アパレル法務の概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。

ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。

ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。

アパレル法務とは?

アパレル 法務

アパレル法務とは、企業・ブランドが関与する法律や司法関連業務全般を担う職種です。アパレル法務は、企業・ブランドが法令や各種契約のもと適切に運用されるようにサポートする仕事をしており、企業法務はもちろん、国際法務、海外法務、渉外法務などその範囲は多岐に渡ります。

アパレル法務の業務は、社内向けの業務と社外向けの業務と大きく2つに分かれています。社内向けの場合はコンプライアンス法務、法律相談・サポート、労務・労働問題があり、社外向けの場合は契約・取引法務、機関・組織法務、紛争対応法務などがあります。

社内外での紛争を未然に防ぎ(予防法務)、発生してしまった法的トラブルへ対応しつつ(臨床法務)、企業・ブランドの発展のために法的手段・技術を用いた戦略をもって(戦略法務)企業・ブランド活動を後方で支援します。企業・ブランドの利益追求と法的に適正な活動のバランスをとって、アパレル法務は活動します。

ファッション・アパレル業界の企業・ブランドであれば、著作権や商標権、意匠権などの知的財産権を保護することが課題となります。ファッションローと呼ばれる横断的分野に関する法知識がアパレル法務には求められます。

アパレル法務の仕事内容

アパレル 法務

アパレル法務の実際の業務内容を紹介します。

企業によって内部構造が異なるので、一般的な業務の一部を挙げていきます。

契約・取引法務

アパレル法務の代表的な業務が、契約・取引法務です。企業・ブランドは、民法や商法などに基づいて、売買契約、秘密保持契約、業務委託契約などの契約・取引を行います。それらの契約・取引に関連する書類の作成、国内外の企業・ブランドとの契約事項の確認などが具体的な業務内容となります。契約・取引に際しては、法的に妥当か、アパレル法務が所属する企業・ブランドが不利な契約になっていないか、事後的なトラブルが発生しないかなどの懸念事項を避けるためにもこの業務が欠かせません。

機関法務・組織法務

機関法務・組織法務とは、株主総会や取締役会などの社内機関が会社法など諸法に基づいて合法的に運営されるためのサポートをする業務です。アパレル法務は、株式の発行や分割などの株式に関連する法的諸業務、子会社の設立、定款の変更、上場対応などを行います。

紛争対応法務

取引先の企業・ブランドとのトラブルや特許権・商標権・著作権に代表される知的財産権に関連する紛争、顧客からのクレームの際、アパレル法務が対応します。ファッション・アパレル業界の場合、知的財産権に関連する問題は、企業・ブランドの存続を左右しかねません。

契約書の確認などのトラブルを未然に防ぐことはもちろんですが、場合に応じて訴訟など法的手段をアパレル法務が講じます。その際は証拠収集や裁判所へ提出する書類作成が必要になります。事案によってはアパレル法務が外部の法律事務所と協議・連携することも少なくありません。

コンプライアンス法務

社内の法令遵守(コンプライアンス)もアパレル法務の大切な仕事です。企業・ブランドの信用にも深く関わるため、近年ではコンプライアンス法務に関わる業務は不可欠です。具体的に社内規定の整備・作成、社内研修の企画・実施、社員の意識調査、相談窓口の設置や相談の受付・対応、ヒアリング、社内への周知徹底などが業務内容になります。

社内の法律相談・サポート

社員の大半はアパレル法務ほど法知識が深くありません。そのため、アパレル法務は社内の法律のプロとして、社員のサポートを行います。部署に応じて関連する法範囲は異なるため、相談事項のそれぞれに適した方知識の共有・提案が必要です。ハラスメントや違法残業、安全管理問題など、社内で発生した法的トラブルに都度対応します。

労務・労働問題

労務・労働問題は企業・ブランド運営に深く関わる課題です。労働基準法など各種労働法令が適用されるため、アパレル法務が雇用契約書の作成、就業規則の整備・作成、労働基準監督署への対応などを行います。社員とのトラブルを避けるために、適切な対応が求められます。

法令調査

各種法令は社会情勢などに応じて改正されるものです。その変化に応じて企業・ブランドは対応していかなくてはならないため、その調査・周知もアパレル法務の業務となります。国内外に取引先がある企業・ブランドの場合は、各現地の法令調査も必要になります。

アパレル法務になるには? 求められるスキルと素質

アパレル法務への就職・転職する上で、求められるスキル・素質を紹介していきます。

深い法知識

アパレル法務は、法知識をいかして企業・ブランドの支援をする職種です。国内外の法律に基づき、契約合意を行う必要があるため、法律に関する知識が不可欠です。

特にファッション・アパレル業界ではさまざまな分野でIT化、グローバル化が進んでおり、変化にあわせた法令改正がたびたび起きます。法令改正に伴い、社内規定や契約修正が必要になるため、最新の法令はもちろん、判例や社会情勢などの最新情報を蓄えるアンテナを張らなくてはなりません。継続的に情報をアップデートできる学習意欲の高い人は、アパレル法務に適しているでしょう。

加えて、アパレル法務に係る法知識は専門性が高いため、法知識に疎い他部署の人にもわかりやすく説明できる能力も同様に求められます。

文書作成能力

アパレル法務は各種契約書や社内規定など重要書類の作成・修正を務めるため、高い文書作成能力が求められます。法律に反しない内容であることは前提に、目的を理解した上で正確に作成しなくてはなりません。

また、アパレル法務は国際法務にも携わる可能性があります。ほかの業務にも関連しますが、外国語での契約書作成・翻訳や海外企業・ブランドとの交渉なども必要になりえるため、高い英語力も欠かせません。

リスク分析能力とソリューション提案力

アパレル法務は、企業・ブランドに起きうるリスクを事前に発見・分析し、解決策を提案する能力が求められます。法的分析力に加えて、企業・ブランドの発展を視野に入れて実務にあたらなくてはいけないため、アパレル法務には欠かせないスキルと言えるでしょう。

アパレル法務になるために必要/有利な資格

アパレル 業種

アパレル法務への就職・転職する上で、必要な資格と有利になる資格を紹介していきます。

行政書士

行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格です。各種官公庁への許認可申請手続きなどアパレル法務に必要な業務に携わることができます。実務に直接影響がある資格と言えるでしょう。

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司法書士

司法書士とは、行政書士同様に国家資格になります。登記申請や行政機関へ提出する書類の作成など、アパレル法務に関連する業務に携わることができます。

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司法書士

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定は、東京商工会議所主催の検定資格になります。実務レベルの法知識を証明する検定になり、3級から1級まであります。2級以上を取得できれば、一定の評価が得られるため、アパレル法務の実務レベルを示すためにも取得すると有利でしょう。

【応募サイト】
ビジネス実務法務検定

ビジネスコンプライアンス検定

ビジネスコンプライアンス検定は、コンプライアンスや社内規定に関連する知識・職能を証明する検定資格です。初級と上級の2種類があり、ビジネスにおけるコンプライアンス関連業務に携わるアパレル法務は取得しておくと直接業務にいかせるでしょう。

【応募サイト】
ビジネスコンプライアンス検定

アパレル法務になるためのキャリアプラン

アパレル 業種

アパレル法務はこれまで述べた通り、十全な法的知識が求められます。そのため、大学や大学院にて法学を学ばなくてはなりません。基本的にはアパレル法務への就職の条件として、それらの学歴が必要な場合も多いため、アパレル法務で働くには、学生の時から検討しておくといいでしょう。企業・ブランドの事業に関する深い知識や売上などの実績、取引先に関する情報など、実務的な知識がアパレル法務には求められるため、他部署での経験も重視されるでしょう。ほかにも法律事務所や特許事務所にて経験を積み企業・ブランドに就職するパターンもあります。

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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)


READY TO FASHION MAG 編集部

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