※8月16日繊研新聞掲載 人が育つ企業特集より

目を引くビジュアルでファン増やす 販売員から異動、キャリア生かす

販売から店長、エリアチーフを経て、昨年から「イルビゾンテ」のプレス職を1人で担う廣恒小枝さん(ルック事業本部D.C事業部イルビゾンテ企画課)。一対一の接客から一対多数の発信に変わり、「世界が広がった」と目を輝かせる。現場一筋で約10年歩んできたが、店に足を運んでもらうきっかけを作るプレス職に新たなやりがいを感じている。

チャンスをものに

13年、嘱託の販売職として中途採用で入社。総合職の試験を受け、正社員に登用されたのはつい先月のことだ。入社から約4年で店長になり、都内の大規模店を歴任した。その後、20年にエリアチーフに昇格。北海道から関西まで、都内近郊の店舗と直営店を中心に担当していたところ、プレスとして本社への異動の声が掛かった。

当初、プレスは「どちらかというとすごく遠い存在。自分が当事者になる想定を全くしていなかった」と廣恒さん。憧れはありつつも、プレスやメディアが訴求する情報をキャッチして来店する客を迎える側の立場だったからだ。だが、「声を掛けられるのは、それなりに期待してもらえている」証拠と、チャレンジすることを決意。初歩的なパソコンのスキルからプレスのノウハウまで、アシスタント経験なしで実践で習得した。

異なるイメージ訴求

主な仕事は、シーズンごとのイメージビジュアルやカタログの制作、媒体やスタイリストへのリース業務、タイアップの企画進行など。公式サイトやSNSも運用する。店舗のフェアに向けて、ノベルティーの企画立案も行う。

特に、力を入れているのがビジュアルの制作。毎シーズン、MDから説明される商品のラインナップや狙いに沿って、表現方法を模索する。制作するのは大きく分けて二つ。シーズンごとのイメージビジュアルと、日常的に配信するSNSのビジュアルだ。

イメージビジュアルは、ブランドらしさを保ちつつ、アートを思わせるようなイメージを意識。情報過多な現代において、客の目を引くキャッチーなビジュアルを目指している。

一方でSNSのビジュアルは、日常に親しみやすく、使用シーンが想像できるようなイメージだ。とはいえ、なるべく年齢や性別を特定しないような世界にするのがブランドのこだわり。誰が見ても「自分に合うな」「これだったら取り入れやすそうだな」と思ってもらえるような見せ方を基本とする。

イメージビジュアルは本国が主導で、日本では制作できないケースも多い。しかし、イルビゾンテは日本限定商材など本国とラインナップが異なる点もあり、基本的に日本国内で訴求するものに関しては日本で制作することを許可されている。「本国があるブランドにしては柔軟に、自由にさせてもらえている」ことが良さの一つだ。

店頭の情報を反映

店舗での勤務経験が長かったため、客の動向や需要があらかじめインプットされているのが、廣恒さんの強み。店舗を離れた今も、店舗スタッフから直近で反応が良いものや売り上げが伸びている色などの情報を聞き、ビジュアルに反映する。「どのようなものがお客様にとって有益になるか、楽しんでいただけるかが第一」という。

プレスの魅力は「制作したビジュアルがたくさんの人の目に触れて、それをきっかけに店舗へ足を運び、購入してもらえること」。その商品が購入した人の日常に入っていくと考えたとき、「販売員のときとは違った感動や喜びを感じる」と笑顔を見せる。

今後は、入社の動機になったイルビゾンテや現在のプレス職にとどまらず、「会社の中でいろいろな職務に携わってみたい。そのほうが多角的な視点で物事を見たり、業務に取り組むことができ、より会社に貢献できるのでは」と考える。プレスになる前は「元々ミーハーじゃなかった」ため、初めは情報収集なども苦労したという。とにかく「やってみる」前向きな人に、チャンスは巡って来る。

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