SPAは、製造から販売まで垂直で統合させた業種です。消費者ニーズに迅速に対応できることから無駄なく効率的な販売が可能な業態と言われています。

カジュアル路線で品質にこだわる大手SPAに対し、最新トレンドをおさえた商品を低価格でいち早く展開するファストファッションブランドが、SPA第2世代として急成長を遂げています。

アパレル製造小売業で世界ランキング上位のブランドである、「ZARA(ザラ)」を擁するインディテックスや「H&M」のH&Mヘネス・アンド・マウリッツ、「UNIQLO(ユニクロ)」「GU(ジーユー)」で知られるファーストリテイリングなども、SPA企業です。

この記事では、SPAんぽ広がりの背景や代表的な企業、業務内容、働くやりがい、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを細かく紹介します。

SPAが広まったきっかけ

そもそもSPAは、アメリカの衣料品小売大手ギャップ(「GAP」)から生まれた造語です。

1987年の株主総会配布資料の中で、創業者のドナルド・フィッシャー会長が自社の業態を、“Speciality store retailer of Private label Apparel”と述べていました。

ギャップの急成長を知り取材を行っていた、繊維関連の業界新聞「繊研新聞」の記者がそれを見つけ、新聞の見出しに”SPA(製造卸小売業)”という略称で記事にしたことをきっかけに、日本にSPAが広まりました。

元々SPAは“独自のブランドを販売する衣料品専門店”という意味でしたが、1990年代以降概念が広がり、現在では素材調達から、商品の企画や生産、販売までのすべての工程を一貫して行う企業をSPAと呼んでいます。

似ている業種として、アパレル小売とアパレルメーカーが挙げられますが、SPAはそれぞれの機能を併せ持つため、ファッション ・アパレル 業界の川中〜川下を横断する業種です。

参考記事:
アパレル小売とは|アパレル業界業種ガイド
アパレルメーカーとは|アパレル業界業種ガイド

SPAがもたらす消費者へのメリット

卸売業者などの流通の中間マージンが発生しないため、コストの削減ができ、価格を抑えて消費者に商品を提供できる事がSPAのメリットです。利益幅が大きい点や移り変わる消費者の嗜好を迅速に商品に反映させることができる点などもメリットもあります。

ただし、工場に商品の生産を発注するには一定量の生産ロット(生産数)が必要になるため、その分を売り切るだけの販売ルートと販売スケールが求められるというデメリットもあり、ハイリスク・ハイリターンなビジネスモデルと言えます。

SPAの代表的な企業(ブランド)

株式会社ワールド

1959年に創業し、1992年からSPAを導入した日本有数の大手アパレル企業です。他社が1社1ブランドである事に対し、多ブランド戦略を展開することにより、全国への店舗出店を加速しました。

また、ワールド独自の”SPARCS(スパークス)構想”を持っており、お客様を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロスや無駄を価値に変える「顧客価値の最大化」と「生産性の最大化」に向けて取り組んでいるという特徴があります。

SPARCSとは、Super(卓越した)、Production(生産)、Apparel(アパレル)、Retail(小売)、Customer Satisfaction(顧客満足)の頭文字を組み合わせた造語です。

株式会社良品計画

「無印良品」や「MUJI(ムジ)」を展開する専門小売企業です。SPA企業の中でも、衣・生・食のすべてを扱っている特徴的な要素を持つ企業です

1980年にプライベートブランド(PB)の「無印良品」が生まれ、日本文化の原点に着目した”不必要なものを削りながら、品質は絶対に落とさない、100%の品質で他社の商品より3割安い”というコンセプトを今でも貫いています。

他社のPBと一線を画す品質から、日本国内だけでなく、中国などアジア圏の富裕層の顧客も掴み、世界的にもオンリーワンであるポジションを築きました。

アパレル小売の求人はこちら アパレルメーカーの求人はこちら

SPAの業務内容

SPAの業務内容

SPAはアパレルメーカーやアパレル小売と混同されることがありますが、それぞれアパレルメーカーは商品の企画・製造・卸売をする業種、アパレル小売はその商品を販売する業種です。

企画・製造から販売までを一貫で行うSPAはどのような業務内容であるか、解説していきます。

企画

SPAは自社で製品を製作するため、社会の消費行動をふまえてどんな商品を作るのかを考え、その後の販売戦略、販促企画を検討・実行します。売れ残りの在庫を抱えないために、最新のトレンドを踏まえることが重要です。

素材調達

生産に当たって必要な衣料品の素材や原材料、テキスタイルを繊維メーカーやテキスタイルメーカーなどから仕入れます。

日本国内に留まらず、海外で買い付けを行うことも多くあり、現地での仕入れに関する価格交渉までがSPAの業務に含まれます。

デザイン・製造

ブランドイメージやトレンドをふまえ、商品をデザインして生産します。

ファッションデザイナーが描いたデザイン画をもとに、パタンナーが型紙を作成、ソーイングスタッフ(縫製)が裁断・縫製を行い商品にしていきます。

物流

商品を入荷し、検針後にタグ付けなどの加工を行います。その後受注処理に応じて出荷手配をし、各販売店などへ商品を送ります。

その流れをデータ管理し、在庫や請求の見える化を行い、時には返品処理対応も行います。

販売

倉庫から送られてきた商品を販売します。売り上げをつくる大切な役割を担っており、店頭では接客応対はもちろんのこと、在庫の商品管理や店舗の管理・運営を行います。

消費者との接点であるため、いわば企業・ブランドの顔としてアパレル店員などは振舞う必要があります。

また、ECもリアル店舗同様に重要な要素となっているため、EC施策を重点的に取り組む企業も増えています。

店舗企画、PR

自社商品に関する広告をマスコミや紙媒体などに出稿などして消費を促したり、それに伴う商品の貸し出しなどを行います。

それに合わせたイベントを企画したり、販売店でのディスプレイを調整するなど、様々な職種間で連携した拡販活動を行います。

SPAのやりがい

SPAのやりがい

川中〜川下まで幅広い領域をカバーする、一気通貫型の業態であるSPAならではのやりがいについて解説していきます。

商品の流通を体感できる

例えばSPAの企画職の場合、商品化した後は自社の販売店に卸されるので、リアルな販売状況を知ることができます。

アパレル店員の場合でも、本部との連携により、企画意図や販売戦略まで共有される中で販売活動をすることができます。

また、SPAは商品タグに製造元として会社名が記載されるため、製造を他社へ委託する企業に比べ、より流通に携わっているという実感がしやすいです。

戦略的なキャリアパスを描ける

新卒入社の場合、多くはアパレル店員からスタートしますが、SPAの場合は現場でのデータが貴重な情報として扱われます。

将来本部職である、マーチャンダイザー(MD)やブランドディレクターなど商品企画に携わりたいビジョンがある方には、キャリアアップの実績のあるSPA企業のアパレル店員で結果を出し、キャリアアップをしていくこともおすすめです。

SPAで働くために求められるスキル・素質

SPAで働く上での適性

SPA企業には様々な職種があり、その職種によって細かな適性は変わりますが、SPA企業だからこそ求められる適性について説明していきます。

高いファッション感度

SPAの一番のメリットは、まさに今お客様が求めているトレンドアイテムを取り扱えることにあります。トレンドや市場感度が高い方には向いている業種だと言えるでしょう。

時代に合わせたファッションや、トレンドを盛り上げたい方にSPAはおすすめです。SPAは商品バリエーションの多さも強みの1つになるため、未開拓の新しい流行を作り出したい方や、ある年代のファッション文化を好む方などは自身の趣向を生かせる場面があるかもしれません。

戦略的思考

SPAが生まれる以前は、つくり手側の発信力が強く、ブランド側の個性が明確化されていた”プロダクトアウト型”が主流でした。しかし、SPAの登場により消費者目線に切り替わり、”マーケットイン型”が主流になりました。

それに合わせて、同じような商品ばかりが世の中にあふれてしまい、”商品の同質化”が問題視されるようになりました。その問題を脱却するために、熾烈な”価格競争”が発生してしまったこともSPAの大きな課題となっています。

どの企業も頭を悩ませているはずなので、”商品の同質化”や”価格競争”を脱却するための戦略的思考を持っている人材がSPAには求められています。

SPAで働くために必要/有利な資格

SPAの採用に必要/有利な資格

SPA企業特有の、必須採用条件はありません。求人要項を満たしていれば、どなたでも応募可能です。

人気職種に絞り、SPAの選考時に有利になる資格についていくつかご紹介します。

ファッションビジネス能力検定

ファッションビジネス能力検定とはマーケティングや流通、マネジメント、基礎知識まで幅広く学べる資格です。アパレル営業や企画職などを目指している方は取得をお勧めします。

【応募サイト】
ファッションビジネス能力検定

リテールマーケティング(販売士)検定

小売販売のプロ人材の育成を目指す資格なのでファッション・アパレル業界に限った資格ではないですが、在庫管理やマーケティングについても学べる資格になっています。

アパレル店員からのステップアップを視野に持つ方には、SPA企業で有望な人材となるために、ファッション・アパレル業界以外の知見もあるという武器を持っておくことをお勧めします。

【応募サイト】
リテールマーケティング(販売士)検定

カラーコーディネーター検定

ファッションデザイナー志望の方に特にお勧めの資格ですが、色の持つ効果を勉強することで様々なビジネスシーンで活用することができます。

【応募サイト】
カラーコーディネーター検定

SPAで働くためのキャリアプラン

SPAの採用条件

SPA企業ごとによっても特性がありますが、専門職や本部職では、経験者採用・中途採用が主軸となっています。

ほとんどの場合、SPAの新卒はアパレル店員からスタートし、適正や業績次第で本部職へステップアップが可能です。学生時代から、希望職種に関するインターンやアルバイト実績があると、アピールポイントとなります。

SPAの求人一覧

ファッション・アパレル業界特化型の求人サイト「READY TO FASHION」では、SPAの求人を多掲載しています。応募後は企業の担当者と直接メッセージのやりとりができるので、働く上で気になることはぜひ企業の担当者に聞いてみてください。

アパレルメーカーの求人はこちら アパレル小売の求人はこちら

またREADY TO FASHIONは、求人へ応募するだけでなく、企業からのスカウトも受け取ることができます。企業の担当者はプロフィールを参考にスカウトユーザーを決めるので、「今すぐ仕事は探していない」という方も、プロフィールを充実させて新たな出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

アパレル業界に興味ある人は、ぜひREADY TO FASHIONをご活用くださいね。

READY TO FASHIONとは?

関連記事


【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)


READY TO FASHION MAG 編集部

1000社・25万人/月間が利用するファッション・アパレル業界の求人WEBサービス「READY TO FASHION」を運営する株式会社READY TO FASHIONが、業界での就職・転職活動に役立つ情報を発信するメディア『READY TO FASHION MAG』。業界の最新情報をお届けするコラムや業界で活躍する人へのインタビュー、その他ファッション・アパレル業界の採用情報に関するコンテンツを多数用意。

THEME