インフルエンサービジネスや「今日何着てますか?」のスナップ動画の火付け役として、いま注目を集めているピックユー。インスタグラムでは、開始から1年未満で14万人以上のフォロワーを獲得。今年4月には1.4億円の資金調達を実施しました。が、いまだビジネス面など裏側は謎のベールに包まれたまま。

今回はそんなピックユーの裏側の解像度を高めるべく、代表の冨田さんを溝の口の居酒屋に呼び、設立からこれまでの裏話や社長としての思いなどをあれこれ聞いてみました。普段は意識的にメディアに出ることがないと話す冨田さんですが、どんな話を聞けるのでしょうか。

冨田理央(とみた・りお)1998年生まれ。神奈川県出身。株式会社ピックユー代表取締役社長。共同創業者の河合航大とともに22年2月に株式会社ピックユーを設立。(URL: https://pickyou.co.jp/

サービス着想の原体験

一杯目はビールで乾杯

この日はインタビューの機会を設けてくれた高校時代の後輩・Kも同席。

READY TO FASHION 編集部(以下、RTF):お酒はよく飲まれますか?

冨田:頻繁には飲みませんが、友達と飲んだりするのは好きです。

RTF:ちなみに冨田さん、今日は何着てますか?

冨田:今日はほとんどのアイテムが古着です。

RTF:最近ゲットしたもので一番のお気に入りアイテムは?

冨田:インフルエンサーがセレクトしたアイテムを販売するnugu代表のハミンさんから譲り受けたマルジェラのカーディガンがお気に入りです。

ハミンさんはアドバイスをくれたりとずっとかわいがってくれています。

後輩K:プライベートの一面だと社長っていう感じを出さないよね(笑)。

冨田:この間スナップ動画の撮影に同行したのですが、出演者の方に「荷物持ちます」って言ったら「ありがとうございます!インターンの方ですか?」って言われたりもしました(笑)。その日はそのままインターン生として撮影に臨みました。

RTF:実際に撮影を見てどうでしたか?

冨田:やっぱりすごかったです。原宿のキャットストリートで撮っていたのですが、「ピックユーだ」っていう声があちこちで聞こえてきたり。一つのカルチャーを築けていると思いましたね。

RTF:ピックユー立ち上げの原体験として、憧れの人から服をもらうのが好きだとおっしゃっていましたよね。

冨田:学生時代にアルバイト代を全部充てるほど洋服を購入していて。でも、結局残った洋服って自分の好きな人からもらったお下がりとか、航大(共同創業者:河合航大)が作ったアイテムがほとんどだと気づいたんです。

憧れている人から譲り受けることでお墨付きになるし、何よりパワーをもらえるじゃないですか。そういうところがすごく刺さりました。今でもよく航大からお下がりをもらっています(笑)。

RTF:起業はずっと考えていましたか?

冨田:全く想像していませんでした。

RTF:起業するに至った経緯はなんだったんでしょうか。

冨田:大学時代にアルバイトをしていたハンバーガー屋さんで、飲食店を経営している方や空間デザイナーなど、たくさんの社長と出会う機会があったのですが、そこで起業って面白そうだな、自分で何かやっているのって楽しそうだなと思ったのがきっかけです。

RTF:ピックユーは実験的なサービスから開始していますよね。

冨田:そうです。高校時代の先輩にインフルエンサーの方が多くいらっしゃったので、この人たちとフリマをやったらニーズがありそうだと思ったのが初期の実験フェーズ。僕がフォロワー目線でほしかったサービスを小規模で展開しました。その結果、想定より反応がよかったので、より多くの方にサービスを提供することを決めました。

RTF:そこから河合さんがジョインされたんですね。

冨田:ニーズは間違いなくあるけど、ユーザーからサービス自体おしゃれだと思われないと生き残れないなと思ったときに、航大に助けを求めたら、自信あると言ってくれて。気づいたら一緒に始めて3年経っていました。

ブランディングは航大にお任せ

RTF:普段、他のフリマサービスを使うことはあるんですか?

冨田:実は、これまで他社のフリマサービスを使う機会も多くありました。ただ、好きな商品や買い逃してしまった商品をピンポイントで見つけられると思うのですが、サービスの設計上、新しいアイテムやブランドを偶然発見する楽しさが少ないと感じていたんです。

RTF:その点、ピックユーだとインフルエンサー軸やブランド軸で商品を探すことができるので、購入体験の質の向上につながりそうですね。

冨田:そうですね。自分が知らなかったインフルエンサーやアイテムを発見する楽しさを提供するために今のサービスを設計しています。

RTF:サービスを本格的に開始して1年半経ちました。インスタでも一躍有名になりましたが、スピード感は想像通りでしたか?

冨田:「今日何着てますか?」のコンテンツが流行ったり、キーホルダーをつけていると「ピックユーじゃん」となるような勢いを築けているのは想定以上です。

RTF:ミームになっているスナップ動画「今日何着てますか?」といえばピックユーですもんね。

冨田:SNSに関して僕は介入しておらず、みなさんと同じくユーザーとして楽しんでいます。

後輩K:スナップ動画、知らない人いないもんね。

冨田:ピックユーのことは知らないけど、このコンテンツは見たことがある人は多いよね。

冨田:僕の日々の業務は、どうしたら使いやすいサービスをユーザーのみなさんに提供できるかを考え続けること。ただ、ブランディングは言語化できないものから生まれると思うんです。なので、ブランドの感性の部分は航大に託しています。

RTF:ここまでこれた理由はなんだと思いますか?

冨田:まだまだ小さな存在にすぎませんが、ピックユーが皆さんに使ってもらえている理由は誰にも真似できない「何か」があるからなんです。仮に大きな企業が盛り上がっているこの市場に参入しようと思っても、僕たちが作ってきたカルチャーや勢いは作れないと思っています。

この勢いが作れているのは間違いなく航大の才能。僕自身の最大の仕事は航大と始めたことだと思っています。

ピックユーがあることで服を購入するハードルを下げたい

RTF:起業してからしんどかった時期はないんですか?

冨田:ほとんどないかもしれません。起業するからにはうまくいかないといけないと意気込んでしまうと思うのですが、うまくいかないのって大体普通だと思っていて。サービスがうまくいってないのは、どこかいけてないところがあるから。それを少しずつ変えていくことの繰り返しだと思うんです。

頭がいい人だったら、問題に対してすぐ正解に辿り着けると思うのですが、僕は10個くらいアイデアを出してやっと施策がうまくいく感じなんです。いつもバットを振って、空振りしています(笑)。

RTF:現状抱いてる課題は?

冨田:出品者と購入者が満足する機能の提供に注力したいです。Z世代のユーザーにとって使いやすいサポート体制を整えることが今後の成長に不可欠なので、より簡単に出品できるような機能の追加や改善、物流体制の強化など、ユーザーの方に満足していただけるように引き続き頑張っていきたいですね。

RTF:今後、ピックユーをどういう場所にしていきたいですか?

冨田:ファッションって最高だと思ってもらえる場を作りたいです。スナップ動画やピックユーをきっかけに服買おうかなとか、原宿に行ったらピックユーに撮影してもらえるんじゃない?といったようにファッションに興味を持ってもらえる人が増えたらうれしいです。

RTF:それは二次流通に関わらず?

冨田:そうですね。一次流通も含めてファッションをポジティブに捉えていくのって大切だと思うんです。

ほしいアイテムを買うためにはピックユーで10点出品すればいいと考える出品者さんも多いので、ピックユーを起点にファッション業界が盛り上がるような構図が作れるといいなと思います。

撮影協力:ぶっち屋 高津本店

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。