アパレル経理 / 財務の概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
<目次>
アパレル経理 / 財務とは?
アパレル経理 / 財務は、企業・ブランドの会計を担い、金銭授受や取引の流れを数値化・記録する会社経営において重要な金銭の管理を行う職種です。
売上・仕入管理や売掛金管理、現預金管理、経費精算、伝票起票、請求書処理、社員への給与支払処理、税金処理、保険料支払処理、原価管理、資産関連の処理、財務諸表作成、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)などの財務諸表作成、月次・年次決算業務などの各種会計処理を行います。外資系の企業・ブランドであれば、国内の税務申告用決算作成とあわせて親会社への決算作成が必要になります。
会計業務は、経営層など企業内部に会計情報を提供する管理会計(内部会計)、株主や債務者などステークホルダー・企業外部に会計情報を提供する財務会計の2つがあります。いずれも損益計算書や賃借対照表といった財務諸表、決算書を通して会計報告を行うため、アパレル経理 / 財務が記録した帳簿書類が重要になります。
そもそも経理とは経営管理の略。アパレル経理 / 財務の作成したデータをもとに、経営層は経営判断、投資判断などを行うため、アパレル経理 / 財務の仕事は企業・ブランドの方向性を左右すると言えるでしょう。
この記事では、アパレル経理 / 財務とまとめてご紹介いたしますが、アパレル経理とアパレル財務は厳密には業務内容が異なります。
アパレル財務は経営層に近い立場から、財務戦略の立案、金融機関からの借入や株式発行による資金調達、投資やM&Aなどの資産運用、IR・監査対応、予算編成・管理などを行う企業・ブランドの具体的な資金計画の立案に携わる職種です。
アパレル財務については、企業の方向性を定める業務になるため経営層が直接担うこともありますが、企業規模によってはアパレル財務が兼務することも少なくありません。企業・ブランドによっては、アパレル財務の最高責任者としてCFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)などの役職を置くこともあります。
企業・ブランドの収支や経営活動の結果を記録・管理するアパレル経理がこれまでの金銭の流れを担当する職種であることに対し、アパレル財務は経済的視点から経営に関する提案まで行うため、これからの金銭の流れを担当する職種であると言えるでしょう。
アパレル経理 / 財務の仕事内容
アパレル経理 / 財務の実際の業務内容を紹介します。
企業によって内部構造が異なるので、一般的な業務の一部を挙げていきます。
伝票起票
伝票とは、取引の内容を記録した書類を指します。伝票にその取引を書き記すことを起票といいます。
伝票には、入金の際に起票する入金伝票、出勤した際に起票する出金伝票、現金以外で取引を行った際に起票する振替伝票、商品の原材料を仕入れた際に起票する仕入伝票、事業売上が上がった取引に際して起票する売上伝票、見積書、発注書、請求書、領収書などの種類があります。
企業・ブランドで行われる各種取引は伝票に記録され、アパレル経理 / 財務はそれらを帳簿にまとめます。
帳簿作成
帳簿とは、企業・ブランドの取引を記録したものになります。帳簿は大きく分けて、主要簿と補助簿の2種類があります。主要簿は勘定科目別に取引を記録する総勘定元帳、取引の時系列順に仕訳を記入する仕訳帳を指します。
補助簿は主要簿を補う帳簿であり、現金出納帳や預金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、受取手形記入帳、商品有高帳、支払手形記入帳などが該当します。
また、仕入先元帳などの種類があり、それらの総称として会計帳簿といいます。会社法により、この帳簿の作成は義務付けられています。
帳簿の記録は簿記の仕訳というルールに則り行い、近年では会計ソフトを使用します。作成した帳簿は種類に応じて定められた保管期間中は保管することが義務付けられています。
買掛金・売掛金管理
掛取引とは、期日までに代金支払いを行うことを指します。
外部から仕入れた原材料など代金を支払わなくてはいけないものを買掛金、外部に提供した商品などについて代金が支払われていないものを売掛金といい、請求書の発行や支払、入出金の実施・管理などを行います。
現預金管理
現預金管理とは、入出金・残高照合を行う業務です。文字通り現金の管理になり、各種入出金に伴う残高の変更を都度確認しなくてはなりません。日々入出金があるため、アパレル経理 / 財務はこれを日次業務として行います。
経費精算
経費とは企業・ブランドの事業活動に伴って支出した費用になります。経費には旅費交通費や消耗品費、交際費などさまざまな種類があり、社員が一時的にその支出を立て替え、その立て替え額を支払う行為を経費精算と言います。
この支出を証明するためには領収書が不可欠です。この領収書を管理し、適切に処理する業務をアパレル経理 / 財務が担当します。
給与支払処理
社員や契約社員、アルバイトへの給与や、外部委託先への報酬などを計算し支払いを行う業務です。その記録を管理する賃金台帳の記載も同時に行います。
毎月の給与は残業代などにより変動があるため都度適切に処理しなくてはならず、加えて、不定期の各種特別手当や賞与・ボーナスなどの報酬なども管理・計算しなくてはなりません。
税務処理
企業・ブランドに課された税金を税務署に申告する業務が税務処理です。アパレル経理 / 財務は、税額の計算の上、貸借対照表や損益計算書、勘定科目内訳明細書など各種関連書類を作成します。
保険料支払処理
法人企業・ブランドは、社員を健康保険や厚生年金保険、雇用保険など社会保険に加入させる義務を負うため、社員の入退社に際して社会保険の加入手続きや脱退手続きを行います。社会保険関連の処理・管理もアパレル経理 / 財務の担当業務です。
年末調整
社員の給与から源泉徴収制度により差し引いた所得税について、年末に再計算し過不足を調整する業務です。扶養の変動など社員の個人環境の変化に応じて、源泉徴収額が変わるため、適切な数値に整えます。
決算業務
決算とは企業・ブランドの経営成績や財務状況を月次や四半期、年度ごとにまとめる業務です。
株主などに対して提出する会計帳簿をもとにまとめた貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)などの財務諸表、決算書の作成もこの業務に含まれます。加えて、確定申告書作成と該当の税務署・自治体に提出も行います。
財務戦略の立案
財務戦略とは、企業・ブランドの資金の集め方と使い方に関する計画を指します。
アパレル経理 / 財務は作成した財務諸表を分析した上で、資金調達・資産運用、予算編成に関する戦略を立案します。
財務戦略は企業の業績と成長に直結するため、重要な業務になります。
資金調達
企業・ブランドの運転資金を確保するためには、資金調達が不可欠です。銀行などの金融機関からの融資・借入や株式・社債の発行などが代表的な手段です。
アパレル経理 / 財務はその都度、適切なタイミングと方法、金額を定めて、必須書類の作成から条件交渉までを一貫してこの業務にあたります。
資産運用
企業・ブランドが持つ余剰資金の運用もアパレル経理 / 財務の大切な業務です。投資商品の購入やM&A、企業買収・合併などを通して、企業価値を高めます。
長期計画のもとそれらを行うため、社内の関係各部署や外部機関、金融機関の綿密な連携が欠かせません。
予算編成・管理
企業・ブランド内の各部署・プロジェクトに割り振る予算の配分を決定し、計画通りに予算が活用されているかを管理する業務です。
資金不足、それによる取引先への支払い滞納などが起きると企業の信用が下がりかねません。
それらの事態が起きないよう、都度調整や資金調達の追加を検討・実施します。
IR・監査対応
上場企業には、IR(Investor Relations、投資家向けの経営情報開示)が不可欠です。アパレル経理 / 財務がこのIR対応を兼務するケースも少なくありません。
また定期的に、監査法人への対応も発生します。監査とは、企業の財務状況に関する不正や決算関連書類の虚偽などがないかチェックする外部機関を指します。
アパレル経理 / 財務になるには? 求められるスキルと素質
アパレル経理 / 財務への就職・転職する上で、求められるスキル・素質を紹介していきます。
几帳面さ
アパレル経理 / 財務の業務は、企業・ブランドの経営に直結します。データ入出力などの細かな業務も多いため、几帳面さが求められます。
再現性の高い事務処理を繰り返し行うため、ルーティンワークが苦ではない人は、アパレル経理 / 財務に適しているでしょう。
コミュニケーション能力
アパレル経理 / 財務は業務の特性上、社内外の人との接点が多いため、コミュニケーション能力が求められます。
そのため、コミュニケーション能力の高い人はアパレル経理 / 財務に向いているでしょう。
経営視点
アパレル経理 / 財務は、経営の如何に関わる職種です。
作成したデータなどは経営層が立てる企業・ブランド戦略や経営方針に影響を与える上、アパレル財務の担当業務の性質であるため、経営層と同様に経営視点を持つことが大切です。
基本的なPCスキル
アパレル経理 / 財務はバックオフィス職にあたるため、PCを操作する場面が多くあります。一般的なWordやExcel、PowerPointなど基本的なPCツールが使えることが望ましいでしょう。
近年では、各種クラウドサービス・ツールが発展しているため、それらサービス・ツールを使いこなせると、アパレル経理 / 財務として活躍できるでしょう。
法知識
アパレル経理 / 財務は決算書などの書類をつくる際、後述の日商簿記検定にも関わりますが、会社法や法人税法などの金銭に関連する法律に触れる機会が多いため、法知識は欠かせません。
アパレル経理 / 財務になるために必要/有利な資格
アパレル経理 / 財務への就職・転職する上で、必要な資格と有利になる資格を紹介していきます。
日商簿記検定
アパレル経理 / 財務の業務において、簿記は不可欠な資格です。アパレル経理 / 財務にとって最も重要である金銭管理の記録方法が簿記であるため、簿記がなくてはアパレル経理 / 財務の仕事はできません。
求人の条件として簿記資格取得者に限定される場合もあるため、アパレル経理 / 財務として働く上では2級以上が必須の資格と言えるでしょう。
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日商簿記検定
MOS
「Microsoft Office」の、Word・Excel・PowerPoint・Access・Outlookに関する技能を照明するための検定です。
基礎的なPCスキルの有無を証明できる検定であり、アパレル経理 / 財務はPC操作業務が多いため有益です。
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日商PC
給与計算実務能力検定
給与計算実務能力検定は、給与計算業務の知識・スキルを証明する検定です。2級と1級があり、アパレル経理 / 財務の最低限の実務レベルを示すには、2級を取得するといいでしょう。
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給与計算実務能力検定
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は、簿記スキルや会計スキルを証明する検定です。会計に関する専門的な知識が身につけられるため、アパレル経理 / 財務の実務レベルを示すためにも取得をおすすめします。
【応募サイト】
ビジネス会計検定
アパレル経理 / 財務になるためのキャリアプラン
ファッション・アパレル業界での他職種の経験はもちろん大切ではありますが、アパレル経理 / 財務になるためには、ファッション・アパレル業界内外の経理 / 財務の実務経験が重要視されるでしょう。
アパレル経理 / 財務の業務内容は、業界や業種、会社規模によって異なりますが、即戦力になりえる技能が求められる場合が多いため、経理 / 財務の実務経験は欠かせません。
アパレル経理 / 財務未経験の場合は、実務経験の代替として各種資格・検定を技能の照明として取得しておくといいでしょう。
アパレル経理 / 財務の求人一覧
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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)