デジタルマーケティングの概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
<目次>
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングとは、ECなどにおけるWEB上の行動データやモバイルアプリやSNSから取得される各種情報データ、実店舗で得られるPOSデータや購買データなど、消費者の行動から得られたデジタル情報を活用したマーケティング手法を駆使する職種です。
インターネット利用者数の増加やSNSの隆盛などにより消費者の嗜好や属性の細分化、解像度向上が進展したことで、従来のマスマーケティング手法によるターゲティングが成立しづらい状況になっています。
一方近年では、WEB領域の発展に伴い、直接的な購買喚起に限らず、企業やブランド、商品やサービスのイメージを浸透させるための手法として、あるいは顧客や外部企業との良好な関係性を構築するための手法としてなど、さまざまな場面でデジタルマーケティングが採用されており、デジタルマーケティングに対する注目が高まっています。
企業・ブランドの本懐は適切な顧客に、適切な情報・商品・サービスを提供することです。そのため、より高い解像度の正確なターゲティングを実現するために、このデジタルマーケティングが採り入れられるようになっています。
デジタルマーケティングの目的は、データの収集・蓄積と同時に顧客との接触機会を増やし、各自のニーズに応じた商品・サービスの訴求・提供することです。
また、デジタルマーケティングのメリットは、正確な数値を即時確認可能な点です。また蓄積された各種データの分析・検証を通して、実施した各種施策を定量的に効果を測定することも可能になります。
従来のマスメディアでは実現困難だった各種データの正確な分析・検証を実現できるのがデジタルマーケティングの強みです。
また、後述のリスティング広告やディスプレイ広告などの手法を活用すれば、広告のクリック数や費用対効果を即時に把握できます。そのため、デジタルマーケティングは企業・ブランドの施策を最大化させるための包括的かつ最適な手法と言えるでしょう。
デジタルマーケティングの類似語としてWEBマーケティングという手法もあります。一般的に下記のように定義づけられています。
WEBマーケティング=WEB上で得られたデータを活用してWEBに特化して行うマーケティング手法
デジタルマーケティング=WEB上で得られたデータと実空間から得られたデータなどを活用して多様なチャンネルから行うマーケティング手法
デジタルマーケティングはWEB上で得られるデータに限らず、実店舗などで得られるPOSデータや位置情報データ、購買データを組み合わせて消費者の行動を分析することもあるため、WEB上で完結するWEBマーケティングは、デジタルマーケティングに内包される手法と言えるでしょう。
デジタルマーケティングの仕事内容
デジタルマーケティングの主な仕事は、WEBサイトなどから取得した各種顧客データを蓄積してそれらを分析すること、その分析結果をもとに各種施策を立案して実行することです。
さらに実行した施策の効果をさらに再検証して改善施策の提案・実施する同様のサイクルを回すことが、デジタルマーケティングの主な仕事と言えるでしょう。
個別具体的なデジタルマーケティングの業務領域の一部を下記の項目に分けて紹介します。
CRM
CRMはCustomer Relationship Managementの略で、顧客関係管理を指す用語です。CRMとは顧客の満足度を向上させることで、企業・ブランドの売上拡大と収益性向上を目指す手法のことです。
収集した顧客に関する情報を整理して、各顧客のニーズに適した商品・サービスを提案することができます。顧客との関係構築はデジタルマーケティングの主な業務の1つです。
【関連する職種】
・アパレル営業
・アパレルEC運営
・マーケター
広告運営
適切な広告運営もデジタルマーケティングの重要な業務となります。その代表的なものはリスティング広告です。リスティング広告とは、Googleなどの検索エンジンで検索結果に関連して表示される広告のこと。検索連動広告と呼ばれることもあり、企業・ブランドが推したい商品やサービスに適したユーザーにアプローチできる点が強みです。それら広告が最適に機能するための業務にデジタルマーケティングは従事します。
【関連する職種】
・アパレルEC運営
・プレス(PR・広報)
・販売促進
・マーケター
SEO
WEBサイト構築後に必要な業務はSEOです。SEOはSearch Engine Optimizationの略で、日本語で検索エンジン最適化を意味します。Googleなどの検索エンジンの検索結果でページ上位に表示されるよう、検索エンジンからの評価を得るためにGoogle Search Consoleなどを活用して、それに適したキーワード選定、HTMLタグの最適化、コンテンツ作成・整備することもデジタルマーケティングの業務に含まれることもあります。
【関連する職種】
・アパレルEC運営
・プレス(PR・広報)
・販売促進
・マーケター
デジタルマーケティングになるには? 求められるスキルと素質
市場調査のスキル
実店舗や国内外の市場など、無数にある情報の中から有効なものを収集して、まとめていくスキルを指します。
普段からアンテナを張り、いろいろな情報を意識的に集めることを続けることで、それらが自分の引き出しになり大きなスキルになります。
数値分析スキル
情報を収集するだけでなく、分析する力もデジタルマーケティングにとって、とても大切です。
売上向上に導くために「自社」「顧客」「競合」を分析する「3C分析」と呼ばれる手法や「プロダクト:製品」「プライス:価格」「プレイス:流通」「プロモーション:販売総促進」から自社の価値を生み出す「4P」というフレームワークを使い分析できるスキルがデジタルマーケティングには必要です。
データや数で裏付けされた企画は直感よりも実行に移しやすく、採用されやすいのでデジタルマーケティングにとって重要なスキルになります。
コミュニケーション能力
市場調査をし、それを社内会議で発表して共感してもらえるよう、他の人に何かを伝えることのできるコミュニケーション能力がデジタルマーケティングには必要です。
そこから販売戦略をたて、実行に移すまでにたくさんの職種の人とコミュニケーションを取りながら行動していくため、デジタルマーケティングにはコミュニケーション能力は不可欠になります。
マネジメントスキル
決定した販売戦略を実行するためには関係する数々の職種や部署、店舗に指示を出して束ねる必要がデジタルマーケティングにはあります。他職種であってもマネージメント経験があれば採用される確率も高くなるでしょう。
デジタルマーケティングになるために必要/有利な資格
デジタルマーケティングになるために、必須資格はありませんが、知識がないと採用してもらえることはありません。
そのためには自分の知識を証明する、いくつかの資格を持っているとデジタルマーケティング関連職種の就職活動や転職活動に便利です。
マーケティング・ビジネス実務検定
アパレル業界に関わらず、各業界共通のマーケティングスキルに対応しています。
マーケティング理論や実務知識、時事問題などの基礎から応用までの知識習得を目指す資格で、A級〜C級までを判定します。
【応募サイト】
マーケティング・ビジネス実務検定
プロモーショナル・マーケター認証資格
プロモーショナル・マーケターに特化した資格です。
特定の市場において、ターゲットが購買にいたるまでの活動の動機付けについてのマーケティングを行うのがプロモーショナル・マーケティングです。
実務試験もあり、プロモーション手法やメディアツール作成、戦略設計や実行計画の立案作成などを行います。
【応募サイト】
プロモーショナル・マーケター認証資格
ファッションの資格については各職種別にまとめた下記の記事も参考になるのでぜひご覧ください。
デジタルマーケティングになるためのキャリアプラン
昨今ではEC領域に注目が集まり、アパレル業界でもWEBサイトの充実化を計る企業が増えています。
そのため、デジタルマーケティングの需要も高まり、ファッション・アパレル業界以外からの他業種の転職者でも、2年以上デジタルマーケティングとして働いている場合は採用されやすい傾向にあります。
未経験や新卒の場合はまず、アパレル業界の何らかの職種で経験を積むことがデジタルマーケティングになるための近道になります。
企業によってはマーチャンダイザー(MD)やプレス(PR・広報)、EC運営がデジタルマーケティングを兼務している場合もあります。
また、デジタルマーケティングという名称ではなく「販売促進」や「営業企画」という名称で求人を募集している企業もあります。
求人情報を細かく確認して、デジタルマーケティングの仕事内容ができる求人を探したり、問い合わせたりするのもおすすめです。
デジタルマーケティングの求人一覧
デジタルマーケティングは売上向上や利益など、数字で成果を計ることができるシビアな仕事ではありますが、その分、他の職種よりも達成感があり、昇給やお給料アップにもなりやすい職種です。
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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)