東海地区を拠点とする繊維商社が集まるグループ、NAGOYA ALL FASHION SOCIETY(通称NAFS)とファッション・アパレル業界に特化した求人サイトを運営するREADY TO FASHIONが共同でトークセッションをオンライン配信にて開催しました。

毎回異なる繊維商社とアパレル企業の担当者をお呼びし、川上・川中・川下の各業種による事業やキャリア、仕事の違いをざっくばらんに話しました。

この記事では、11月20日(水)に行われた瀧定名古屋株式会社、サンラリーグループ、株式会社シップスの3社によるトークセッションの様子をお届けします。

登壇企業

瀧定名古屋株式会社

アパレルなど繊維製品の企画から開発、仕入れ・生産・販売までを一貫して手がける、1864年創業の繊維専門商社。メーカー機能を持った企画提案型の繊維専門商社として、大手アパレルメーカーや流通業に対して、素材開発や、生産管理、生産調達機能を担っています。国内だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、アジア各地にマーケットを展開しています。

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サンラリーグループ

レディースやキッズを中心とした、衣料品の企画・製造・卸売り(BtoB)・自社ブランドの小売業を行う会社です。約400社700ブランドの幅広い取引先企業に対して、アパレル商品の企画・提案・販売を行うODM事業のほか、自社ブランドを含めたアイテムを取り揃えるアパレルショップ「Knuffel(クヌッフェル)」を運営しています。

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株式会社シップス

アメリカから輸入した衣料品の販売からスタートした、衣料品や衣料品関連商材の企画・製造及び小売販売を行うアパレル企業。「SHIPS」「SHIPS KIDS」「SHIPS any」など、全国約80店舗の直営店を展開しています。本当にいいと思ったものを直接お客様にお伝えしたいという想いから、創業から直営店にこだわり続けています。1952年の創業から、2025年には会社設立50周年を迎えます。

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川上・川中・川下企業の違い

ーまずはじめに、簡単に自己紹介をお願いします。

サンラリーグループ 永田さん(以下、サンラリー 永田):サンラリーという名前を初めて聞く方も多いと思うのですが、主な事業として大手企業にODMを行っています。詳しい業務内容や魅力を知っていただき、興味を持っていただけたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

瀧定名古屋株式会社 小出さん(以下、瀧定 小出):人事課で採用と研修を担当している小出です。当社は大半がテキスタイルを扱う事業を行っているのですが、実は問屋業としての役割も担っています。本日は、さまざまな業種や立場からいろいろな話ができればと思っています。

株式会社シップス 乙部さん(以下、シップス 乙部):関東で販売員として13年間働いた後、3年前から人事部門にて採用活動や教育、労務など幅広い業務を担当しています。シップスは、名古屋地区で3店舗を展開しているので、皆さんにも馴染みのあるブランドかもしれません。ファッション業界がどのように協力して盛り上がっているのかを少しでも感じていただけるとうれしいです。

ーサンラリーさんと瀧定名古屋さんは、どちらも川中の事業にも携わられていますが、具体的にどんな事業の違いがあるのでしょうか?

サンラリー 永田:瀧定さんは生地の段階から関わるなど、弊社に比べて上流の業務を担当されていますが、弊社の主力はあくまで企画などの川中業務。自社工場を持たず、企画したものを小売業者に提案しています。

瀧定 小出:弊社のお客様は、シップスさんのような小売業者の方です。生地部門が、次シーズンのイメージにあった生地や企画をブランドに提案します。製品部門では、製品のプレゼンを行ったり、ブランドから依頼された企画の生産を請け負ったりしています。

ーみなさんが現在の業種を選んだ経緯は何だったんですか?

瀧定 小出:総合大学の哲学科という少し変わった学科にいたので、将来何をしたいのか全く分からなかったんです。そんな中、大学の就職課で会社のパンフレットをたまたま目にしたのをきっかけに、文系でも、もの作りができる会社に魅力を感じたんです。誰かが作ったものを売るのではなく、自分で考えて物を作り、それを世の中に提案できるのは面白いなと。

シップス 青柳:私は中途採用で入社したので、新卒入社とはまた少し違うのですが、大阪の4年制大学を卒業した後、ファッション業界でものづくりをしている企業に採用担当として入社しました。シップスの販売職では、販売接客だけでなくプレスやVMDの業務なども行っているので、販売職からプレスや商品部門へキャリアを広げられるのも魅力です。そんなシップスの一員として、学生の皆さんにこの魅力を伝え、共に働いていきたいと思ったのが入社のきっかけでした。

サンラリーグループ 磯村さん(以下、サンラリー 磯村):アパレル業界だけでなく、インテリアやウェディング業界なども視野に入れて就職活動をしてました。ですが、最終的には服に携わる仕事がしたいと思い、アパレル業界で就職をすることを決めたんです。中でも、大きな金額が動くビジネスであり、商品企画もできる川中の業種に魅力を感じました。

好きなことを仕事にすると続かない?

ー好きなことを仕事にすると長く続かない、というイメージが持たれやすいですが、好きなことを仕事にすることについてどう考えていますか?

シップス 青柳:業界や仕事の良い面だけでなく、時にはさまざまな情報が入ってくることもありますが、好きなことを仕事にするのはいいことだと思います。就職活動をしていた時は、自分がどんな仕事をしたいのか全く分からない状態で始めたのですが、説明会に参加するうちに、自分が好きなファッション業界だけは内容がしっかり頭に入ったんです。

ただ、好きなことだけではなく、30代、40代になったときにも働き続けられるかなど、将来を見据えた上で「好き」を選ぶことも大切だと思います。

サンラリー 磯村:私も青柳さん同様、苦手なことだと無意識に遮断してしまう癖があったので、好きなことを仕事にしたいと思っていました。自然に学ぶ意欲が湧いてきて、成長も早くなると思うんです。

ーでは、業界ならではの大変なことはありますか?また、それにどう向き合っていますか?

瀧定 小出:仕入れ先と卸先の間にいる立場なので、さまざまな苦労があります。例えば、人の手が関わっている以上、十分に対策を取ったとしても、不良品を市場に出してしまうことがあります。その際に、仕入れ先とどのように接するかが重要。卸先にも冷静かつ毅然とした態度で対応することが求められるので、両社間の調整は難しい部分だと思います。

サンラリー 永田:当社も川中の企業として川上と川下の間での調整役を担っています。実際に、中国の工場でオーダーした生産が進んでいないとき、卸先の企業から指摘されることがありました。その時はすぐに中国に向かい、工場で生産状況を管理するなどの指示をしました。

私自身、強く要求するのが得意ではないのですが、卸先の企業や最終的に商品を待っているお客様のために、時には厳しく対応する必要があります。最終的に取引先に「ありがとう」と言われると苦労も報われますし、こうした小さな成功経験を積み重ねることで、どんな困難も乗り越えられる自信になります。それで頑張れているんだと思っています。

シップス 乙部:やりがいと大変さが一体となっているのが販売職です。最前線に立つ仕事なので、感謝の言葉をもらえますが、時には厳しい言葉をもらったりもします。大変ですが、私はそこにやりがいや楽しさを感じています。

たとえ一度お客様の期待を裏切ってしまっても、その時のクレーム対応次第で、信頼を取り戻すことができるかもしれません。今後、同じ問題が起こった時には、きちんと対応できると自信を持てるようにするためにも、経験を積んでいくことが大切です。最終的には、どんな困難も成長につながると思えるようになるのではないでしょうか。

ー国内のマーケットの縮小は業界でも課題にされていることですが、どのように対応するべきだと思いますか?

瀧定 小出:日本の人口は減少し続けていますが、世界全体の人口は増え続けています。つまり、競争の舞台は世界に広がっていくということです。

当社では現在、瀧定ヨーロッパ、瀧定上海、瀧定ベトナム、瀧定カンボジア、瀧定コリアの5つの拠点があります。企業ごとに異なる戦略があると思いますが、今後は世界各地に拠点を増やしていきたいですね。

サンラリー永田:人口減少を考慮すると、当社もグローバル化が必要だと感じています。過去に海外向けに発信した際は苦戦したのですが、今後は無視できない問題だと思っています。最近では、若い世代の方たちの多くが英語を話せるようになっています。そういった人材が加わることで、活躍の場を広げることができ、会社の売り上げ向上にもつながるのではないでしょうか。

ー私たちビジネスパーソンは常に「お客様に価値を提供する」と言い続けていますが、その具体的な価値は、社会人経験のない学生の皆さんには少し見えにくい部分だと思います。皆さんが考える「価値」とは何だと思いますか?

サンラリー 永田:適正な価格・品質・商品の価値がしっかりと伝わっている商品のことだと思います。3万円の服の価値を理解できる人もいれば、その商品が千円でも買わないと思う人もいる中で、一人ひとりの価値観に合った商品を提供するのが私たちファッション業界の役割だと思っています。

シップス 青柳:私は、記憶に残るかどうかだと思います。店舗に足を運んで、印象が残ればまた行きたくなりますが、逆に記憶に残らなければ魅力を感じづらいと思うんです。

ーありがとうございます。業界に対して感じる課題と、新卒の学生に期待していることについて教えてください。

シップス 青柳:オンラインで簡単に購入できる時代になりましたが、その分、再来店につなげることができる店舗での体験価値や接客価値が重要になってきています。

そのためには、まずは自分自身が接客を楽しみ、お客様と積極的にコミュニケーションを取れる人を求めています。人間には感情があるので、一緒に喜んだり悩んだりできるのがAIとの大きな違いですよね。そういった感情を活かすことが重要なのでは。

サンラリー 磯村:円安の影響で輸入価格が上がり、海外で生産を行っている私たちにとっては厳しい状況です。そのため、ただ価格を上げて販売するだけでなく、付加価値を加えて提供することが必要になってきます。サンラリーグループでも、少しずつサステナブルファッションの取り組みを進めています。

新卒に期待することは、主体性を持ってさまざまなことに挑戦してほしいということです。そのためには失敗を恐れない強いメンタルも大切ですが、失敗から学べることも多いです。

瀧定 小出:私が新入社員だった頃は国内生産が主流で、海外の生産は韓国でしか行っていませんでした。それから20年以上が経ち、中国や東南アジアでの生産が増え、今では国内生産は少なくなってしまっています。世の中は急速に変化していますが、日本人としてものづくりの精神は大切にしつづけたいと思います。

また、大量生産・大量消費の時代は終わり、企業として成長を続ける方法を見つけることが大きな課題です。日本の人口は減少し、マーケットも小さくなる中で、どうやって収益を上げていくかが重要なテーマになってくると思います。学生の皆さんに期待したいのは、瀧定の未来を作る主体的な姿勢です。自由にアイデアを出し、積極的に行動することで、会社をさらに発展させてほしいと思っています。

ー自由に意見を言える環境は、会社として大切にされているんですか?

瀧定 小出:そうですね。例えば、会議で何も言わずに過ごすのが一番楽ですが、それをしないようにとよく言われていました。間違っていても構わないから、自分の考えをしっかり発言しなさいと。全員が「わかる」と言ってしまうと、議論の意味がなくなります。さまざまな意見を交わしながら、答えを導き出すことが大切だと思っています。

ー主体性というキーワードが出てきましたが、皆さんが考える主体性とは何ですか?

サンラリー 磯村:自分で考えて行動することが主体性だと感じています。言われたことをやるのは簡単ですが、自分が今やったことが次にどう活かされるのか、次のステップまで見据えることが大切ではないでしょうか。

瀧定 小出:自主的と主体的の違いについては、よく学生に話をします。例えば、自主的とは、ゴミが落ちていた時に、それを拾ってゴミ箱に捨てるか、または見て見ぬふりをするかということ。ゴールが決まっているんです。

一方、主体的とは、まだ明確になっていない課題を見つけ、答えがない中で少しでも良くしようとすることだと思います。生地の企画を担当しているので、売れるかどうか分からないまま量産を始める決断を繰り返してきましたので、主体的な姿勢はベースに求められるのでは。

シップス 青柳:お二方のおっしゃる通りだと思います。自分から積極的に働きかけ、質問したり教えてもらったりすることも大切。自分だけで悩まず、相手に頼ることも成長につながると思っています。

思い描いたものを世の中に届けられる仕事

ー10年後、どんなことをしていると思いますか?

瀧定 小出:10年後の目標としては、世界各国に拠点を増やし、グローバルに人材を採用できるようになっていたいです。日本市場だけでなく、世界に向けて商品を販売する時代に突入している中で、現地で人材を採用し、その人たちが自社の名前で営業・販売する仕組みを作っていきたいですね。

シップス 青柳:採用の仕事を続けつつ、プライベートの時間も充実させたいと思っています。ただ、ライフステージが変わっても仕事を続けたいという思いは変わりません。

ー楽しさを感じているからこそ仕事を続けたいと思えますよね。どんなところに楽しさを見出しているのでしょうか。

シップス 青柳:入社のきっかけが人事担当者だと言ってもらえると、とてもうれしいですね。学生と直接顔を合わせてコミュニケーションを取った後に、面接から内定、入社まで全ての過程を見れるのが採用担当ならではのやりがいだと感じています。入社式で新入社員の姿を見ると、毎年感動を覚えます。

サンラリー 磯村:私もライフステージが変わったとしても、仕事とプライベートを両立させたいです。サンラリーグループでは、社内の託児所を利用しながら働ける環境が整っています。役職につける可能性も広がるので、バリバリ働きながら子育ても頑張りたいと思っています(笑)。

ーこんなことをしたい、という具体的な目標はありますか?

サンラリー 磯村:弊社は1人に与えられる仕事の幅が広いため、さまざまな業務を経験できます。私自身、役職がなくても採用以外に給与担当や労務業務も任されてきました。今後は、さらに幅広い業務を担当し、やりがいを感じながら仕事を楽しみたいと思っています。

ー最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。

サンラリー 磯村:本日はご視聴いただき、ありがとうございました。学生の皆さんの顔を直接見ることができず残念ですが、今後も説明会などでお会いできることを楽しみにしています。

瀧定 小出:どの業種でも、自分の思い描いたものを世の中に届けるという点では、やりがいがあり楽しい仕事です。多くの人が関わった商品が市場に出ていく過程を少しでも感じ取っていただけたら、うれしいです。

シップス 青柳:初めて異なる業種の皆さんとディスカッションを行い、新しい発見ができて私自身も学びになりました。まだ知らないアパレル企業も多いと思いますが、まずは自分から情報を積極的に取りに行くことが大切です。

とりあえず参加してみる、といった気持ちで、いろんな会社の話を聞いてください。次は実際に顔を合わせて、さらに深い話ができることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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