東海地区を拠点とする繊維商社が集まるグループ、NAGOYA ALL FASHION SOCIETY(通称NAFS)とファッション・アパレル業界に特化した求人サイトを運営するREADY TO FASHIONが、共同でトークセッションをオンライン配信にて開催しました。
毎回異なる繊維商社とアパレル企業の担当者をお呼びし、川上・川中・川下の各業種による事業やキャリア、仕事の違いをざっくばらんに話しました。
この記事では、11月13日(水)に行われた興和株式会社、タキヒヨー株式会社、株式会社TSIの3社によるトークセッションの様子をお届けします。
登壇企業
興和株式会社
1894年創業。愛知県名古屋市に拠点を置く総合商社。素材・原料からインフラ・機械設備まで幅広い商材を扱うメーカーとして、医薬品や医療機器、化学機器の製造販売を行うなど多岐にわたる事業を展開しています。
また、自社企画・自社生産を基本にオーガニックコットンブランド「TENERITA(テネリータ)」といったオリジナルブランドによるブランディング事業も展開。アウトドア用品やシューズ・バッグなどファッション雑貨も幅広く取り扱っています。
タキヒヨー株式会社
名古屋に本社を置く繊維商社。1751年に創業以来、ファッション流通業界における有数のリーディングカンパニー。「Create Future with Passion」をビジョンに、ファッションを中心とした繊維製品の企画・製造・販売を行っている。近年ではサステナブルソリューションカンパニーとして、ファッションにおけるサステナビリティ実現にも注力。2024年1月よりオウンドメディア「__ for good(ブランク フォー グッド)」を運営している。
企業詳細を見る株式会社TSI
衣料品の企画・製造・輸入や卸売り、小売などを行うアパレルメーカー。セレクトショップからスポーツアパレルまで幅広いブランドを展開。「脱アパレルONLY企業」を掲げ、デジタルエンターテイメントへの進出、コミュニティイベントの開催、体験型店舗の創出など、アパレル以外の事業へも拡大しています。
企業詳細を見る業種は同じでもやっていることは違う?
ー早速ですが、参加企業のみなさんから、会社の雰囲気なども交えながら自己紹介をお願いします。
興和株式会社 千葉さん(以下、興和 千葉):私は食品原料を扱う部署で6年間、商社営業を経験したのち、昨年の10月に人事部に異動しました。現在は、商社営業職の採用担当をしています。
弊社は、キャベジンやバンテリンなどを扱う医薬品メーカーのイメージが強いですが、実はアパレル事業も行っています。基本的にブランドごとに担当者が分かれているので、一人ひとりが裁量権を持って仕事ができる環境です。
タキヒヨー 森さん(以下、タキヒヨー 森):2010年にタキヒヨー株式会社に新卒で入社し、今年で入社11年目になります。現在は、新卒採用と育成・広報を担当しています。
社員のイメージを聞くと、一人ひとりのキャクターの濃さという意味で「動物園だよね」とよく言われたりします(笑)。商社は体育会系の印象が強いですが、そうとも限らないのがタキヒヨーらしさだと思っています。人見知りだけど結果を出している営業の方もたくさんいるんですよ。
TSI 木下さん(以下、TSI 木下):2020年にTSI株式会社に総合職として新卒で入社しました。販売をはじめとするさまざまな部門で経験を積んだのち、人事担当として新卒採用を行っていました。現在は、ダイバーシティの推進なども担当しております。TSIは、個性のある複数のブランドを抱える会社ということもあり、それぞれの個性を活かしながら活躍できる会社です。
ー実際には、業種ごとにどんな視点の違いがあるのでしょうか?
興和 千葉:先ほども言った通り、弊社は川上から川下まで全ての商材を取り扱っています。例えば、原料を扱う部署では、糸を手配し、生機(きばた)の生地を取引先に卸したり、製品を扱う部署では、原料の手配から縫製までを行ったりしています。また生産から販売まで一貫した体制をとっているブランド事業も展開しているので、川上から川下までをカバーしています。
タキヒヨー 森:タキヒヨーは「作る商社」とうたっているように、付加価値を創造することを強みとしています。例えば、紡績では、日本にも数台しかない英式紡績機を使用しています。この紡績機を使って通年量産体制で動かしている会社は弊社だけなんです。また川中では、デザイナーを抱えており、川下ではゴルフウェアのブランドやECブランドを運営するなど幅広い事業を行っています。
ー領域は同じように見えますが、深掘りするとそれぞれ違いが出てくるんですね。
タキヒヨー 森:そうですね。なので、興和さんとは同じ領域を扱っていますがライバル関係というより、むしろ助け合う関係に近いのかなと思います。
ーみなさんがいまの業種の会社を選んだのはどういった経緯だったんですか?
TSI 木下:自分に一番近い存在がブランドの店舗やECサイトでした。新卒入社ということもあり、小売の会社がイメージしやすかったのは正直なところです。ですが、TSIでは製造から卸を一貫して行っているので、お客様の声を商品作りやサービスに直接活かせるビジネスモデルにも魅力を感じました。
ー実際に、一貫したビジネスモデルが相乗効果をもたらしたエピソードはありますか?
TSI 木下:「ジルバイ ジルシチュアート(JILL by JILLSTUART)」の看板商品のトートバッグがあるのですが、インスタグラムのライブで「どんな色があったら買いたいですか?」と、バーチャルでイメージを見せながらお客様とコミュニケーションを取り、その時にあった声から商品化した事例があります。メディアに取り上げていただいて、新卒の方が興味を持ってくださるきっかけにもなりました。いろんな意味で会社の価値の向上につながっていると思いましたね。
興和 千葉:私は、ファッションに興味があったというよりは、商社として海外と取引がしたい、外国語を使って仕事がしたいという思いから入社を決めました。あとは、一つの事業に偏らない安定した経営基盤にも魅力を感じました。
タキヒヨー 森:ファッション業界で採用を受けたのは、たまたま知ったタキヒヨーだけでした。専門分野出身でなくとも、企画やマーケティングに近い部分に若手のうちから携われたり、さまざまなブランドや仕入れ先の会社の方と関われたりする業種って他にないのではと思ったんです。
あとは、「ファッションは文化。直接役に立たないかもしれないけど、かけがえのない価値を感じさせてくれたり、人生を変えてくれることもあり得るものだ」という社長の言葉も入社を後押ししてくれました。そういった考えを持つ創業者のもとで、もの作りができるのが素敵だなと。
ー就活をしている時は、同業他社との比較の際にどこに注目していましたか?
興和 千葉:商社の就活の側面でいうと、安定した基盤があるかや、海外にどれくらい支店があるか、将来的に海外とどれくらい関われるのかを見ていました。
タキヒヨー 森:企業としての規模感や事業所の構え方、大まかなビジネスモデルは見ていました。あとは、規模感が似通っていても仕事内容に違いが出てくることもあるので、社員がどう会社や製品の価値を作っているのかに着目するのが大事だと思っています。そういった意味でも、一次情報に接することができるイベントに行くことで、自ずと違うところが見えてくるのではないでしょうか。
TSI 木下:将来を見据えた時に、会社がどんなことに新しく取り組もうとしているのかは注目していたポイントでした。また、小売系のアパレルメーカーは、同じ総合職でも全国転勤が伴う販売職の場合があるなど、会社によって業務内容にかなり違いがあります。入社後、実際にどんな仕事をするのかを意識するといいのではないでしょうか。
自分らしい働き方を模索する
ーそれぞれの立場から感じる、この仕事の面白さや達成感はどんなところにありますか?
タキヒヨー 森:業種の特性もありますが、取引先に関わらずさまざまなブランドをつなげられるのは面白いですね。最近では、アパレル企業が飲食店など異業種とコラボする事例が増えてきていますが、実は繊維商社が仕掛けていたりしているんです。後ろで考えたり仕掛けたりできるのは繊維商社ならではだと思います。
興和 千葉:私自身のやりがいは、商社営業をしていた時に、コロナ禍で工場が生産量を落とさなければならなかった中で、千葉が言うなら発注の量も落とさずに頑張ってやってあげよう、と工場の方が対応してくださったのは、少し認められた感じがしてうれしかったですね。
TSI 木下:ブランド事業には直接的に関わっていませんが、街中で自社の製品を使っている方をたくさん見かけると、私の仕事ってそこにつながっているんだなと実感できますし、職種や部門問わず社内の皆さんのやりがいにつながっていると思います。
人事の仕事で言うと、入社のきっかけの一つに私の存在があったと言ってもらえた時は頑張ってよかったなと思いました。会社の魅力が伝えられたのがうれしかったですね。
ー10年後、会社でどんなことをしていると思いますか?
興和 千葉:人事に異動したことにより、社内のさまざまな部署の方との関わりが増え、全社的な理解が深まりました。将来的には商社営業に戻るのですが、その時のためにも社内で人脈を広げ、事業部を跨いで新しいビジネスを構築できればいいなと思っています。
TSI 木下:人事の仕事は奥が深く、意欲を持ってできます。なので、他の部署や事業部で経験を積んだのちに、新しい視点で人事の仕事ができるようになるのが理想です。
あとは、性別やライフステージによらない活躍ができる意識づけを会社としてもしている中で、私自身も誰かのロールモデルになれていたらうれしいです。
タキヒヨー 森:発信活動とビジネスをつなげ、10年後にはこの二つが統一的な発信になっていればいいなと思っています。そのためにも、部門外の人やビジネス以外の場面で知り合った人とも仕事をしていきたいです。そういったことを少しずつ広げていくのが僕らしい働き方だと思っています。
業界の課題と新卒に期待していること
ー業界に対して感じている課題と、新卒の学生に期待していることを教えてください。
興和 千葉:人手不足などの問題から国内の縫製工場の生産体制が追いついていないところもあるため、今後は海外にも視野を広げていく必要があると思っています。
そんな中で新卒の学生の方に期待していることは、主体的に考えて動けることですね。言われたことをそのままこなすのではなく、自分でひと工夫を加えることも大切だと思います。
タキヒヨー 森:商社不要論が叫ばれていますが、商社として必要なのは、売り方の支援や原料の開発など付加価値をつけて差別化を図ること。あとは、サステナビリティです。世界第二位の汚染産業と言われているファッション業界ですが、サプライチェーンの大部分を担っている繊維商社としてクリアにしていくことが必要です。
新卒の学生に期待していることは、自分なりに考えて自分なりの正解を出せるかという当事者意識です。僕らが求める人材は徹底してプレイヤーとなる人。このブランドの、この人に製品を提案する、そういった一つ一つの個別性に対して全力を注げる当事者意識を持ってもらいたいと思っています。そうやって地に足をつけて考えられる人は、話すことが得意といった表面的な派手さがなくても活躍できると思います。
TSI 木下:私が感じるアパレルメーカーの課題としては二つあります。一つは、ただものを作るだけではなく、体験価値や服を通じたコミュニティ形成の提供といった付加価値をつける必要があるということ。もう一つは、実は古い体質や保守的な部分が残っているところです。
そういったことを解決するには新卒のパワーが必要だと思います。教えられたことを素直に吸収して自分の基盤を作りつつ、フレッシュな視点を物おじせずに伝えて、進めていく力のある人が求められるのではないでしょうか。
ーありがとうございます。最後に、学生の方へのメッセージをお願いします。
興和 千葉:自分が大切にする価値観を深掘りし、それにはどんな会社があるのかを分析してほしいと思います。今後も他のイベントで皆さんにお会いできたらうれしいです!
TSI 木下:就職活動をするにあたって悩みが尽きないと思いますが、たとえ選考に落ちてしまってもみなさんが悪いわけではなく、お互いにマッチしなかっただけです。できるだけ気持ちを軽くして自分に合う企業を探してもらいたいです。それがTSIだったと言う方が、この中にいらっしゃったならうれしく思います。体調にはくれぐれも気をつけて頑張ってください。
タキヒヨー 森:学生さんを騙して採用をしようと思ってる会社は、少なくともこの参加企業にはいません。こういったイベントなどで率直にコミュニケーションを取れる機会を通して、ぜひたくさん質問してください。就職活動や採用をお互いの納得のプロセスとして歩んでもらえればなと思います。本日はありがとうございました。
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