ファッションデザイナーの概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
ファッションデザイナーの求人はこちら<目次>
ファッションデザイナーとは?
ファッションデザイナーとは、他の人が生み出したことのないファッション・アパレルアイテムのデザインを世に送り出す職種です。ファッション・アパレル業界最大の花形職種とされ、ファッションデザイナーがデザインした洋服が流行生み出していきます。
ファッションデザイナーが所属する企業・ブランド、もしくは自身のブランドのファッション・アパレルアイテムをファッションショーや展示会までに作り上げて発表します。
ファッションデザイナーには、オーダーメイドの洋服をデザインするオートクチュール・デザイナーや既製服をデザインするプレタポルテ(既製服)・デザイナーなどの分類が存在します。
デザインを描き、ファッションショーでコレクションを発表するというイメージがファッションデザイナーには強いですが、フリーランスで企業と契約するファッションデザイナーや、アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMに所属するファッションデザイナーがいたりと、その働き方は様々です。
ファッションデザイナーを大別して、下記の3パターンが一般的です。
・アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMなどに所属するインハウス・ファッションデザイナー
・複数の企業と契約するフリーランス・ファッションデザイナー
・自身のデザイナーズブランドを立ち上げた独立系ファッションデザイナー
インハウス・ファッションデザイナーは、アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMに所属して働きます。
アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMなどのインハウス・ファッションデザイナーは、その企業・ブランドに合った服をデザインします。
一方、アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMのインハウス・ファッションデザイナーは、取引先のアパレルメーカーなどから依頼された洋服を提案して、量産の注文を取ってくるアパレル営業的な役割も担います。その注文の量産指示までを仕事の範囲としていることも多くあります。
デザイナーズブランドで働く独立系ファッションデザイナーには、特にセンスや感覚が問われます。
もちろんセンスや感覚以外にも、一般の人が「素敵だな」「着たいな」と思う服を市場やネットからリサーチして、具体的なデザインに落とし込む能力もファッションデザイナーには求められます。
また、サンプル作成やチェックを行い、縫製工場で大量生産する段取りをする際は、洋服の構造を細部まで理解して的確な指示をしたり、コミュニケーションを取る能力も求められます。
ファッションデザイナーの仕事内容
ファッションデザイナーは、クリエイティブで華やかな職種というイメージですが、根気のいる地道な作業も多く、想像以上の努力を必要とされる仕事です。会社の売上に直接繋がる仕事なので、ファッションデザイナーには大きな責任が伴います。
主な業務内容は、コンセプトの企画・ロードマップ作成から始まり、市場・トレンド調査を経て、デザイン画・パターン・サンプルの作成、生産工程の管理、ファッションショー・展示会の段取りまで、ファッション・アパレルアイテムのデザイン業務全般にまたがります。
インハウス・ファッションデザイナーや独立系ファッションデザイナーなどは、仕事内容や適性が大きく異なります。
ファッションデザイナーが所属する企業・ブランドの形態や個人の経験により、担当する仕事範囲は異なる事が多いので幅広い知識や適用能力が必要です。
コンセプトの企画・ロードマップ作成
シーズンごとにデザインのイメージをまとめたポートフォリオを作成します。
色の感覚やインスピレーション源を視覚化して、自分の思い描くイメージを社内や取引先に提案していきます。
作成したロードマップを元に、マーチャンダイザー(MD)とシーズンのコンセプトを決めるため、駆け出しとなる重要な仕事です。
市場・トレンド調査
国内外の市場を分析し、トレンドを予測します。
アパレルメーカーや繊維商社(アパレル商社)、OEM・ODMで働いている場合は、取引先のファッションデザイナーが作成したロードマップと市場のトレンドをかけ合わせ、一般の人やブランドのターゲットがどのような洋服をほしいと思っているか観察した上で、具体的は形にすることが必要です。普段から市場やネットでの情報収集しておくことが必要です。
デザイン画の作成
ポートフォリオやマーチャンダイザー(MD)が決めた販売計画を元にアイテムを決定して、デザイン画や絵型を作成します。
会社によってデザイン画を作成する場合もありますが、絵型や製品図だけを作成する会社もあります。
素材設定
作成したポートフォリオを元に色展開や素材を選定します。
色展開は、マーチャンダイザー(MD)が担当していることもあります。素材に関しては、テキスタイルデザイナーと相談したり、テキスタイルコンバーターに依頼して素材を作成します。
パターン作成・仮縫い
デザインが確定したあとはデザイン画を元にパターンを作成します。
パターン作成はパタンナーが担当しますが、洋服の形を左右する大切な工程なので、ファッションデザイナーが的確に細かく指示をする必要があります。
仮縫いは、パターンを元にトワルを使いそのパターンに問題ないか確認する作業です。
デザイナーズブランドでは新しいデザインを感覚で決めることも多いため、トワル仮縫いでの調節が重視されます。
縫製仕様書・加工指示書の作成
パターンの大枠ができたらアパレル生産管理(プロダクトマネージャー)と相談して、どのような仕様、手順で縫製するのかが記載される縫製仕様書と加工指示書を作成します。
ポケットやボタンの細かい付け位置を指示したり、ボタンやファスナーなど、副資材の選定も行います。
サンプルの段取り・確認
アパレル企業やOEM・ODMではトワル仮縫いは行わず、サンプル作成で直接デザインを確認することも多くあります。
その際は、サンプル依頼先を選定して依頼します。出来上がったサンプルは検品や検寸をして、修正があるときにはコメントを作成します。社内にソーイングスタッフ(縫製)が居る場合は、修正箇所を相談してサンプルを作り上げていきます。
ファッションショー・展示会の段取り
上記の一連の作業で作成したサンプルをファションショーでコレクションとして発表したり、展示会に出品します。コレクションや展示会は春夏(SS)と秋冬(AW・FW)に分かれている事が多く、毎年その季節にあったものを発表して、アパレル営業が取引先のバイヤーやプレス(PR・広報)に接客して商品を受注します。
ちなみに、下記の記事ではファッションデザイナーの仕事に関するYouTube動画をまとめています。文字では伝わりづらい業務内容だからこそ、よりイメージできるはずです。気になる方は、ぜひご覧ください!
>>「ファッションデザイナー」の舞台裏を覗く!ファッション業界のYouTubeまとめ
ファッションデザイナーになるには? 求められるスキルと素質
ファッションデザイナーはセンスや感覚が大切な職業である反面、ファッションデザイナーにはチームでの仕事も多くコミュニケーション能力の問われることも多くあります。
なにより他の人が見たことのないものを生み出す作業は、自分との戦いです。コツコツと地道に何度も同じ作業を繰り返しながら少しづつ前に進みます。
ある程度の感覚やセンスが必要ですが、それよりも視覚的なイメージを自分の中に蓄積して、貪欲にファッションと向き合うことのできる人がファッションデザイナーに向いていると言えるでしょう。
地道に同じ作業を繰り返す能力
デザインを考える時間や、何度も何度も仮縫いをする作業は地味な作業で外の人には見えません。そのような作業が苦にならずコツコツ続けられる能力がある人はファッションデザイナーに向いています。
マーケティング能力
今、何が流行っているのか、このあとは何が流行するのかどうか察知し、情報収集する能力です。
トレンドをいち早く察知してからサンプルにするまで、なるべく時間をかけずに完結させるスピード感も必要です。一般の人向けの服をつくるファッションデザイナーの場合は、この能力が一番大切になります。
コミュニケーション能力
個人の能力が重視されていると思われがちですが、どの立場のファッションデザイナーもひとりですべての作業を行うことはほとんどありません。
ファッションデザイナーには、自分のデザインや考えを言葉にして伝えたり、社内のそれぞれの立場の人と話合いながら進める作業も多くあります。
量産する際には、取引先や縫製工場とのやり取りでもコミュニケーションが必要になります。
企画・デザイン力
生まれ持った感覚が優れている人もいますが、大部分はこれまでの経験値や自ら取り入れる情報で徐々に企画力やデザイン力を付けていきます。
ファッションデザイナーとして活躍するためには、ファッションの情報にたくさん触れることができるよう、意識的に行動してみましょう。
ITリテラシー
近年のIT化に伴い、アパレル業界でもその影響を受けています。これまで手作業だったデザイン画や縫製仕様書、加工指示書の作成もパソコンで行うことが多くなっています。
ファッションデザイナーとして活躍するために、「CLO」などの3DCADソフトや、「Adobe Illustrator」「Adobe photoshop」などのイメージ編集ソフトに関するスキルを習得しておくのも良いでしょう。
ファッションデザイナーになるために必要・有利な資格
求められるスキルが多くあるファッションデザイナー。取得必須の資格はありませんが、ファッションデザイナーは狭き門であるため、下記の資格を取得していると就職に有利でしょう。
色彩能力検定(AFT)
色彩検定協会主催の色に関する資格です。カラーコーディネーターとしての知識を身に着け、仕事に活かすことができます。
必須資格ではありませんが、ファッションデザイナーの仕事をするにあたり知識を得ることができるのでおすすめです。
【応募サイト】
色彩能力検定(AFT)
ファッションビジネス検定
一般財団法人日本ファッション教育振興協会が主催するファッションビジネスの知識全般が問われる検定です。3級から1級まであり、受験資格はそれぞれ特別設けられていません。
マーケティング戦略や生産〜流通戦略を中心にマネジメントやファッション造形に関する問題も出題されるため、幅広い知識が求められます。
【応募サイト】
ファッションビジネス検定
パターンメイキング検定
パターンメーキング技術検定はパターン技術を習得するための資格です。洋服の構造を理解している者とみなされるため、ファッションデザイナーが持っていても有利な資格です。
3級から1級までの種類があり、筆記と実技試験から成っています。
【応募サイト】
パターンメイキング検定
ファッションの資格については各職種別にまとめた下記の記事も参考になるのでぜひご覧ください。
ファッションデザイナーになるためのキャリアプラン
ファッションデザイナーになるには専門学校へ行き、就職するのが一番の近道です。
専門学校では洋服の基本的構造を学ぶことができます。同じ将来を目指す人と切磋琢磨することができるため、高いモチベーションを保つために最適な環境と言えるでしょう。
また、ファッション系専門学校にはファッションデザイナーの求人やコンテストの募集が多く集まり情報を得やすいため、在学中からファッションデザイナーになるために行動することができます。
新卒の場合は、OEM・ODMやアパレルメーカーに就職する事が多く、ファッションデザイナーアシスタントからスタートすることが多くあります。
新卒からすぐにフリーランス・ファッションデザイナーとして活躍できることはほとんどありません。
稀にセンスや才能を見込まれて、新卒でデザイナーズブランドに就職できることがありますが、多くの人は中途でデザイナーズブランドに就職します。
ファッションデザイナーアシスタントからキャリアアップしてチーフファッションデザイナーに就任するケースや、退社してフリーランス・ファッションデザイナーとして独立するケース、自身のブランドを立ち上げるケースなど、そのキャリアパスは多岐に渡ります。
チーフファッションデザイナーなど役職が上がるにつれて年収も上がっていきます。ファッションデザイナーアシスタントなどで経験を積んだ後に、社内でキャリアアップしたり、転職したりするのが、一般的なファッションデザイナーのキャリアになります。
ファッションデザイナーの求人一覧
今回は憧れる人も多いファッションデザイナーについて解説しました。
街で自分のデザインした服を着た人を見ると、とても嬉しい気持ちになり、やりがいを感じられる仕事ですが、その反面、膨大な努力が必要です。
1つの仕事としてではなく、自分の好きなこと、追い求めることの出来ることとして、ファッションデザイナーの仕事を続ける人が多く、とても魅力のある仕事です。
READY TO FASHIONでも募集しているので、是非応募してみてください。
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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)