ITやファストファッションの普及により、人がファッションに触れる機会は以前よりも格段に多くなった。しかし、「キャリア」の視点に立ってみると、業界の現状を知る教育者や、学生が現場を体験する機会は不足していると言える。

この連載では、そのような課題を解決するために、ファッション業界を志す学生が本当に知るべき「生」の情報を伝えていく。文章は株式会社StylePicks CEOの 深地雅也氏が執筆する。

「学生の時に何を一番勉強しておいたらいいですか?」

専門学校の講師をしておりますとよく質問される項目がお題の通りの、

「学生の時に何を一番勉強しておいたらいいですか?」

というもの。

まだ社会に出ていない学生さんからすると、社会に出たらどんな知識・技術が必要かわかりづらいもの。学生のうちから簡単にできて、尚且つ役に立ちそうな事、、、という事でいつも回答する内容は、

・店頭リサーチ

一択ですね。

マーケティングはフレームワークだけだと役に立たない

店頭リサーチが必要な理由をマーケティングを例にあげてみます。大学でも専門学校でも、マーケティングのフレームワークについては軽く学ぶと思います。「3C」や「4P」、「5フォース」や「SWOT」などなど。様々なフレームワークによる分析手法が存在しますし、それを活用する事で課題解決が見えてきたりもします。

しかし問題は、フレームワークだけ覚えて肝心の「中身」を満たさないところにあります。つまり、リサーチをする事で情報をストックし、このフレームワークを活用する練習をしていないか、そもそもリサーチ自体が甘い可能性も大いにあります。

肝心のはリサーチの習慣化

僕が「店頭リサーチ」をお勧めするのは、もちろんトレンド考察や購買行動の確認ができるからというのもありますが、一番は「リサーチの習慣化」が目的です。リサーチは1、2回で意味を成すものではなく、反復する事でより多くの知見が貯まってくるものです。

ブランドに対する知見、生地についての知見、ディスプレイの知見、店頭販促、トレンドアイテムやカラーの変遷など。定期的にリサーチする事でファッションクリエイションでもファッションビジネスでも使える情報量がどんどん増えます。習慣化する事で技術は格段に向上していくものなので、そのきっかけが学生のうちから作れたらと思うのです。

スキルアップに必要なのはモチベーションではない

僕も若い頃に勘違いしていた事があってモチベーションが高くないとスキルが向上しないと思っていたのですが、それはあまり関係ありません。ある行動を継続するとして、やる気なんてものは最初の数日で枯渇します。そこからいかに継続するかは「習慣化」するかどうかが問題なのです。

つまりそこに時間をどれだけ投入するかです。「習慣化」してしまえば後はそれをやらないとソワソワするようになるので、勝手にその行動が継続されます。しかもストレスを貯めずに。つまり「習慣化」に勝るスキルアップ法は皆無です。

「頑張ろう!」と思った時、大概の人は最大瞬間風速ばかりに囚われたりしますが、スキルが身についているならある程度の力はいつでも出せるようになっています。web上でリサーチするのも確かに重要な事ではありますが、リアルは様々なヒントの宝庫です。今、学生の方々は、社会人になった時に他者と差を付けたいなら、ぜひこの「店頭リサーチ」を習慣化してみてください。


READY TO FASHION MAG 編集部

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