グラフィックデザイナーの概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
グラフィックデザイナーの求人はこちら<目次>
グラフィックデザイナーとは?
グラフィックデザイナーとは、商品パッケージや、雑誌広告、看板、ポスター、書籍などの商品宣伝・販売に関わり、広告物全般の平面デザインを行う商業デザイナーのことです。
グラフィックデザイナーはもともと、紙媒体のデザインが主流でしたが、近年ではWEB媒体の普及に伴い、WEBサイト内のグラフィックを手がけるなど、活躍の幅の広がりを見せているのが特徴です。今日では、分業化が進み、印刷媒体をはじめ、WEBやカタログなどのイラストを描くイラストレーターなどの職種とは区別されています。
ファッション・アパレル業界のグラフィックデザイナーは、グラフィックデザインを通して、ブランドの世界観や商品の魅力を表現する役割を担います。ファッション・アパレル商品の広告に関わるポスターやパッケージ、ロゴマークなどのデザインに関わる場合や、実際にファッション・アパレルアイテムのプリントデザインに関わる場合などがあります。
ファッション・アパレル業界で働くグラフィックデザイナーには、下記の3パターンに大別できます。
・ブランドやアパレルメーカー、OEM、ODMなどに所属するインハウスのグラフィックデザイナー
・複数の企業(クライアント)と契約して働く、フリーランスのグラフィックデザイナー
・広告会社やデザイン会社などで働き、企業(クライアント)からの外注を受けてデザインするグラフィックデザイナー
このグラフィックデザイナーは、デザインに関わる仕事であるため、会社のコンセプトや要望に応じながら、消費者にとって魅力的なデザインをしなければなりません。そのため、グラフィックデザイナーには、会社の意図を理解し、形にしていく能力が求められます。
グラフィックデザイナーの仕事内容
グラフィックデザイナーの実際の業務内容を紹介します。
企業によって内部構造が異なるので、一般的な業務の一部を挙げていきます。
市場調査
まずは、世の中のトレンド調査や競合調査を行い、制作するグラフィックデザインの方向性を探っていきます。
どれだけ自分のセンスをデザインに落とし込めるかというよりも、デザインによってどれだけお客様の反応率が見込めるかなどを検討していく作業が大切です。
そのため、市場調査ではデータの分析やマーケティングを徹底して行っていきます。
企画
ファッション・アパレル業界において、グラフィックデザイナーが制作するものは、大きく分けて、広告物のデザイン作成とファッション・アパレルアイテムのグラフィックデザイン作成があります。
広告物の作成と言っても下記のような幅広い内容です。
・ポスターやフライヤー制作
・雑誌広告
・パッケージデザイン
・ロゴ制作
・カタログ・パンフレット制作
・ホームページのデザイン
ファッション・アパレル業界において、ファッション・アパレルアイテムのグラフィックデザインを行うグラフィックデザイナーの場合、ファッションデザイナーとは異なり、素材の選定などを行うのではなく、あくまでもデザインとして落とし込むためのグラフィック作成を行っていきます。
クライアントからデザインの依頼を受けた場合は、クライアントとの打ち合わせを行い、どのようなコンセプトやデザインにするのかを検討していきます。
グラフィックデザイナーの業務では、自分の感性を活かすデザインよりも、ターゲットにマッチできるようなデザインを生み出すことが重要です。
そのためにも、クライアントの意図を汲み取り、企画に沿ったデザインにできるように協議を重ねていきます。
デザイン作成
これまでの自社の制作物を踏まえながら、改良点などを模索し、デザインを作成します。
クライアントからの外注の場合はクライアントと、インハウスのデザイナーの場合は社内のファッションデザイナーやマーチャンダイザー(MD)など各役職と連携を取りながらデザイン作成を進めていくのがポイントです。
また、デザイン作成では、デザインに適した素材を集めます。必要な場合には、イラストレーターやコピーライター、カメラマンなど他のクリエーターに作業の依頼や指示もしていきます。
修正
出来上がったデザインをクライアントなどに提示し、必要な修正箇所を手直ししていきます。場合によっては、何十にも及ぶパターンを提案し、チームで最適なデザインを決定します。
納品
デザインが決定し、最終的に完成すると印刷所に発注したり、それらをWEBにアップしたり、商品に落とし込んで、工場などに発注をかけたりなどの作業を行なって、完成となります。
グラフィックデザイナーの求人はこちらグラフィックデザイナーになるには? 求められるスキルと素質
グラフィックデザイナーへの就職・転職する上で、求められるスキル・素質を紹介していきます。
デザイン能力
グラフィックデザイナーとして、クライアントの要望に応じたデザインを制作するためには、柔軟なデザイン能力とアイデア力が求められます。
唯一無二のアイデア力も大切ですが、幅広いデザインができることによって、求められる仕事の幅も広がります。また、トレンドを意識したデザインをする力も必要です。
そのため、感性やセンスを磨くだけでなく、色の配色や構図などのデザインの理論を学ぶことも重要になってくるでしょう。
制作ソフトの操作スキル
もともとは、紙媒体でグラフィックデザインを行うことがほとんどでしたが、現在ではPCを用いたグラフィックデザインがほとんどです。
グラフィックデザインのツールとして、主要なものにIllustratorやPhotoshopなどがありますが、これらのソフトを使いこなし、デザインできる能力も求められます。
デザイン系のソフトウェアの資格を取ることによって、客観的なスキル保持が明確化されるので、就職や転職の際にも役に立つと言えるでしょう。
コミュニケーション能力
グラフィックデザイナーは、デザインを依頼したクライアント、インハウスのグラフィックデザイナーの場合は、社内のファッションデザイナーやマーチャンダイザー(MD)など多くの人と連携をとりながら進めていくことが求められます。
そのため、相手の意図を汲み取り、自分のアイデアやデザインを理解してもらえるよう積極的にコミュニケーションを取っていく必要があります。
また、自分のセンスを前面に活かすというよりも、ブランドのコンセプトやトレンド、様々な職種の人たちの意見を取り入れながらデザインを作成していくため、コミュニケーション能力が非常に大切です。
マーケティング能力
グラフィックデザイナーは、独自のセンスや発想でデザインするというより、いかにブランドの表現したいものを汲み取り、消費者の消費行動に繋げられるかという側面が重要になってきます。
そのためには、日頃から市場調査やトレンド調査を行い、購入者が求めているものをデザインするという姿勢が必要です。
また、トレンドに即したデザインをすることで、より洗練されたデザインの商品を作ることができますが、トレンドは年々目まぐるしく移り変わります。
そのためにも、常に世の中のトレンドに目を向け、それをデザインに活かすようなマーケターとしての考え方をもつことが大切です。
グラフィックデザイナーになるために必要/有利な資格
グラフィックデザイナーへの就職・転職する上で、必要な資格と有利になる資格を紹介していきます。
グラフィックデザイナーになるためには、センスや実力が問われます。グラフィックデザイナーになるために必要な資格はありませんが、どのソフトを使えるのかという客観的なスキルを示すことができるため、資格習得もおすすめです。
Illustratorクリエイター能力認定試験
Illustratorとは、Adobe(アドビ)社が提供している、グラフィックデザインツールのことで、テキストや画像、イラストを自由にレイアウトし、印刷物やデジタル素材などをデザインすることができます。
ポスターやフライヤー、パッケージやロゴまで幅広くデザインすることができるので、印刷物の編集においては最もスタンダードな方法として用いられており、世界基準のグラフィックツールと言えます。
Illustratorクリエイター能力認定試験は、知識問題や制限時間内でのコンテンツ作成の他に、問題文を正確に読み取って形にする実践的な試験内容です。
「スタンダード」と「エキスパート」の2種類のコースがあるため、能力に応じた試験を受験することができ、合格率も73.2%(2021年度平均合格率)なので、難易度的にも未経験から勉強して合格を目指せる試験です。
誰でも受験でき、履歴書にも記載できる資格なので、自分のスキルをアピールすることができます。
【応募サイト】
Illustratorクリエイター能力認定試験
Photoshopクリエイター能力認定試験
Photoshopとは、写真の加工や合成、グラフィックの作成などを行うことができる、世界的にも有名な画像編集ソフトです。
Photoshopは、Illustratorと同様にAdobe社が提供しているアプリケーションですが、Illustratorとは異なり画像の補正や修正の作業を行うことを得意としており、色合いや質感を調整することができます。
Photoshopクリエイター能力認定試験の内容は、動画編集の基礎知識や、問題文に沿ったコンテンツ作成などです。
こちらも、難易度別にスタンダードとエキスパートの2コースを選択できます。
Illustratorクリエイター能力認定試験と同じように、こちらの合格率も74.1%(2021年度合格率)なので、難易度的にも同じ程度です。
【応募サイト】
Photoshopクリエイター能力認定試験
アドビ認定プロフェッショナル/エキスパート
アドビ認定プロフェッショナルとは、IllusutratorやPhotoshopを提供するアドビ社が主催する国際認定資格試験です。
アドビソフトウェアの主なアプリケーションごとに機能に関する知識や実技力を測ります。アドビ認定資格には、アドビ認定プロフェッショナルとその上位資格のアドビ認定エキスパートの2種類があります。
アドビ認定プロフェッショナルは、アドビソフトの基本的な知識やスキルがあることを示せる資格で、試験の難易度もそれほど高くないため、デザインを学び始めた学生や実務未経験者にも受けやすいです。
一方で、アドビ認定エキスパートは、日本国内のみ有効の民間資格であり、各スキルの専門的なスキルを証明するための試験で、現在では、英語受験が適用されており、日本語で受験することができません。
また、アドビ認定試プロフェッショナルと比べて受験できる製品の数も異なり、より専門的なスキルと資格を習得できるため、クリエイターやデザイナーなどの仕事をする際に確実なアピールポイントとなります。
【応募サイト】
アドビ認定プロフェッショナル/エキスパート
DTP検定
DTP検定とは、株式会社ワークスコーポレーションが実施するDTPにおける知識や技能を問う試験です。
DTPとは、Desktop Publishingの略で、PCを用いて雑誌などの印刷物を編集する作業のことを指します。
DTP検定では、ディレクション・ビジネスの2種の試験が実施されており、ディレクションでは、印刷物作成における全工程のディレクターとしての能力を測る問題、ビジネスでは、Wordを使用しての資料作成の問題などが出題されます。
受験資格は必要なく、誰でも受験可能です。
【応募サイト】
DTP検定
DTPエキスパート
DTPエキスパートは、DTP検定とは異なり、公益社団法人 日本印刷技術協会(JAGAT)が認定する試験で、基本的な製版知識に重点を置いている検定試験です。
また、DTPエキスパートでは、印刷に関する事柄だけでなく、印刷物が出来上がるまでの工程などの知識を問う問題も出題されます。
そのため、現場レベルでの知識を学ぶきっかけにもなります。
このDTPエキスパート検定では、出版・印刷業界で働いている人やデザイナーがキャリアアップをする際に取得する資格として取られる場合が多いです。
【応募サイト】
DTPエキスパート
色彩検定
色に関する基礎的な知識や、配色の技法について学ぶことができる検定です。
色彩の観点から、アパレルに活かせる論理的なスキルや知識を習得できるうえ、簿記などの公的な資格と同じなので、履歴書に書いてアピールすることもできます。
色彩系の検定では他にも「ファッション色彩能力検定」などがあります。
【応募サイト】
色彩検定
グラフィックデザイナーになるためのキャリアプラン
グラフィックデザイナーになるためのスキルを積むには、下記の3つの方法があります。
・専門学校でグラフィックについての専門的な知識やスキルを習得する
・独学でグラフィックデザイナーのスキルを磨く
・未経験からできる仕事でスキルや経験を積む
そこから、グラフィックデザイナーの主な働き方として、
・広告会社やデザイン会社などの企業に就職する
・インハウスデザイナーとして、企業の広告宣伝部や商品開発部に所属し、自社製品のデザインに関わる
・フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動する
などがあります。
ファッション・アパレルブランドのグラフィックデザイナーは、トレンドや市場動向を踏まえつつ、商品が最も魅力的に見えるようなデザインを考える専門職です。
そのため、グラフィックデザインの経験を求められることが多く、未経験では難しい場合がほとんどです。
ただ、グラフィックデザイナーとしての実務経験がなくても、大学や専門学校などでグラフィックデザインの経験があった場合には認めてもらえる可能性もあります。
また、ファッション・アパレル業界に限らず広告会社などで、グラフィックデザインの経験や、何らかのデザインの経験があれば、ファッション・アパレル業界のグラフィックデザイナーとしての転職も期待できます。
さらに現在、ファッション・アパレル業界ではEC化の流れが進んでおり、今後は、WEBデザインなどにも役割が広がっていき、多様な形でファッション・アパレル業界のグラフィックデザイナーとして活躍できるかもしれません。
グラフィックデザインのスキルは、どの業界でも役に立つスキルです。まずはグラフィックデザインの経験から積んでいき、スキルを磨いていけば、今後のキャリアアップに繋がるでしょう。
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アパレル業界職種ガイド決定版https://www.readytofashion.jp/mag/column/apparel-occupation/
【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)