店頭情報を次の企画に生かす
「服が好きで、自分が好きなことを仕事にしたかった」とは、三陽商会の「エポカ」MDの伊藤陽香さん(事業本部エポカ・キャストビジネス部婦人服企画課)。客が手に取って購買したくなる魅力的な商品作りに、店舗スタッフの声や情報を反映しながら、一緒に作り上げている。完成し商品への達成感ややりがいを感じて奮闘している。
作る過程を楽しむ
16年新卒で総合職入社。大学の専攻とは畑が違うが、「店で服を選び、購買するのが楽しかった」と、アパレルに飛び込んだ伊藤さん。入社後の1年間は販売職を経験(現在の制度は違う)し、店作りへの興味から希望だった店舗に近い営業職に配属。しかし、販売する環境なども大事だが、「商品が魅力的でなければ、お客様に買ってもらえない」と、企画をやりたいと思うようなった。
公式な異動希望は出さなかったが、毎年行われるキャリアなどの思いや考えを記す「自己申告シート」や面接を通して上司が把握。「柔軟で若手にチャンスがある環境」と、3年目からはMD職に異動した。営業からMDに配属された時は難しさも感じた。「初めは用語が全く分からなかった」という。システムも違い、「〝量産〟って何」から始まり、一から勉強した。初めは先輩の下でアシスタント的な役割を担い、仕事を覚えていった。
MDは基本、「商品にかかわることをする、何でも屋的な面がある」と、月ごとのアイテム型数の枠組みを作り、デザイナーに伝えて一緒に作り上げていく。生地の選定と発注、原価管理、数量設定、小売価格の設定も。サンプルがあがると、店舗スタッフを集めて商品説明会と検討会を開き発注していく。仕事内容は多岐にわたり大変なこともあるが、「商品を作り上げていく過程が楽しい。ものすごくやりがいがある」という。
「これだったらいける」と思える段階まで、周りの意見も聞きながら企画に反映させる。時には企画の全変更もあるが、乗り越えて自信を持って企画チームで完成させた時の達成感は大きい。数字として結果が現れた時は「よし!」とさらに達成感がわく。想定と違うこともあるが、「まだまだお客様のことが分かってない」と反省しつつ、仕事の奥深さを感じている。
エポカはスカート構成比が高く、パンツが少ないブランド。だが、パンツを履きたい顧客もいて、店頭からもパンツがもう少し欲しいなどの要望があった。「パンツが生きる打ち出しがしたいね」と、チームで考えたのが最近のヒットなったセットアップ企画。6月店頭の盛夏物の涼しいイージーワイドパンツとギャザーブラウスで、これまであまりなかったもの。バックサテンジョーゼット使いで、パンツはウエストのテープ使いなどディテールにこだわり、接触冷感機能もある。ブラウスは3万6000円(税抜き)、パンツ4万3000円で、素材や価格も支持された。
エポカの顔を作りたい
一方で、エポカの中心顧客対象とは異なる伊藤さんは難しさも感じる。「主観だけでは成り立たない」と、自身で想像しながらも、商品検討会での「もっとこうして欲しい」などの意見や店頭で話を聞き、MDを組み立てている。週報で上がってくる「こんな仕様の商品が売れました」などの店頭情報をメモし、次の企画に生かしている。
MDとしては初めの「エヴェックスバイクリツィア」からエポカに異動し、1年が経過。テイストや商品構成、価格帯など全く違うブランドだが、「新鮮な気持ち」で向き合っている。今後はエポカとして、顔になる商品を作りたいという。
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