CRAFSTO

ヘリテッジ株式会社が展開するレザークラフトブランド「CRAFSTO(クラフスト)」。

モダンなライフスタイルに寄り添ったプロダクトづくり。自社生産を軸とした生産体制。ヴィーガンレザーや再生繊維生地を積極的に取り入れるサスティナビリティに配慮した素材・仕入先選定。

トレーサビリティを実現するため、顧客情報から製作者情報まで一気通貫で管理する独自のデータベース。多様なバックグラウンドを持つメンバーが織りなすチーム構成…。

「CRAFSTO」とは一体どのようなブランドなのか?

今回は、株式会社ヘリテッジ代表取締役の久保順也氏に、創業の経緯から伝統的なものづくりの強み、「CRAFSTO」のつくり方・売り方の特徴、顧客満足度を高めるための施策、今後のブランドの展望、そして求める人物像まで、細かく伺った。

株式会社ヘリテッジ

Timeless、Traditional × Modern、Gender neutrality

CRAFSTO

──まずは、「CRAFSTO」のブランド概要を教えてください。

久保:「CRAFSTO」は時代を超え、愛され続けることを意味する「Timeless」、伝統的な技法を継承しながら常に時代に合わせた革新的なデザインや機能をプロダクトとする「Traditional × Modern」、手に取る人の性別を問わない「Gender neutrality」の3つをコンセプトに掲げるD2Cレザーブランドです。

この3つのキーワードを踏まえた上で、人という軸を大切にボーダレスな世界観を構築していくこと、未来を見据えた持続可能な循環を意識したコレクションを展開していくことを目指しています。

ブランドの主軸商品である財布やバッグは、機能性とデザイン性のバランスを大切に企画を進めており、私たちの未来にポジティブな影響を生み出す商品づくりを常に意識しています。

──「CRAFSTO」設立に至るまでの経緯についてお聞かせください。なぜこの業界で事業をスタートしたのでしょうか?また、なぜレザー小物分野を選んだのでしょうか?

久保:もともと私はグローバルビジネスに挑戦するスタートアップを支援したいと思いから、VC(ベンチャーキャピタル)にてキャリアをスタートしています。その後、ご縁があって国内で製造・販売を行う老舗レザー製品ブランドで役員を務めるようになったのが、この業界・分野に触れたきっかけです。

そこでは卸事業のEC事業への転換などに携わっていたのですが、一緒に仕事を進めるうち、伝統的に培われた技術を用いてものをつくり続ける職人の姿に尊敬の念を覚えるようになりました。それと同時に、業界的にその技術を活かしきれていない、発信の方法や売り出し方にまだまだ課題があると感じるようになったんです。その”課題解決”を1つの目的に、日本の製造に関わる人たちの緻密さと技術を活かしてグローバルに発信していける魅力的なブランドをつくりたいと思うようになり独立しました。

人の生活に寄り添ったブランドへ

CRAFSTO
(画像)サボテンレザートートバッグ(4万3000円 + 税)

──ものづくり領域とは異なる背景から見た上で、この分野の面白みに気づいたと言うことですね。では、このレザー小物分野のものづくりの強みや歴史的な強みとはどのような点にあるのでしょうか?

久保:まず取り挙げるべきは、細やかで洗練された縫製技術や天然素材を均一に加工する精度の高い加工技術です。レザー小物分野に関してはバッグや小物などそれぞれに特化した職人が製造技術を磨き続けており、製品の加工・製造以外にも、革の加工機など用いる道具のメンテナンスを主とする職人も存在します。その技術者が連携してチームとしてものづくりをしている伝統には価値があると思います。

ただし、職人個人に依存してしまっているため後継が続かないで技術が途絶えてしまうことはおうおうにしてあり、技術の承継について課題感を覚えています。それがこの分野に関する国内市場の縮小にも繋がっているかと思うので、若い世代の職人と経営者が入り込んで新しい市場をつくっていく必要はあるはずです。そういった意識のもと、我々は長い歴史の中で磨かれてきた日本のクラフトマンスピリッツを継承して世界に発信していくべく、この事業に取り組んでいます。

──市場をつくるという話がありましたが、「CRAFSTO」の市場における新規性とはどのような点にあるのでしょうか?

久保:これまでの市場は中間流通が複雑だったため、お客様との距離感の遠さがあったかと思います。「CRAFSTO」はつくる人とつかう人の距離感が身近に感じられるブランドでありたいと考えています。

お客様とのコミュニケーションを大切にしたいと考えているため、商品づくりに携わる職人とも直接交流できる工房型の店舗を構えています。店舗にお越し頂いた際には気軽にコミュニケーションを取っていただけたら私たちも嬉しく思いますね。

また、これまではリアルな現場でしか体感できなかった人との繋がり、楽しみや喜びをオンライン上でも展開していけるよう心がけています。オンラインでは商品をお客様のご自宅にお送りしてお貸し出しすることで、商品購入前にお試し使用を行えるサービスなどに力を入れていく予定です。オンライン・オフライン問わず満足していただける顧客体験をつくっていきたいですね。

細かなニーズに対応しうる「CRAFSTO」のものづくり

CRAFSTO
(画像)サボテンレザーボディバッグ(3万4400円 + 税)

──「CRAFSTO」のものづくりの特徴についてお聞かせください。

久保:​​プロダクトを作る際には、“こうあるべき”という固定概念に囚われず、良い意味でチャレンジしていく姿勢を大切にしています。ブランドのキーワードの1つでもある“伝統と革新”=相反する要素のバランスを上手く取っていくデザイン、素材、そして時代を越えて良いと思えるものでありたいというフィロソフィーをもって企画に取り組んでいます。

「CRAFSTO」は、必要に応じてお客様からご要望にお応えするために、自社生産体制を持ちつつ、大量生産にも対応可能な工場や小ロットでの生産に適した工場など、各分野に精通した職人と幅広く提携しております。無駄のない生産体制から、量産体制だけでは拾いきれなかった細かいニーズに応えていくことを目指しております。

──では、無駄のない生産体制を実現するためにどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

久保:自社生産の強みを生かしたSKU単位での受注生産を実現するシステムを開発・導入しています。大量のロットを積んで在庫を持つというビジネスではなく、適切な量を無駄なく生産してお客様に満足していただけるよう届ける体制を取っています。

──ユーザーからの需要に応えうる体制を設けていると。

久保:​​お客様からの要望にカスタムオーダーで対応可能な点も「CRAFSTO」の強みの1つです。ギフトの際にも好評いただいていますね。例えば財布のカード欄を増やして欲しいという個別の要望などに応えて提案できれば、お客様との関係もより良いものになるはずです。

接客対応に優れたメンバーやWeb領域に強いメンバーなどが在籍しており、社内の職人との情報共有などの連携も取れているため、タイムラグなしにオンライン・オフラインを問わない幅広い提案を実現できるかなと。

これからの環境に配慮した取り組み

CRAFSTO
(画像)巾着型パッケージとトート型パッケージ、バガス紙を使用した紙袋

──では、商品づくりの強みや特徴を教えてください。

久保:製造の途中で出てしまう廃材を再利用して新たなアイデアで生まれ変わらせる商品開発や、持続可能な素材を使った商品づくりなども積極的に行っています。

例えば、レザー小物分野では皮革素材の表面のみを利用することが多く、その裏面である床面(とこめん)と呼ばれる部分は廃棄されてしまうことが少なくありません。「CRAFSTO」では、デザイン性と機能性を両立した質の高いプロダクトをつくり出すことは当然として、床面などの素材にもフォーカスした商品の企画・開発にも力を入れていきます。

──SDGs的な観点を意識した商品づくりも「CRAFSTO」で力を入れている要素かと思いますが、具体的に取り組んでいる施策についてお聞かせください。

久保:近年であればサボテンやりんごを原材料としたヴィーガンレザーや廃棄予定のペットボトルを再利用した再生ポリエステル繊維生地など、環境に優しい新しい素材が国内外のスタートアップから次々に発表されています。それらの環境配慮型素材に関する情報を素早くキャッチアップして積極的に取り入れた上で、「CRAFSTO」のブランドコンセプトに適した商品企画・開発に取り組んでおります。

商品以外の面でも配慮しており、店舗で使用する紙袋にはサトウキビの搾汁後に残る絞りカスから生成するバガス紙を使用しています。また、購入後にお届けするパッケージも繰り返し活用できるエコバッグとしても使えるトート型パッケージ、小物入れとして使える巾着型パッケージに一新しています。

また、生産・加工工程が不明瞭の素材は仕入れていません。素材については​食肉用の動物から生まれた副産物のみを使用しており、​特に仕入れる素材のなめし加工法に関しては注意を払っています。代表的な加工法としてクロムなめし加工と植物タンニンなめし加工の2種類がありますが、「CRAFSTO」では生分解性があり、より環境に良いとされている植物タンニンなめし加工を採用した皮革素材を使用するよう心がけております。

データ管理が支える丁寧なアフターフォロー

CRAFSTO
(画像)ブライレザー三つ折り財布(3万5273円 + 税)

──ここからは、商品の届け方についてお伺いできればと思います。あらためて「CRAFSTO」の実店舗の役割はどのようなものなのでしょうか?また、ECとの連携についてどのようにお考えなのでしょうか?

久保:財布やバッグは長く使うものなので、実物を見て検討したいという要望を多くいただくため、実店舗の存在は不可欠です。実物を見れたり、専門の販売員から説明を受けれたり、商品特性について直接相談できたりする生の購買体験をご提供するためにも、適切に店舗を出店することはECとの両立になると考えております。

──では、ECと実店舗の連携を高めるため、具体的にどのような施策に取り組まれているのでしょうか?

久保:我々はECカートシステム「Shopify(ショッピファイ)」を導入しており、お客様の情報を実店舗・EC問わず一元で管理しています。店舗についても現在、感染症対策の一環として完全Web予約制でご来店いただいているため、その際にお客様の情報をご登録いただいております。

「CRAFSTO」では商品をご購入いただいたあともお客様のご要望にできるだけ早く丁寧にお応えするために、ご購入いただいたお客様の購買情報を全て確認できる体制をとっています。。パーツ交換を伴わないメンテナンスであれば基本的に永年無料で修理対応させていただくため、いつどこで購入されたのかなどの情報は常におさえておく必要があります。どちらのチャネルからご購入いただいていてもお客様の購買状況を確認できるため、商品のメンテナンスやお持ち込みには即座に対応できる点も「CRAFSTO」の強みであると自負しております。

トレーサビリティを実現する仕組み

CRAFSTO
(画像)ブライドルレザーネックウォレット(3万6091円 + 税)

久保:どの職人がどの商品製作したものかも裏側ではわかるような仕組みとなっています。我々の商品は手づくりで対応する部分があるため、当然つくり方に個別の特徴が出てしまいます。修繕対応時にはそれが重要な情報になるため、お客様の購買情報とあわせて製作者の情報は管理しています。

──購買情報に生産背景の情報も紐づけて管理されているのですね。

久保:商品がどこでつくられ誰の手に渡ったのか、それらのデータベース作成は創業以来継続している取り組みです。創業当初から今後のこの業界が取り組むべきトレーサビリティの課題に向き合いつつ、それらを想定した上でビジネスの基盤づくりを心がけています。また、顧客情報管理サービスのほかリアルタイム生産管理システムなど、事業をやる上でのインフラ構築に関しては我々としても力を入れています。

──生産管理についてのデータベース作成・管理に関する施策をお聞かせください。

久保:弊社ではクラウドデータベースサービス「Airtable(エアテーブル)」を導入して、「Shopify」と連携させたデータベースを作成・管理しています。そのデータベースに職人自身で製作した商品を入力してもらているため、リアルタイムでの生産状況を確認できる仕組みになっています。

弊社に在籍している職人の大半は若年層になるため、日常的にLINEなどのWebサービスを利用しているはずです。ある程度使い方を共有すればそれらのツールもスムーズに導入できるはずなので、ちゃんとワークさせられる体制を構築することが重要なのだと思います。

並行して、社外とのデータ作成・管理体制づくりにも連携して取り組んでいます。取引先がローカルで持つ共有仕入先や素材、在庫量に関する情報まで網羅できれば、より正確なデータベースを作成できるため、今後はより注力していく予定です。

多様なバックグラウンドを持つメンバーと挑む

CRAFSTO

──「CRAFSTO」はサスティナビリティやトレーサビリティに関する課題にまで、細やかな意識が向けられているように感じました。

久保:「CRAFSTO」には、多様なバックグラウンドを持つメンバーが在籍しています。それらのメンバーが各々の専門的な知見を発揮しているからこそ、1つ1つの課題に丁寧に向き合えているのかもしれません。

まず、ブランドのクリエイティブディレクターには、イタリア・ミラノのマランゴーニ学院、イギリス・ロンドンのセント・マーチン美術大学にてファッション領域のデザインを修了したのち、イタリアのコレクションブランドなどでファッションデザインを経験してきた人物が就任しております。帰国後は大手セレクトショップのデザイナー、フリーのクリエイティブディレクターを経て弊社にジョインしているのですが、そのクリエイティブディレクターの豊富な経験とグローバルな市場感覚が「CRAFSTO」のクリエイティブを支えています。

ものづくりチームに関しては、有名ハイブランドの修理を担当していた職人や、国内大手ブランドのサンプルづくりを担当していた職人たちが所属しております。経営レイヤーには私同様VC出身の者やコンサルティング会社出身者、広告代理店やスタートアップを経験したメンバーがおり、ほかにもWebマーケティングを専門とするマーケター、Web開発チームのWebデザイナーやWebエンジニアなど、幅広い専門を持つ人たちが在籍しています。

多様なバックグラウンドを持つメンバーが入り混じった環境で仕事できる点も、「CRAFSTO」の特徴かもしれません。

──「CRAFSTO」の今後の展望とあわせてお聞かせください。

久保:長い歴史の中で磨かれてきた日本のクラフトマンスピリッツを継承しつつ、柔軟でポジティブな思考を持って今の時代に合わせながら、未来に向かっていくブランドにしていきたいと思います。

そして、創造性をもって商品開発を行うことで「MADE IN TOKYO」という1つの新しいカルチャーを確立して、それを世界に向けて発信・展開していけたらと考えています。

レザーは一つの素材としてとても魅力的ですが、革だけにこだわっているわけではありません。一度手にしていただいた商品を、お客様の生活の中で、長く愛着を持って大切にして欲しい。そんな目線で今後も素材を厳選していきたいですね。

ものを届けた先に人の生活があること。そして現代を生きる人のライフスタイルの価値観に寄り添えるブランドであること。お客様が自分でお気に入りの商品を見つけて、生活の一部として取り入れていただくこと。そうすることではじめて完成されるようなプロダクトを届けたいと考えています。ものを所有する価値観が変わりつつある今だからこそ、ブランド側が押し付けるようにものを提供するのではなく、コミュニケーションの中で完結していく余韻のようなものを楽しんでいただけたらと思っています。

「CRAFSTO」が求める人物像とは

CRAFSTO

──最後に、今後の採用方針についてお聞かせください。

久保:職人やものづくり領域の職種に関しては新卒採用を開始しており、それ以外のマーケターなどのポジションについては中途採用が中心になるかと思います。

──今後「CRAFSTO」の成長のために求める人物像についてお聞かせください。

久保:“人の生活に寄り添えるブランドであること”という、「CRAFSTO」が大切にしているこの考え方に共感し、より良い未来のためにポジティブなアイディアを出して積極的に行動できる人を求めています。

そして、ブランドコンセプトに共感していただける方という前提のもと、ファッションビジネスに対する強い好奇心と実践的なスキルセットを持っている方が必要になってくるかと思います。具体的に言えば、ファッションEC領域に精通したWebディレクターであったり、ファッションビジネスを深く理解した販売戦略を立てられる方などは積極的に採用していきたいですね。

「CRAFSTO」で働くには

「CRAFSTO」を運営するヘリテッジ株式会社では、さまざまな職種で求人を公開しております。求人への応募はもちろん、会社をフォローしておくことで新規求人やイベント情報、ストーリーなどの最新情報をゲットできます。お見逃しのないよう、ぜひご覧ください。

「CRAFSTO」の求人こちら

秋吉成紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

ライター・編集者。1994年東京都出身。2018年1月から2020年5月までファッション業界紙にて、研究者インタビューやファッション関連書籍紹介記事などを執筆。2020年5月から2023年6月まで、ファッション・アパレル業界特化型求人プラットフォーム「READY TO FASHION」のオウンドメディア「READY TO FASHION MAG」「READY TO FASHION FOR JINJI」の編集チームに参加。傍ら、様々なファッション・アパレル関連メディアを中心にフリーランスライターとして活動中。

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