情報の発信源が都市部に集中しているファッション業界。だからこそ、あえて地方からファッションについて考える連載企画、“オシャレしなくていい街で、オシャレする。”の第三弾となる今回は、山口県山口市で古着屋「Re birth」を経営する中村さんにお話を聞いた。
まず、一番好きなことで勝負したい
──今年の5月で開店して丸5年を迎え、6年目が始まったと伺いました。そのあたりのお話も伺っていこうと思いますが、まず服を好きになった経緯やきっかけについて教えてください。
中村:一番最初に洋服に興味を持ったのは小学校5年生くらいの時かな?当時、仲の良かった友達のお兄ちゃんたちにすごくかっこいい人がいて、その影響で洋服をカッコいいと思うようになりました。なので、小学生くらいの頃から、詳しいことはよくわかんないまま一人で洋服を買いに行ってました。本格的に古着を好きになったのは高校三年くらいの時で、それまではN.HOOLYWOODとかHOLLYWOOD RANCH MARKETとかをよく着てましたね。そこからそういうブランドが古いものをサンプリングして服を作っているってことを知って、オリジナルが欲しくなったのがキッカケだったかもしれないかな。
──文化服装学院に進学したと伺っているのですが、その当時から自分のお店を持つことを見据えてアパレルで経験を積んでいたんですか?
中村:もともと高校を卒業して関東の大学に進学したんですが、中退して文化服装学院に進学しました。文化ではビジネスコースを選択していたので、自分で洋服を製作したりするよりも、店舗の分析とか経営に関することを中心に勉強していました。ただ、アルバイトとかに関しては、一旦アパレルから離れてバーテンやカフェなどの飲食系で働いていましたね。
──服飾系の学校に進学したのに、飲食業界で働いていたんですか?
中村:もともと飲食業界にも興味があったし、アパレルと飲食を合わせてやっているお店は結構あったりするので、学生の時期を活用して飲食系を経験しておこうと。今でも一つのビジネスモデルとして「アパレル×飲食」は面白いんじゃないかなとは思っています。あとは単純にアパレルや古着が狭い業界だからってことも理由の一つです。早い段階からアパレル一本でやっていくと、人脈とかに縛られてしまいそうな気がしたし、いろんな業界から学べることを探そうと思っていました。
──なるほど。でもそうやって飲食を経験している中で、22歳で地元の山口に戻ってお店を持つ決意をしたわけですが、なにかキッカケがあったんですか?
中村:バイト先の先輩が20代前半で自分のお店を持ち始めたんです。それを見ていて、「自分は何をしているんだろう?」って(笑)。当時は30歳くらいで自分のお店を持てればいいやぐらいに思っていたので飲食などを経験していたんですが、それがすごく遠回りをしているように感じて。それでとりあえず、まずは自分の一番好きなことをから始めようと思って古着というジャンルで自分のお店を出すことを決めました。そこから山口に戻ってきて、資金をためてお店を開きました。一般的に古着屋に就職してから独立しようとすると、販売とバイヤーを経験してからの独立になるんです。でも、そうすると独立するまでに合計で10年近くかかってしまう。それなら自分で一から始めようと。最初は何もかも手探りの状態で始まりましたけどね。
──手探りで初めて、苦労したことを教えてください。
中村:一番最初にアメリカに買い付けに行ったときは、荷物を送る方法もインボイス(税関申告書)の書き方も分からない状態で行ったので、現地で会った知り合いのバイヤーに色々教えてもらったり手伝ってもらったりしました。5年経った今でもアメリカで戸惑うことは多いです。この間買い付けに行ったときには、外で銃声がして一人でビビってたら、実は花火の音だったってこともありましたね(笑)。
山口という場所にこだわってやっていきたい
──お話にもありましたが、「Re birth」が開店して丸5年経ちました。5年間で変わったことはありますか
中村:オープン当初からお店に来てくれていた当時大学一年生だった子とかが社会人になって山口を離れても、休暇を使ってお店に来てくれたり、オンラインで買い物してくれたりするようになったことです。僕、個人の変化としては、自分の好きなものとお客さんが欲しているものを区別して考えることができるようになったかなと思います。特に最近は80s~90sのアイテムが人気で、探してるお客さんも多いので意識して買い付けるようにしてます。
──逆にこの5年間で感じた、山口で古着を売る難しさは何でしょうか?
中村:どうしても、関東とか都市部と比べて人口や服が好きな人の母数が少ないので、そういった点では地方は不利なのかもしれません。でも、例えば東京には古着を求めている人がたくさんいる分、古着屋さんもたくさんあるわけで。お客さんが自分のニーズに合わせてお店を選べる分、それぞれのお店の競争は激しくなりますよね。ただ地方では、お店が少ない分お店の選択肢が限られてきます。そうなると、一つのお店でいろいろなニーズに対応していくことが求められるので、都会にも地方にもそれぞれの難しさはあると思います。あとは、どうしても流行や景気の変化に左右されやすい業界なので、その部分の大変さはもちろんあります。僕自身、学生時代や自分のお店を出そうとしている時期に、古着屋が閉店して減っていくのを見ていたので、そういった怖さはありました。なので最初の頃は、「山口で勝負ができなかったら違う場所に出ていけばいや」くらいに思っていたんですけど、今はこの場所でやってるからこその人間関係や楽しさを感じてるので、逆に山口にこだわってやっていきたいと思っています。
──最後に、今後の展望や目標を教えてください。
中村:やっぱりお店としては、2店舗目を出したいという思いはあります。今と同じように古着でやっていくのかそれ以外のものに挑戦するのかはわからないですけど、山口でやることには変わりないと思います。
──ありがとうございました。