アパレル人事 / 労務の概要から、業務内容、求められるスキルや素質、必要/有利な資格、キャリアプラン、求人情報までを紹介します。
ファッション・アパレル業界の職種を徹底解説する連載シリーズ「アパレル業界職種ガイド」。
ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方は必見です。
<目次>
アパレル人事 / 労務とは?
アパレル人事 / 労務とは、企業・ブランドの採用、育成、労務管理などを行う職種です。新卒・中途採用や、企業・ブランドの店舗や本社で必要な人員の確保、配属先の決定、昇降格の決定、人事計画の立案・実行、社員の人材育成、評価設計などを担い、社内の人員に関連する幅広い業務に携わります。
企業・ブランドの事業の中核はやはり人。アパレル人事 / 労務は、その人に関わり、最大限活躍できる戦略・施策を実行する大切な役割を持っています。そのため、アパレル人事 / 労務は企業・ブランドの人員が働きやすい環境と土台を整え支える重要な存在と言えるでしょう。
採用時においては、企業説明会や面接などで新卒・中途問わず求職者と直接対応するため、企業・ブランドのイメージに大きく関わります。自社のイメージを左右するいわば会社の顔ともいえる職種です。
採用後も入社した社員の管理もあるため、社員と深く接する機会が多くあります。自分が採用・教育に携わった社員と入社後も継続して関わり続けるため、その人が活躍する姿を見られるとやりがいを感じられる仕事かもしれません。
近年では、テレワーク・リモートワークの普及やフレックスタイム制度の導入による働き方の多様化などにより、アパレル人事 / 労務の業務はより複雑になっています。アパレル人事 / 労務の業務を人材サービス企業やコンサルティング企業など社外の専門サービスを展開する企業に外注する場面も少なくありません。
アパレル人事 / 労務の仕事内容
アパレル人事 / 労務の実際の業務内容を紹介します。
企業によって内部構造が異なるので、一般的な業務の一部を挙げていきます。
採用活動
アパレル人事 / 労務の代表的な仕事は、採用活動です。各部署が求める人員の人数などを把握して人員計画を立案。その採用計画に基づき、求人プラットフォームへの求人掲載、会社説明会の実施、書類選考・面接・採用判断・内定通知、その後の内定者のサポートなどを行います。
企業・ブランドの発展のために、事業計画に基づいて採用目標を立て、柔軟に人員計画を立案する必要があります。企業・ブランドの成長に関わる重大な責任を担う仕事と言えるかもしれません。
採用活動は大きく、新卒採用や中途採用、アルバイト採用などに分かれます。新卒採用は、ある程度採用の時期が決まっているため、年間計画を立てて実行します。中途採用やアルバイト採用は、人員不足や事業拡大に伴い随時行います。
中途採用については特に、人員を求める部署が採用活動を主導することもあります。アパレル人事 / 労務は、事務手続きのみを担当したり、非正規雇用の採用に関してのみ担当することもあり、採用活動の進め方は企業・ブランドごとに異なります。
アルバイト採用の場合、アパレル店長やスーパーバイザー(エリアマネージャー)から人員不足の連絡を受けて、アルバイト採用を開始します。アパレル店舗の人員不足は、企業・ブランドの売上に直結しかねない問題です。アルバイト採用の場合は、アパレル店長やスーパーバイザー(エリアマネージャー)と連携しながら求職者の書類選考・面接・採用判断・内定通知を行います。
企業によっては、人事が面接などを含めて全ての採用活動を直接行う場合もあります。
【関連する職種】
労務管理
社員が働きやすい環境を整えるためにも、アパレル人事 / 労務は労務管理を適切に行わなくてはなりません。具体的に、就業規則などの諸規則の整備・運用、勤怠管理、給与管理、各種保険の手続き、福利厚生の運用、有給休暇などの休暇管理、定期健康診断の実施、メンタルヘルス対策、ハラスメント対策などがその仕事に含まれます。
近年では、社員のメンタルヘルスの問題が顕在化しています。社員個人はもちろん、企業・ブランドにとっても大きな影響をもたらすため、アパレル人事 / 労務は定期的に社員のストレスチェック、産業医面談の設定などのメンタルヘルス対策を実施します。
人材育成
人材育成は、新たに入社した社員に企業理念の説明や業務に関連する研修を行います。新卒採用を通して採用した社員については、基本的なマナーやファッション・アパレル業界の基礎知識を解説することもあります。
ほかにも社員のキャリアアップを支援する研修なども行い、定期面談などを通して社員を支えることもアパレル人事 / 労務の大切な仕事です。研修については、外部の人材育成を専門とする企業を活用することも少なくありません。
人事計画、評価制度の整備・運営
ファッション・アパレル業界の企業・ブランドの場合、店舗や部署の配属を帰ることで、事業拡大などを目指します。企業・ブランド全体の組織設計・人員配置に関する計画に深く携わります。
また、社員のモチベーションを維持するためにも、また人員流失を防ぐためにも、適切な人事評価制度や福利厚生制度は欠かせません。アパレル人事 / 労務は、人事評価制度を整備し、それをもとに人事評価や昇降格、報酬などを判断します。
人事評価は各部署のマネージャー・管理職クラス、店舗であればアパレル店長やスーパーバイザー(エリアマネージャー)などが個別に行い、それをもとに評価することが多いでしょう。
【関連する職種】
アパレル店長
スーパーバイザー(エリアマネージャー)
アパレル人事 / 労務になるには? 求められるスキルと素質
アパレル人事 / 労務への就職・転職する上で、求められるスキル・素質を紹介していきます。
人間観察力
人の機微や振る舞いを細やかに察知できる人間観察力があると、アパレル人事 / 労務に向いていると言えるでしょう。アパレル人事 / 労務は採用活動に際しては、新卒・中途問わず、応募者の特徴を短い面接で見抜かなくてはなりません。
そして、人事計画などに際しては、社員の評価にも関わるため、それぞれの社員の能力や性格に適した部署に配属する必要があります。まずその会社に適しているか、その人がどこで最大限活躍できるかを見極めるためにも人間観察力は欠かせません。
コミュニケーション能力
アパレル人事 / 労務は、社内外の人と多く関わる職種です。関係部署や採用活動に際して関わるため、第一印象の良さが求められます。加えて、社員の労務関係の相談やトラブル、人事異動など繊細な話題に接することも少なくありません。そのため、コミュニケーション能力の高い人はアパレル人事 / 労務に向いているでしょう。
口が堅い
アパレル人事 / 労務は社員の給与や評価、異動、昇降格などの機密情報に深く関わります。会話の中で人事評価に関する機密を口外してしまうと、大きな問題も発生しかねません。社内環境に影響が出かねないため、機密保持に関する高い意識が必要でしょう。
冷静な判断能力
時に厳しい判断ができると、アパレル人事 / 労務に向いているでしょう。アパレル人事 / 労務は、会社全体のことを考えて人事計画を実行します。配属先の決定や昇降格の決定、人事評価の確定に際して、社員の解雇や契約社員・派遣社員・アルバイトの契約終了に携わる場面もあるでしょう。そういった場面においても冷静な判断をできることがアパレル人事 / 労務には大切です。
基本的なPCスキル
アパレル人事 / 労務はバックオフィス職にあたるため、一般的なExcelやPowerPointなど基本的なPCツールが使えることが望ましいでしょう。近年では、各種サービス・ツールが発展しているため、それらサービス・ツールを使いこなせると、アパレル人事 / 労務として活躍できるでしょう。
アパレル人事 / 労務になるために必要/有利な資格
アパレル人事 / 労務への就職・転職する上で、必要な資格と有利になる資格を紹介していきます。
社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険関係や労務管理に関する指導を行うことができる国家資格です。従業員の採用や労働保険・社会保険ほか各種保険の手続き、就業規則の作成など、人事の仕事に欠かせない領域にかかわる資格です。社会保険労務士がいると社内外からの信用を高める上、会社からは重宝されます。個人としても転職・独立に役立つでしょう。
【応募サイト】
社会保険労務士
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングに必要な知識や技能、経験が求められる資格です。職業の選択や育成に関する相談を行うアパレル人事 / 労務には有益です。
【応募サイト】
キャリアコンサルタント
衛生管理者
衛生管理者は、常時50人以上の社員が在籍する企業に欠かせない衛生管理者を認定する資格です。労働安全衛生法で規定される労働条件や労働環境の衛生的な改善などを実施し、会社の衛生関連を管理する役割を担います。アパレル人事 / 労務にも有効な資格となります。
【応募サイト】
衛生管理者
メンタルヘルス・マネジメント検定
近年では、職場環境におけるメンタルヘルスに関する問題は無視できません。メンタルヘルス・マネジメント検定は、社員の心的不調の未然防止と働きやすい職場づくりに欠かせないメンタルヘルスケアについての知識や対処方法を学べる検定資格になります。
【応募サイト】
メンタルヘルス・マネジメント検定
人事総務検定
人事総務検定は、アパレル人事 / 労務などの人事系職種の仕事に必要な知識や実務能力をはかる検定です。基礎的な法知識などを正確に認識する上でも効果的な検定です。
【応募サイト】
人事総務検定
アパレル人事 / 労務になるためのキャリアプラン
アパレル人事 / 労務へのキャリアプランとして、アパレル販売として経験を積み、アパレル店長やスーパーバイザー(エリアマネージャー)などを経験して、アパレル人事 / 労務に異動するケースが一般的です。アパレル店長などでアルバイトなどの面接を経験することもあるため、現場経験をいかして活躍できるでしょう。
会社規模などによるかもしれませんが基本的に、就労経験なくアパレル人事 / 労務に採用されるケースはあまり多くはありません。一部、アパレル人事 / 労務アシスタントという職種もあるため、アシスタントなどから知見を深めてからアパレル人事 / 労務に正式に配属されることもキャリアコースとしてはありえます。
アパレル人事 / 労務は企業の管理部門として経営陣が望む通りに、従業員それぞれの適性を見極めそれに応じた配置を考え組織体制を整備・構築する必要性があります。また、会社と所属する人全体に関わるため、社風などへの深い企業理解が求められます。加えて社内全体の部署に関わるため、各マネージャークラスからの評価・信頼が不可欠です。会社全体の様相を把握しつつ、各部署と適切なコミュニケーションをとりながら、アパレル人事 / 労務を目指すのがいいでしょう。
ファッション・アパレル業界外の人事 / 労務はたいへん重宝されます。業界内外問わず通用する職能であるため、他業界での人事 / 労務経験があれば、中途採用でもアパレル人事 / 労務に就職することができるかもしれません。
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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)