2024年3月に日本の公式オンラインストアがオープンし、ますます盛り上がりを見せるブランド、「Madhappy」。スウェットやTシャツなどのカジュアルウェアを中心にミレニアル世代やZ世代を中心に人気を集めています。

2017年に設立されたばかりのブランドですが、具体的にどんなブランドか、ご存知のない方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では「Madhappy」のブランドヒストリーや哲学、最近の動向を詳しくご紹介します。ブランドについて知りたい人や「Madhappy」でのキャリアを考えている方はぜひご覧ください。

Madhappyとは

「Madhappy(マッドハッピー)」はロサンゼルス発のファッション&ライフスタイルブランド。「Local Optimist(ローカルオプティミスト)」をコンセプトに、性別や国籍などの違いによって排除されることのない社会を目指し、アパレル製品の展開や媒体でのポジティブな発信を行っています。

ワンポイントロゴをあしらったシンプルなスウェットや、グラフィックをプリントしたフーディー、Tシャツなどがキーアイテム。英ファッションメディア『The Business of Fashion』の推定によると、2018年の売り上げは約100万ドル(約1億円)と、注目を集めるItブランドです。

SNSでのプロモーションにも長けており、ジジ・ハディッドやケイティ・ペリー、デュア・リパをはじめとするセレブリティたちに着用されたことでも認知が広まりました。

日本では2023年10月にDOVER STREET MARKET GINZAにポップアップストアを出店し、日本初上陸。2024年3月には日本公式オンラインストアをオープンしています。

Madhappyのヒストリー

マッドハッピーの沿革

「Madhappy」の創設者は「Peiman Raf(ペイマン・ラフ)」と「Noah Raf(ノア・ラフ)」の兄弟。イタリア・フィレンツェで生まれた後、ロサンゼルスに移住し、セレブスタイリストのインターンシップなどを経験します。

2017年に「Madhappy」を設立。当時21歳だったノアは兄のペイマンと高校の友人「Mason Spector(メイソン・スペクター)」、大学のルームメイトだった「Joshua Sitt(ジョシュア・シット)」とともにブランドを立ち上げました。

2023年11月には、トレンド発信地として名高いLAのメルローズ・アベニューに初めての路面店をオープン。

また2023年秋冬シーズンより、LA発のアート・クリエイティブ集団によるインディペンデントブランド「Brain Dead(ブレインデッド)」の中心メンバーだった「Ed Davis(エド・デイヴィス)」がアートディレクターとして正式に加入するなど、ローンチから数年で人気ブランドに登りつめました。

ペイマンはCEOとして企業の経営を担当、ノアはプロダクションとクリエイティブの側面を監修しており、メイソンは実店舗のオペレーションとメンタルヘルスに関する媒体「Local Optimist」を手掛け、ペイマンとともにポッドキャストのホストも行うなどメンバーそれぞれがブランドを各方面から支えています。

創設者4人は2020年に経済誌『Forbes』にて「世界を変える30歳未満の30人」に選出されています。

ブランド設立の背景

「Madhappy」設立のきっかけは、共同設立者のメイソンがうつ病と闘っていたこと。メンバーたちにメンタルヘルスの大切さを考える機会を与え、メンタルヘルスに関する話をより気軽にできるコミュニティーを作るために、Tシャツにポジティブなメッセージをプリントして仲間内で楽しもうというラフなプロジェクトとしてスタートしました。

またストリートブランド業界にしばしば見られる、生産数を意図的に少なくして一部の消費者の手にしか渡らないようにし、ブランドの価値を高めるという排他的なカルチャーに対して違和感を感じたことも、設立きっかけになっているそう。

「Madhappy」は楽観的で包括的な姿勢があるため、誰もが楽しめるストリートファッションを世界に伝えています。

また同ブランドの商品を着用することで、同じ価値観を持つ人同士がつながるきっかけにもなっています。

ブランド名の由来

「Madhappy」と耳に残るブランド名が印象的。由来は、メイソンが「Mad」と「happy」という相反する言葉を並べたら面白いのではないか、と提案したことから決まったそう。

メンタルのアップダウンは誰しもが経験したことがあること。楽しい側面とそうでない部分が複雑に絡み合いながらも受け入れていきたいという思いが込められています。

Madhappyのフィロソフィー

ファッションを通してメンタルヘルスの問題にアプローチし、ポジティブな社会を作っていきたいという思いがある同社では、アパレルの展開と同時に、メンタルヘルスに関する社会的な取り組みを行っています。ここからはそれらの取り組みについてご紹介します。

『Local Optimist』の発行

2023年8月にはメンタルヘルスの認識やウェルネス、アートにフォーカスするアートカルチャー誌「Local Optimist(ローカルオプティミスト)」を開始。年に2回出版しており、毎号さまざまなアーティストをフィーチャーし、摂食障害や有害な男性性、うつ病といったこれまで語られてこなかったトピックを取り上げ、メンタルヘルスをめぐる対話を行っています。

またマガジンだけでなく、ポップアップの際にはマガジンに登場したゲストを招いてトークショーを行うなど、パネルディスカッションやワークショップなどのイベントも活動的に行っています。

ポッドキャストでは自殺防止対策ホットラインを曲名に用いたラッパー・Logicがゲストとして登場するなど、その信念をプロダクトに落とし込むだけでなく、形を変えてメンタルヘルスにまつわる問題を軽減する取り組みに注力しています。

主なツールとして洋服を選んだのは彼らがファッションのもつポジティブな力を信じているから。「ファッションの広告やアンバサダーの写真は人が目にしやすいものだから、世の中に届くという利点もある」と設立者のノアは言います(https://ginzamag.com/categories/interview/436698より)

マッドハッピー財団の設立

同ブランドは、メンタルヘルスの向上を目指す活動や団体に資金を提供することを目的に「マッドハッピー財団」という非営利団体を2022年1月に設立し、その運営を行っています。

売り上げの1%をメンタルヘルスの向上を支援する活動にも充てており、ペンシルバニア大学の心理学センターに研究助成金を寄付。抑うつ症状を軽減するための大学生向けオンラインサイトの開発などにも取り組んでいます。

またヴァンダービルト大学医療センターと提携し、精神医学・行動科学科が運営する小児精神科基金を設立しました。

Madhappyの特徴

スウェットやTシャツなどカジュアルウェアがコレクションの中心。リラックスしたフィット感で一年中着用できるように開発されたパーカーの発売など、パフォーマンス性の高いアイテムに独自のデザインを落とし込んだアイテムが人気です。

どのアイテムも年齢や性別、体型を限定しないユニバーサルなデザインなのが特徴。また間色で柔らかい色合いの商品や、「スマイリーフェイス」「オプティミスティック」という言葉がプリントされているなど、メンタルヘルス問題に取り組むブランドならではのアイテムが揃っています。

また、他のストリートウェアブランドと比較して女性の顧客比率が高いのも特徴。安心してメンタルヘルスについての話ができるなど、ブランドコンセプトが性別関係なく受け入れられています。

最近では、全米を代表する、メンタルヘルスや学習障害を抱える子どもたちの生活を変えることを目的とする非営利団体「Child Mind Institute」とのパートナーシップによるウェアを発売するなど、活動の幅を広げています。

Z世代に広く支持されている理由

アメリカでは、若年成人のうつ病の割合は2009年から2017年にかけて63%増加しており、全米精神障害者家族会連合会の報告では、成人の5人に1人がメンタル面でのトラブルを抱えていると言われています。

また米失病対策センターによると、高校生の44%が慢性的な失望感を持っていると報告されているなど、アメリカの若年層におけるメンタルヘルスの問題が深刻化しています。

またZ世代の消費者は社会問題に対する関心が高く、ブランドの哲学や環境問題への取り組みなどにも敏感。10人中9人のZ世代が企業には環境問題や社会問題に取り組む責任があると考えているようです。(参照:https://www.linkedin.com/pulse/madhappy-mindful-hearts-streetwear-sleeves-interview-olbertova

「Madhappy」のターゲットはZ世代。Z世代が悩んでいる問題や理想にマッチするためZ世代に広く支持されています。

最近の動向

LVMHから出資

2019年10月上旬、フランスLVMHグループ(モエ ヘネシー ルイ ヴィトン)から約180万ドルの投資を受けたことでも広く注目を集めました。

正確にはLVMHグループの投資ファンドであるLVMHラグジュアリー・ベンチャーズ(LVMH LUXURY VENTURES)が出資。

過去には「Tommy Hilfieger(トミーフィルガー)」や「Sweetgreen(スイートグリーン)」が出資していますが、その出資額をはるかに超える最大規模だそうです。

LVMHグループが新興ブランドに投資するのは非常に珍しいことのようで、『The Business of Fashion』のレポートによると、LVMHの関係者は「今回の決定には、Madhappyのような急成長を見せる新進ブランドをサポートすることで、我々の投資のポートフォリオを多様化させることを目標としている。Madhappyは、ブランド設立以降、面白いアプローチを見せており、その発展を支援したいと思っている」と今回の出資について表明しています。

LVMHグループをはじめとするラグジュアリーブランドは、今後の消費市場をけん引するZ世代を重視しています。

過去にはLVMHグループがeスポーツの人気競技ゲームを運営するアメリカの「Riot Games(ライアットゲームズ)」とパートナーシップを結び、eスポーツ大会のために「ルイヴィトン」のモノグラム柄を配したトロフィーケースを制作すると発表するなど、Z世代へのアプローチを積極的に行っています。

Y世代・Z世代はラグジュアリー消費者の47%を占めていて、ラグジュアリー購入全体の33%を占めています。

今回の出資も、同ブランドが擁するZ世代のコミュニティにアプローチすることによって今後の潜在顧客を育てることが目的に含まれるのかもしれません。

コラボアイテムの展開も活発

「Madhappy」はこれまで、「UGG(アグ)」や「Salomon(サロモン)」、「Columbia(コロンビア)」 、「Beats by Dr.Dre(ビーツ バイ ドクター・ドレー)」とのコラボを実現しています。

「Columbia」とのコラボでは、若者が大自然の中でアウトドアライフを楽しめるアイテム「Madhappy Outdoors」を制作。メンタルヘルスとアウトドアをテーマに、外で過ごす時間がメンタルヘルスに与えるポジティブな影響の大切さから生まれたラインなどを発表しています。

このように他ブランドのコラボが活発で商品だけでなく、ブランド哲学などを包括したコラボが特徴です。

日本初上陸、日本支社設立

2023年10月にDOVER STREET MARKET GINZAにポップアップストアを出店し、日本初上陸した「Madhappy」ですが、2024年2月には株式会社サザビーリーグと合弁契約を締結。日本展開を手がける新会社「Madhappy Japan」を設立しました。

同年3月には日本公式オンラインストアをオープンし、2024年春夏コレクションの販売をスタートしています。

サザビーリーグは、「RON HERMAN(ロンハーマン)」や「ESTNATION(エストネーション)」、「CANADA GOOSE(カナダグース)」などを手掛けるアパレル企業。

「STARBUCKS(スターバックス)」を日本に上陸させたことでも知られるように、新事業やブランドの次なる芽を見つけるのに長けた目利き企業としてファッション業界で定評のある企業として知られています。

ファッション・アパレルの求人一覧

ファッション・アパレル業界に特化した求人サイトを運営する「READY TO FASHION」では、株式会社Madhappy Japanの求人を掲載しています。

2024年2月に日本会社が設立されたMadhappy Japanでは、2024年10月にオープン予定の店舗があるなどブランド立ち上げのフェーズに携わることができます。

募集ポジションは今後増える可能性もあるので、企業をフォローして最新情報がアップされるまでお待ちください!

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。音楽、ドラマ、食、本などすべてにおいて韓国カルチャーが好き。

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