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ファッションをテーマに活動している若者のリアルや、同世代へのメッセージを届ける連載企画「若者VOICE」。第12回目となる今回は、一般大学を中退し、専門学校で服作りを学ぶDANさんに、自身のクリエイションについて、ファッション業界への想いや今後の展望について聞いた。
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【連載】「若者VOICE:vol.12 文化服装学院在学中/ファッションデザイナー」シーンに合わせたものは服に限らず廃れない。
DAN
文化服装学院2年。大学時代にファッションデザイナーを志そうと決意し中退。現在は文化服装学院に入学しファッションデザインと制作を学んでいる。ワークやアウトドア、ストリートなどの要素を軸にミニマルな装いに仕上げた服は業界内外を問わず多くのファンを獲得している。
Instagram:@dan__official
―現在は服作りを中心にクリエイティブワークをされていますが、そこに至った経緯をご説明いただけますか?
DAN:高校までは大学付属高校に通うごく普通の高校生でした。アメカジを着てみたり、ZARAを買ってみたり、ファッションとしては紆余曲折していましたね。高校卒業後、いわゆるエスカレーター式にそのまま一般大学に進学し、国際系の学科で1年ほど学びました。自問自答の末、大学をやめて文化服装学院に編入しました。
―自問自答?
DAN:はい。過去の経験と将来のことを考える時間でした。昔ボルダリングのインストラクターをしていた時に、チョークバッグを手作りしたのがきっかけで、小物などを製作していました。その製作が一般学校の勉強よりもナチュラルに自分を表現できていることに気づいたんですよね。この経験からファッションを本格的に学びたいと思い専門学校に編入しました。
―ものすごい勇気だと思います。今は自身のブランド「DAN」を展開していますが、どのようなコンセプトで服を作っていますか。
DAN:自分が服作りをするときに大事にしていることは、今の時代価値を取り入れながら表現すること。流行を取り入れて、ミニマルな要素でまとめる。パターンの線も直線的なものが多くて、過剰な装飾はつけません。都会の風景に馴染む色合いを軸に派手すぎず、グレーなどの無彩色の服が多いです。あとは着心地や機能性を重視したディテールを服に落とし込んでいます。
―確かにDANさんの作る服は洗練されたミニマルなシルエットで、建築物のような美しさがありますよね。なぜ機能性を重視しようと思ったんですか。
DAN:身につけるものなので着心地が悪いと当然疲れます。ポケットがない服は別のカバンを持たないといけないですし、ミニマルな服でも他の要素を加えないとスタイルとして完成しない服は作りませんね。アウトドア用のアイテムを実際に着用してみて、便利だと思った素材とか機能を服に取り込んでいます。実際に自分で体感してみたことがデザインソースになっていることが多いです。昔から山登りやキャンプによく行っていて、その影響か自分の中の小物や服に対するイメージは機能性が先行しています。
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―影響を受けたアーティストやデザイナーはいますか?
DAN:自分がファッションを深く知り好きになったきっかけは「山本耀司」さん。ファッションシーンにおいて欧州優位の時代に日本人で流行を作り出した人。服作りに自分の理想の男性像・女性像をしっかり持っていて常に新しいことに挑戦している点がデザイナーとしてとても尊敬しています。高校生の頃、アメカジなどのカジュアルなウェアを着用していた時、「Yohji Yamamoto」の黒で統一された服を見たことが新鮮で衝撃的でしたね。 最近だと、「kiko kostadinov(キココスタディノフ)」。作業服からのインスピレーション、アウトドア要素を取り入れ、ミニマルにまとめ上げている服には、正直嫉妬しました(笑)
―卒業後はどのような進路を歩む予定ですか。
DAN:ブランドを継続して拡大させていければと考えています。
―就職するなどは考えないんですか?
DAN:つい最近まで、一度経験と感覚を養うためにも就職してからスタートするかすごく迷っていました。特に金銭面とか難しいことも多いけど、一度チャレンジしてから再度考えたいです。まあ失敗もせず就職しないのが一番いいんですけどね。
―ブランド継続。やはり目標はパリコレクションで発表ですか?
DAN:いえ、今のところファッションショーをやるつもりはなくて、定番を作り続けたいです。イメージは靴やデニムのようなファクトリーブランドに近いです。 ファッションショーって業界関係者は当然見ていますが、その他の人はほとんど無関心。しかもショーという少ない需要に対して、莫大なお金が必要。非生産的でメリットがあまり感じられないですね。ファストファッションや個性の強いセレクトショップがたくさん出てきた今、ショーを続けることに意味を見出すのもなかなか大変だろうなと思います。
―では、なぜ多くのブランドは未だにファッションショーをやるんですかね?
DAN:昔はショーをやったら「人気になる」・「一人前」っていう認識は確かにあったかと思います。既製服のブランドが出てきて、広く一般にそれが広まって来た時には、ショーやることは重要な意味があったと思います。今は「ショー=成功」なんて方程式は崩れていて、どこもPRの要素が強いように感じます。今ショーをやっているところはSNSなども活用しつつ戦略的にやっているか、単にステレオタイプなマインドのどちらかだと思います。
―関連する話としては、ヴェトモンがショーやらないと発表していましたね。
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DAN:個人的にはヴェトモンのショーを楽しみにしているので、やめて欲しくないというのが本音ですね。見ていて楽しいですしワクワクします。ヴェトモンは特にビジネスとしてもうまくやっていると聞きます。そんなブランドがショーをやらないということは、ファッションビジネスの本質がそこにはもう存在しないということだと痛感しました。
―では、ショーをせずに戦略的に見せ方がうまいと思うブランドはありますか?
DAN:戦略的にうまいなと思っているのが、シュプリーム。あのブランドはショーもやらず、あれだけの人気を集めていますよね。ブランドの世界観が非常に強いですし、スケート・ストリートのカルチャーが色濃い。そして、売り方も需要に対して過剰な供給はせずに、すぐ製品がソールドアウトするような「価値」や「世界観」を作り出している。服をうるというよりは「価値」・「世界観」を提供していると思います。服がそれ単体では売れ辛い世の中で「価値」の作り出し方を知っているように思います。
―ご存知だとは思いますが、ここ数年でアパレル産業が停滞しています。しかし洋服の供給量は約二倍になっている。その背景をどう感じますか。
DAN:その原因の1つには「ファストファッションの台頭」があると思います。おそらく、今ファストファッションを利用してない人はいないと思います。自分もインナー・靴下とか、安価での提供が故に消費速度も早いものは利用しています。消費材として磨り減ったら買っていく購買行動は、洗剤やトイレットペーパーと言った日用品などの消費行動に近い。まだインナー類が消費材として扱われる分には危機感は薄いですが、おしゃれ着などがその流れになってきてしまっている事は非常に怖いですね。
―どうしたら服の消費金額をあげられると思いますか。
DAN:衣服の優先順位は下がっている代わりに趣味などの優先順位は上がってきていると思います。そういう趣味の時間、個々のシーンに合わせて使える服を提案して行くことが重要だと思います。ニーズを汲み取るということ。例えば、アウトドアとか旅行とかの際に使えるものなど、シーンに合わせたものって服に限らず廃れづらいと思います。
―最後に、自分と同じくらいの若い世代に一言あればお願いします。
DAN:服作りをやろうと決意するまでには、色々な失敗や遠回りしたことがありました。大学でやりたいこと見つけられなかったり、 空白の時間を過ごしたこともあったんですが、今思うとその時間も決して無駄な時間じゃなく、自分の進む道を定めてくれて自信をつけてくれた時間だったのかなと感じます。同世代の人も、今悩んで遠回りしても、いつかやりたいことが見つかった時に肯定できるようになると思うのでたくさん悩んで後悔しないで欲しいです。