社販とは

社販とは、自社の従業員に対して取り扱っている商品を販売価格よりも安く販売する制度のことです。社員販売、社内販売のことを略してこのように呼ばれています。

割引率は、各企業・ブランドごとに異なり、正社員とアルバイトなどの雇用区分によっても異なることもあります。

社販の目的

社販は、消費者の購買意欲アップと従業員の福利厚生を目的としています。

実際に販売員が自社で取り扱いのある製品を着用することで、マネキンやトルソーよりも身近なモデルとして消費者に着用感が伝わり、購買意欲アップに繋がります。そのため、社販を利用した自社取り扱い製品の着用を従業員に求めている企業・ブランドが多いです。

また、アパレル業界では従業員の金銭的負荷を軽減するために、企業・ブランドの商品を安価に購入できる社販制度を福利厚生の一環として導入しています。

社販の仕組み

企業・ブランドごと、特に店頭で勤務する販売員に関しては、勤務中の服装規定が設定されていることが一般的です。服装規定には、企業・ブランドが制服を販売員に支給する場合や、販売員の私服着用が一部ないし全面的に許可されている場合、販売員自身が購入したその企業・ブランドの商品を着用する場合など様々。販売員自身が購入する場合に利用されるのが、この社販制度です。

社販の割引率

社販の割引率は、低価格〜中価格帯ブランドでは10%〜40% 、高価格帯ブランドでは50%〜70%の間とされています。高価格帯商品を多く展開するブランドでは、従業員の負担になってしまうため、社販の割引率を高く設定していることがほとんどです。

また、企業・ブランドによって社販の割引率が異なります。その要因は、各企業・ブランドが展開する商品の原価率(販売価格のうち原価が占める割合)にあります。例えば、原価率が高い場合は販売価格と原価が近く、利益が少ないということになります。原価よりも安く販売すると企業負担が大きくなってしまうため、原価率が高いブランドほど社販の割引率を低く設定するという仕組みです。企業・ブランドによって社販の割引率は変動するため、入社するにあたって気になる方は企業・ブランドの担当者に確認してみるといいでしょう。

社販の対象

社販が適応される対象は、企業・ブランドごとに異なります。その例は以下の通りです。

  • 店頭にある商品すべてに適応される場合
  • 倉庫やECにある商品に適応される場合
  • 適応対象を特に制限していない
  • 新作など一部商品のみを対象とする

基本的に、セール商品などすでに割引販売されている商品は社販の対象外になることが一般的です。一部の企業・ブランドでは、在庫が少ない商品や人気のカラー・サイズなどを社販の対象外に設定することも少なくありません。

なお、社販の対象だけでなく、購入方法も企業・ブランドによって異なります。現金・クレジットによって購入する場合や、購入代金を給与から天引きする場合、固定の社販代を支給し超過分を後に請求する場合などが挙げられます。

社販した物を転売してもOK?

フリマアプリの台頭による二次流通の隆盛を極める現在、高額転売などの問題が発生しています。それに伴い、転売に関する規定を設ける企業・ブランドが増加しています

  • 社販で購入した商品の転売を全面的に禁止
  • 購入から1年以内など期間を設定して禁止
  • 社販価格よりも高額での転売を禁止

規定は企業・ブランドによって様々です。転売に関する規定を構築していない企業・ブランドも少なくないため、法的な問題を避けるために転売に関する規定を確認するといいでしょう。

社販の月間平均購入金額

社販の月間購入金額は1人当たり、価格〜中価格ブランドでは2万円〜5万円低ほど、高価格ブランドでは3万円〜6万円ほどとされています。もちろん、シーズンによって変動することも、そのブランドの商品が好きな従業員であれば人よりも多くの商品を購入することもあるため、平均購入金額は人によって異なります。

各企業・ブランドごとの勤務中の服装規定によって、新作商品の着用を推奨する場合や店頭で売り切れた商品の着用を禁止している場合があります。ほぼ毎日店頭に立つ販売員の場合は、着回しなどを考慮して、ある程度の商品を購入する必要があると考えるべきでしょう。

社販と職域販売の違い

最後に、社販の類似制度として職域販売があります。

社販が自社の従業員への福利厚生の一環として行っているのに対し、職域販売は取引先の他社従業員などに対して行う割引制度です。

これは、ブランド価値を下げず売れ残り在庫を売上に変えていくことを目的としています。一般市場で売れ残った在庫商品を安く販売してしまうと、新商品などが購入されづらくなるためこのような取り組みがされています。


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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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