このツイートが反響を呼び、多くの業界関係者からも高い評価を受けています。
今回は、これからのファッション業界を牽引していくに違いない注目の若手デザイナー”吉田圭佑”さんにこれからのファッションの未来、可能性について、吉田さんご自身とファッションについても交えながら伺って来ました。
「かっこいいんだよ」と言ってあげられるブランド
吉田圭佑(よしだけいすけ)・・・
1991年東京都出身。立教大学文学部卒業ここのがっこう、ESMOD JAPON「AMI」にてファッションを学ぶ。15A/WよりKEISUKEYOSHIDAとして活動を開始。「東京ニューエイジ」に参加しランウェイ形式でコレクションを発表。
16S/SよりMercedes-Bens Fashion Week TOKYOに参加。
公式HP:http://keisukeyoshida.com
──初めに、ブランドを始められたきっかけを変遷と共に教えてください。
吉田圭佑(以下:吉田):まず変遷ですが、僕は立教大学在学中に”ここのがっこう”*1に通い、卒業しても1年間は”ここのがっこう”に通いながら衣装の現場でインターンをしました。その翌年にESMODの”A.M.I.” *2という卒業後すぐにブランドを立ち上げるためのクラスに入り、そこは”デビューコレクションを作る”というクラスで、1年かけて制作したコレクションが15awのコレクションです。それをESMODのコレクションで12体を発表し、同時に東京ニューエイジ*3に入り”渋谷ファッションウィーク”のイベントの一環で5体のコレクションを発表しました。
翌シーズンからここでコレクションを本格的に発表しています。
*1 ここのがっこう-writtenafterwardsの代表である山縣良和が開校したファッションクリエーションを学べる学校。
*2 ESMOD A.M.I. -服飾・ファッション専門教育機関エスモード ジャパンが開講するファッション教育コースの一つ。
*3 東京ニューエイジ-writtenafterwards代表の山縣良和と、MIKIO SAKABE代表の坂部三樹郎がプロデュースする「日本の若手デザイナーの発掘と支援」を目的としたプロジェクト。
(渋谷ファッションウィークより|http://www.shibuya-fw.com/archive/2015ss/)
ブランドを始めたきっかけは、もともとファッションが凄く好きで、中3の頃「ファッションに携わる仕事がしたい」と思うようになり始めたことからです。
その当時、雑誌”ChokiChoki”が流行っていてサロンブームみたいなものがあり、そんな中ファッションに興味を持ったきっかけは「イケてる奴になりたい!」「学校の中のイケてるグルーブに入りたい!」という感情でした。
当時、中3で周りにおしゃれな人が少なく僕は勉強も運動もできなかったけれど、その中で「何か1番になりたい!」と考えた時、そこに”ファッション”があって、単純に自分の中でそれがかっこいいものだったから「それで変われるんだ!」という思いから更にファッションに興味を持つようになりました。
それから片っ端からファッション誌を読んで、いろんなものに影響を受けてファッションの世界にのめり込んでいく一方で、学校では「調子乗ってんじゃねーよ!」みたいな雰囲気になり若干いじめられたんです。
それでも、ファッションでこそ自分に自信を持つことが出来て、その感情が更にファッションにのめり込むきっかけにもなり、中3で「ファッションデザイナーになりたい」と漠然と思うようになります。
僕は内部生だったので親とももめながら結局立教大学に進学し、大学に入ってからもデザイナーになりたいという思いは変わらず、大学のファッションサークルに入りました。経験がないので出来ないなりに洋服を作りながら「自分はファッションでどんなことができるだろう」と手探りで探し始めたのが大学の3年間でした。
でもその時間が今の自分にとって”よかった”と思える時間で、性格的に”充足していない感じ”が良かったんです。
なぜなら、ファッションが好きで好きで仕方なくて、そのままの状態で服飾学校に行ってもそれは凄く良いことだとは思うけれど、それと同時に”教わったものが全て”になる危険性が僕の性格的にあったなと思って。
僕は、結局”やりたいのに出来ない”みたいな状態の3年間の中で自分なりの”ファッション観”や”考え”をぐるぐるもがいていて、それが今にも通じていると思います。
だからこそ、いざ「ブランド始めよう!」と思った時に「ブランド始めたい」という思いがだんだんと強くなってきて、「どんなことができるかな自分に」と思った時に中学の頃に戻り、
『ファッションで自分は変わることは出来たけれどもイケてる自分にはなれなかった。そんな中で、日本、日本に限らず若い子たちが変わろうと思っている瞬間それがカッコいいか、カッコよくないかはわからないけれどそのキラキラしている瞬間みたいな感情に「かっこいいんだよ」と言ってあげられるブランドを作りたい』と思い作り始めたコレクションが15awで、それがブランドコンセプトの根源です。
明るいのか暗いのかわからない雰囲気
(KEISUKEYOSHIDA 15aw)
──ブランドの中で一番大事にしている感情なんですね。
吉田 : そうです。僕は”明るくただただポジティブなだけ”ではなく、”明るいのか暗いのかわからない雰囲気”がケイスケヨシダの凄く大事なところだと思っています。
”もがいている感じ”、”彼らを取り巻く狭い環境全部が彼らにとっての社会で、その中でもがいている”みたいな。”ちっぽけだけれどその人にとっては全て”で、”でもそこから抜け出したい!”という気持ちに寄り添ってあげられるような、そういう気持ちの中にある”イケてる何か”。みんながそれを持っていれば築けるけれど、それをピックアップしてあげたいなと思ってコレクションを作っています。
誰もが実は共感できるようなところがやりたい
──ケイスケヨシダの大きな特徴でもあり話題にもなったランウェイに登場するモデルさんの起用について教えてください。
吉田 : 1シーズン目〜3シーズン目まではランウェイで発表しているのですが、形式が”箱”のランウェイで座ってお客さんが見るランウェイのオーソドックスな形です。
僕はファッションショーは未来のファッションが出てくる場所だと思っています。
春にはその年の秋冬の服が、秋には来年の春夏の服が出てくるように、デザイナーにはそういう所で”ちょっと先の未来”を作る仕事で、”ちょっと先の文化を作れるかもしれない”ということがあるんです。
これまでのファッションショーは”かっこいい人”が出てくるのが当たり前で、”かっこいい人”とか”かっこいい物”に本質的に憧れて、そこに近づいていくってのがファッションの流れの基本だと僕は思っています。だからこそ、自分はそういう形式の中で”普通の子”をファッションとして捉えて そこに憧れる というのをやりたかったんです。
僕がモデルを選ぶ中で一番大事にしていることは”若干目が死んでいる事”なのですが、そういう”日常が退屈そうな子たちが緊張感を持ってランウェイを歩く”という事が重要だと思っていて、”生々しさ”、モデルの人が歩くのとは違って彼らには”恥じらい”や”緊張”や”その人なりの歩き方”があり、それを見ているこっちもいろんな心の動き方がすると思うんです。不安にもなるしドキドキもする。
でもそれは彼らのどこかに”自分を重ねたり”、”自分の見てきた情景を思い起こしたりする”からだと思うんです。
僕がこれまでの3シーズンでやって来たことは「誰もが実は共感できるようなところがやりたい」という事で、そういう所をモデルでも意識していました。
1番の違いはブランドの服とお客さんの距離感
──中学生の頃、吉田さんにとって”かっこよくなりたい”とか”話の中心になりたい”という目的の道具だったファッション。今の吉田さんの中では一種の暴力のように変化しているとも感じられるのですが これからの吉田さんの目指していくゴールみたいなものがありましたら教えてください。
吉田 : 僕としては、よくこういうインタビューで“ファッションに対してのアンチ”として聞かれるんだけれど、そういうつもりは一切なくて、誰よりもファッションが好きで、ブランドを始めて、そんな中でファッションに対して反対なことをやっているのではなくて、ファッションの”深くもあって浅くもある”魅力的な部分を大事にしています。そして、その中にあるものが”共感”だと思うんです。
これまでのファッションと、僕がやっていきたいファッションの1番の違いはブランドの服とお客さんの距離感。
これまでのファッションというのはその時の”カルチャー”とかが入っていて、そこから生まれる”装いの文化”があるけれど、僕がやりたいのはもっと近い距離での活動です。
うちの服を見て共感してくれた人がうちの服を着てくれて、そしてまたそこで共感者と繋がっていく。
そういう共感の中で繋がっていきながらこういう側面もあるよねというのが大きくなって、ゆくゆくはその共感を国外にも持って行きたいなと思っています。
”表に出せない部分”というのを大きな”ファッション”という枠の中で見たときにこれも”イケてるんだよね”、”カッコイイいいよね”といえるようにするというのが僕自身大事だと思うんです。
僕は自分が作っているものはダサいと思わないし、ダサいという言葉は絶対使わないようにしていますが、”カッコよくなりたい”と思う感情って”凄く弱い火”みたいだなと思っていて、”カッコよくなりたい”と思った瞬間の”弱いけれど強い火”みたいなものをこれからも正当化していきたいなと思っています。
後編はこちら↓
interview:Yoshiro Ishikawa
text:Tomomi Abe
photo:Izumi Tanaka