アパレル業界を目指す方、また現に働いている方のために、アパレル業界の最新動向を知ることができるニュースをピックアップする月刊連載企画「編集部が気になるアパレル業界ニュース」。

今、アパレル業界ではどんなトピックがホットなのかを知ることで、企業選びや職種選び、面接対策などで役立つこと間違いなしです!ぜひご覧ください。

文化功労者に「コム デ・ギャルソン」の川久保玲。

出典:繊研新聞社

2023年度の文化勲章受章者と文化功労者が発表され、文化功労者に「コム デ・ギャルソン(COMME des GARÇONS)」の川久保玲氏が選出されました。

本選出に際し川久保玲氏は、「この度の受賞は、スタッフはもとより、産地、縫製工場など、常に服作りに協力を惜しまず助けてくださったたくさんの方々のお力があってこそと改めて感謝いたします。また、国がファッションを文化として認め、学術文芸を推奨することはこの分野の今後の発展にもつながっていく大きな励みになると思います」とコメント。

また、「今の社会情勢、世界中で起きている悲惨なことに対して私は無力ですが、私なりに新しい表現を模索しながら服を作り続けることが、平和のあり方の一つと信じて進みたいと思います」と、業界を超えて現在世界が直面している社会問題についても言及しているのが印象的でした。

文化功労者は、科学や芸術など、文化の発展に尽力した人に政府から与えられる称号。2023年には、美術家の横尾忠則氏や、CGアーティストの河口洋一郎氏らが選ばれました。

ファッション業界では、1996年にデザイナーの森英恵氏、2010年には「イッセイ ミヤケ」デザイナーの三宅一生氏が受賞しています。

他業界と比較してファッション業界人の受賞歴は少ないので、ファッションやアパレル業界の国内における地位向上のきっかけにつながるといいですね。

コム デ・ギャルソンの求人一覧

参考:文化功労者に選ばれた川久保玲さん「平和のあり方の一つと信じて進みたい」

「ボッテガ・ヴェネタ」が職人育成学校を開校

出典:FASHIONSNAP

イタリアを代表するラグジュアリーブランド「BOTTEGA VENETA(ボッテガ ヴェネタ)」が、次世代の職人を育成する専門学校「Accademia Labor et Ingenium(アカデミア レイバー エ インゲニウム)」を10月に開校しました。

専門学校名は、ブランド創業当初からの理念である「Labor et Ingenium(クラフトとクリエイティビティ)」に由来します。

そもそも「ボッテガ」とは、イタリア語で「工房」を意味する言葉。高い職人技術でハンドメイド製品を生産する人のことを指します。

「BOTTEGA VENETA」は、イタリアの職人技術を守るべく、2021年末にイタリアの工房をサポートするプロジェクトを行うなど、工房の社会的支援に積極的に取り組んでいることでも知られています。

今回、開校された同校は、同ブランドにとって欠かすことのできない、「ボッテガ」との結びつきを基盤に誕生。イタリア・ヴィネト州のモンテベッロ・ヴィチェンティーノのアトリエとポヴォラロ・ドゥエヴィッレの生産拠点の間に新設されました。

同校では、年間50人の学生を「BOTTEGA VENETA」の5人の熟練職人が育成。コース修了後には学生のブランドへの雇用が保障されるなど、雇用機会も創出します。

最大の特徴は、同ブランドの従業員や新入社員だけでなく、外部からの受講生も受け入れていること。世界的なメゾンが外部の受講生を受け入れることは珍しい取り組みです。また、既存スタッフに対しても、スキル向上のためのカリキュラムを提供するほか、地域のパートナーと協力したトレーニングも実施するそう。

ビッグメゾンの職人や工房に対する取り組みは、職人不足が続くアパレル業界にも重要な意味を持つことは言うまでもないですが、卒業後の学生の雇用も保障されている点においても、ファッション業界の不安的な雇用制度を改善していく一歩となるのではないでしょうか。

参考:ボッテガ・ヴェネタが職人育成の専門学校を開校、年間50人の学生を受け入れ

「ファミマソックス」でも知られる「コンビニエンスウェア」が初のファッションショーを開催

出典:WWD JAPAN

ファミリーマートは11月30日、東京都とファッション・アパレル関連団体で構成する「ファッションフェスタ実行委員会」によるプロジェクト、「TOKYO FASHION CROSSING」との協業により「ファミリーマートフェス)」を開催します。

会場が国立代々木競技場となる本フェスでは、「FACETASM(ファセッタズム)」デザイナーである落合宏理氏が監修するオリジナルブランド、「CONVENIENCE WEAR(コンビニエンスウェア)」の新作を発表するファッションショーを実施します。

コンビニエンスストアがファッションショーを開くのは初めて。当日はファッションショーだけでなく、ファミリーマートのプライベートブランド「ファミマル」や、新たな試みも発表する予定とのことです。

これを受けて落合宏理氏は、「日本中を巻き込んで一つのコンビニが大きいフェスをすることは、新しい文化・時代を切り開くという意味で、このチャレンジを見ていただくことは今の日本にとってすごく重要なことだと思います」とコメントしています。

「ファミマソックス」の愛称が誕生するほど、広く親しまれているファミリーマートのアパレル商品。みなさんや、みなさんの周りの方でも愛用者は多いのではないでしょうか。

緊急時の需要が高かったコンビニエンスストアのウェアをファッションとして昇華させるだけでなく、今回新たにファッションショーを開くのは、新鮮で面白いです。今後の「CONVENIENCE WEAR」にも注目です。

参考:ファミマの「コンビニエンスウェア」がファッションショーを開催 コンビニ業界初の試み

アダストリアがフリマサービス「.C」を開始

出典:WWD JAPAN

株式会社アダストリアは、アダストリアグループのブランドやショップスタッフが出品者となるフリマサービス、「.C(ドットシィ)」を10月11日に開始しました。

現在「.C」では、スタッフの出品商品を会員が買うという形を採っていますが、将来的には会員も出品者として参加できる、「メルカリ」のようなCtoCのフリマプラットフォームを目指していくそう。

会員数約1650万人(2023年8月末時点)を誇るECモール「.st(ドットエスティ)」と会員情報を連携し使用する本サービス。「.C」は「.st」のスタッフのスタイリング投稿のフォロー情報とも連携しているため、好みのスタイリングや体形の近いスタッフの出品商品が探しやすい仕組みになっています。

普段からスタイリングを参考にしているスタッフのフリマで購入可能なため、フリマサイトを利用する中で発生する、自分に似合うものが見つからない、取引に対する不安などの悩みを軽減するだけでなく、過去のアイテムが手に入ったり、商品の利用シーンが検索しやすいといったメリットがあります。

アパレル業界では、「ZARA(ザラ)」がイギリスでテスト的に自社開発のCtoCフリマサービスを始めたそうですが、国内の大手アパレル企業が本格的に運営するフリマアプリは初めてなので、業界に対してどのような影響があるのか楽しみです。

インフルエンサーマーケティング的な視点とサステナブルな視点、フリマサービスのデメリットを総合的に結びつけた画期的なサービス、ぜひみなさんも利用してみてはいかがでしょうか。

参考:アダストリアがフリマサービス開始 自社EC「ドットエスティ」と連携、将来はCtoCに

東急がBtoB向けのオンライン卸売プラットフォーム「マケプレ」を立ち上げ

東急グループが、BtoB向けのオンライン卸売プラットフォーム「m a k e p r e (マケプレ)」を立ち上げました。

本サービスは、東急の「社内起業家育成制度」の一環として開発。海外のアパレルブランドの商品の仕入れをECサイト上で実施できる、日本のバイヤー向けのオンライン卸売プラットフォームサービスです。

アパレル業界では、コロナの影響による売上低迷から、海外出張を伴う仕入れが難しくなっているほか、売り上げの見込める仕入れに偏ってしまう現状があります。そのため、店舗ごとに個性を出すことが難しく、日本のアパレル業界では新たな価値が生まれにくいと言われています。

そんな現状を打破すべく、開発された本サービス。バイヤーが、時間や金銭的コストを最小限に抑えながら仕入れをできるだけでなく、小ロットでの仕入れも可能なので、ラインナップも豊かになり多様なニーズに応えられるようになります。また、輸入申告や税関審査などの煩雑な手続きを同サービスが代行するため、海外ブランドの商品の輸入に伴う手間を省くことができるそうです。

海外ブランドにとっては、より簡単に日本市場に進出することができるので、双方のビジネスの発展に寄与します。

今回の取り組みによって、輸入のハードルが低くなるため、消費者にとっても今まで正規代理店で購入できなかった海外アイテムを手に取れる機会になるのではないでしょうか。実際にどうサービスが導入されるのか、今後も注目したいですね。

参考:東急がB2B向けオンライン卸売サービス「マケプレ」をスタート、海外ブランドの仕入れを簡略化

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。