VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)の概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
VMDの求人はこちらVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは?
VMDとは、Visual Merchandising (ビジュアル マーチャンダイジング)の略です。商品を購入したくなるような売場環境を視覚的表現を中心とした多様な演出で作り上げる、ディスプレイによるマーケティング手法のことで、消費者が商品を購入しやすい店舗・環境づくりを行っていく職種です。
日本ではVMDと略されることが一般的ですが、英語圏ではVMDはVMと略されています。
アパレル店員がいなくても、購買を促せるVMDは、お店の売り上げを左右する重要な役割を担っています。
マーチャンダイザー(MD)が仕入れや販売、管理などを最適化することに対し、VMDは目に見える部分、売り場や販売環境における演出の最適化を行います。
VMDは販売計画をよく理解した上で、「適品」を「適量」で「適時」に配置していくことが重要です。
また、VMDには、企業やブランドの世界観を店舗というメディアで表現して独自性を高めることで、企業やブランドの価値向上に向けた経営戦略活動も担っています。
そのため、店舗価値の再評価が進む現在では、改めてVMDの重要性が高まっています。
VMDの始まりは1944年、アメリカのディスプレイ会社のアルバート・ブリス(Albert Bliss)氏が提唱したとされています。
現在、VMDはファッション・アパレル業界に限らず、幅広い業界で行われている販売手法です。
日本では1970年代より浸透し、VMDという1つの職種として設定されていることもありますが、アパレル店員が活用し、魅力的な売場作りをしている例も多いようです。
VMDの仕事内容
VMDの主な仕事は、店舗など商品を展開する空間において、商品をより魅力的に演出することです。商品の点数や価格、特性やイメージを正確に把握して、消費者のニーズに的確にあわせて訴求していく役割を担っています。
また、セールスとクリエイターの両極の職能を併せ持つユニークなポジションです。売れる商品をメインに置くのか、シーズンやコンセプトにあった商品を置くのかなど、VMDの采配次第で売り上げに大きな影響を与えます。
今回は3つの重要なポイントを踏まえながら、VMDの仕事内容について解説していきます。ただし、下記の名称は一例であり、ブランドや企業ごとにローカルな名称がついていることもあるようです。
VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
VPとはVisual Presentation(ビジュアル・プレゼンテーション)の略で、お客様に興味を持っていただくために、来店のきっかけをつくるものです。
ブランドコンセプトやイメージだけでなく、シーズンテーマや重点販売商品のアピールを売り場で表現します。主にショーウィンドウやエントランス、注目されやすいフロアのテーマゾーンなどで展開します。
PP(ポイント・プレゼンテーション)
PPとはPoint of Presentation(ポイント・オブ・プレゼンテーション)、またはPoint of Sales Presentation(ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション)の略で、お店に来た人が店舗内を回遊したくなる動線作りをすることです。
マネキンなどの什器を使って新商品やシーズン商品など、特にVMDなどがピックアップしたいアイテムをアピールします。
入り口やレジの近く、店内の中央や角などに展開することで注目を集めて、店内へ誘導することが狙いです。
IP(アイテム・プレゼンテーション)
IPとはItem Presentation(アイテム・プレゼンテーション)の略で、お店に来てくれた人に商品を手にとってもらうために、商品の陳列方法を工夫して売場環境を整えることです。
商品を種類ごとに分類するだけでなく、気軽に比較検討が行えるように類似商品を近くに陳列することもVMDにとっては重要です。
売場で一番広い面積を占めるテーブルや棚などで展開されます。
VMDに求められるスキル・素質
時代の変化とともに、リアル店舗だけでなく、バーチャル店舗においても重要な役割を持つようになったVMDですが、実際にどのようなスキルや素質が求められているのでしょうか。具体的に紹介します。
数値管理能力
VMDにおいて最も重要なことは、ビジュアル的センスではなく、数値管理能力です。
目標売り上げを把握して、達成に向けた具体的な計画を持ち、状況に合わせて効果的なアクションを行うことが重要です。
VMDになりたい人は、施策に応じた数値の変動を客観的に意識できるようにしましょう。
ユーザー視点
仕事内容でも挙げたように、VMDでは常にユーザー視点の思考で業務に当たります。
お店に来た人がどのような動機で店舗への興味を持ち、店内を回遊してアイテムを手に取っていくのかをイメージできるようにしましょう。
普段の買い物時にも、店舗演出に違和感があれば、どうしたら改善できるかまでイメージトレーニングができると、スキルアップに効果的です。
販売経験
ブランドの世界観に合わせ演出し、空間をつくり上げるためには、企業全体のイメージやブランドのコンセプト、商品の知識が必要です。
そのため、アパレル店員やアパレル店長が兼任して、VMDを行う例が多くあります。
VMDへの就職を志望される場合、アパレル店員のアルバイトを行うなど、VMDの素質を磨くことのできる職種で経験を積むことをおすすめします。
転職時にVMDを志望される場合、特に本社職では求人募集をしていることはほとんどありません。
そのため、アパレル店員やアシスタントからのキャリアアップを目指したり、紹介からの転職を狙うことをおすすめします。
デザインやディスプレイに夢中になれる
VMDの魅力にハマった方の多くは、自身の作り上げたディスプレイや空間演出によって売り上げが増加したり、自身が手がけたディスプレイに配置したアイテムをお求めいただいた経験などがあるようです。
また、開店前や閉店後に業務を行うことが多く、オープン時間や終電との戦いになりやすいため、スピードとクオリティを担保する体力もVMDには求められます。
ハードな業務をこなすためには、「努力は夢中に勝てない」という言葉があるように、いかに夢中になれるかが大切なポイントになります。
VMDになるために必要/有利な資格
VMDになる上で有利になる資格を紹介します。
商品装飾展示技能士
VMDには「商品装飾展示技能士」という、日本ビジュアルマーチャンダイジング協会が支援している、国に認定された資格試験があります。
VMDに対する知識やスキルがある事を証明する資格になるので、募集要項に記載のない場合は必須ではないものの、取得しておくと有利になるでしょう。
【応募サイト】
商品装飾展示技能士
ファッションの資格については各職種別にまとめた下記の記事も参考になるのでぜひご覧ください。
VMDになるためのキャリアプラン
VMDになるためには実践的な経験が必要です。マネキンコーディネートのセンスや、ウィンドウなどの演出に対する想像力は経験から培われるものです。
VMDを経験できるアパレル店員のアルバイトからスタートしてみたり、実際にブランドの店舗を回って研究することをおすすめします。
また、今求められているのは、よりデータ・ドリブンなVMDです。VMDはマーケティングの一手法のため、数値の見方に対する知識をつけていくことも重要です。
それらの努力を裏付けるため、商品装飾展示技能士を取得して、アピールポイントを増やすも効果的です。
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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)