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「ファッションシステムが変わる時?《オートクチュールからSee Now Buy Nowまで》」前編では、オートクチュールの始まりからプレタポルテまでの流れを歴史を踏まえて触れていきました。

後編では、現在のファションシステムの主流「プレタポルテ」からの新しい形「シーナウ・バイナウ(See Now Buy Now)」について触れ、ファッションシステムの革命とも言われつつあるこのワードについて紹介します。

※シーナウ・バイナウ(see now buy now)とは?
ファッションショーで目にしたものをすぐに購入できる仕組み。

変革の一端は、待たない習慣?

業界にいる人間は当たり前だと思うかもしれないが、我々消費者は、実は、1年前に発表されたコレクションを新作として購入している。しかし、近年、ブランドと消費者との距離感はどんどん縮まっている。オンラインでコレクションの様子が流れ、全世界にリアルタイムで配信されるのが当たり前になっている中で、消費者の心に「あの新作、今すぐ買えればいいのに」という気持ちが出てくるのは当然かもしれない。電話もメッセージアプリもSNSも、常にどこかで誰かと繋がれる。発信できる。待つのであれば、待たなくて良いものに切り替える。そんな「待たない」習慣が現代社会には広がっている。そんな中、生まれたのがこのシステムだ。

しかし、これまでのサイクルを変えることに疑念を持つブランドもまだまだ多くある。今回は、このシステムに賛成派、反対派、両者の紹介をしていく。

賛成派

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Burberry「セプテンバー・コレクション」

もちろん最初に取りあげたいブランドはバーバリーだ。同ブランドはいち早くファッションシステムの改革を導入してきた。2010年にはショーとオンラインショッピングを組み合わせた施策で、アウターウェアとバッグをショー直後に受注販売してきた。そして、2016年9月19日(現地時間)に行われた「セプテンバー・コレクション」では、メンズとウィメンズを同時に発表し、ショー直後から店舗とオンラインで全てのアイテムの販売を開始した。

トム・フォードも2016-17秋冬コレクションを9月7日(現地時間)に発表。それと同時に東京ミッドタウンにあるイセタンサローネでは他店に先駆け商品を全て展示・販売を開始。また、イセタンサローネではさらに秋冬コレクションをストリーミング配信で上映した。

トミーフィルフィガーもNYコレクションにて#TOMMYNOWを発表した。同社もショー直後に全てのアイテムの販売を開始した。オンラインでもオフラインでもたくさんの人にファッションを楽しんでもらえるようにライブストリーミング配信で会場の雰囲気を体験できるようにした。

反対派

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GUCCI 2017年春夏コレクション

グッチはこれまで通り「See Now Buy Later」のサイクルを維持する方向だ。ラグジュアリーブランドとして、クリエイティブと生産プロセスの重要性を尊重していく。そして同ブランドを傘下に持つKering(ケリング)グループの会長 François-Henri Pinault (フランソワ・アンリ・ピノー)も異議を唱えている。

シャネルとフェンディーを手がけるKarl lagerfeld (カール・ラガーフェルド)も「See Now Buy Now」の仕組みを「めちゃくちゃだ」と一蹴している。彼は「Business of Fashion」の取材で「私がファッションショーにてコレクションを発表するのは、それを見た顧客がじっくりと時間をかけて吟味し、工房のスタッフが最高の品質の製品を万全の状態で生産し、また同時にエディターたちがその作品を美しく表現してくれるから。もしそれが無くなったら、何もかも終わりだ。」とも発言し、これからも今まで通りのスタイルを維持する姿勢を見せた。

フランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会(通称サンディカ)の会長Ralph Toledano (ラルフ・トレダノ)も「パリがファッションの中心地なことは明白。そして、我々の協会の加盟メゾンに関して言えば、これまで通りのファッションショーの開催方法は有用だと認識している。」と米WWDの取材で発言している。

See Now Buy Nowは一時的ブームで終わるのか、それとも時代を変えるのか

今回、See Now Buy Nowの流れについて賛成派と反対派を紹介してきたが、まだ意思表明をしていないメゾンもこれからどんどん意思表明することになるのではないだろうか。しかし、時代の変化に対応するのであれば多くの選択肢を用意しておく方が良いだろう。例えば、余力のあるビッグメゾンであれば、まずジャーナリスト向けにこれまで通りのスケジュールでコレクションを発表し、消費者に向けては販売直前に発表する場を設けるなど2段階での形式を取り入れるなどの方法も可能だ。

どんな業界でも時代の流れとともにシステムの変化を求められる。ファッション業界が取り入れるべき「新しいシステム」と「残すべきシステム」を見極めることが今後必要になってくるであろう。

READY TO FASHION MAG 編集部

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