ファッション リユース

2001年静岡県浜松市創業、リユース事業「エコスタイル」を展開する株式会社スタンディングポイント。

エコスタイルでは、セレクトショップのオリジナルブランドからヴィンテージまで幅広いアイテムを店頭・オンラインで買取。創業地浜松市に構える約260坪の店舗とオンラインで販売を行なっており、海外20カ国を含む国内外から利用者を集めている。

今回は、若森寛・代表取締役に、SDGSに対する考え、働きやすい環境づくり、今後の展望と求める人物像まで細かく伺った。

株式会社スタンディングポイント

地方から社会的な価値観を変える

ファッション リユース

──エコスタイルの事業は、現在この業界内で重要視されるSDGsやサスティナブルの文脈に深くリンクする部分があると感じています。エコスタイルの事業において、SDGsをどのように意識しているのかについてお聞かせください。

若森:この業界に身を置いている人間であれば、2013年のラナ・プラザの悲劇()をご存じだと思います。当時この事件が起きるまで、正直ファッション・アパレル業界のビジネス構造にネガティブな印象を持っていませんでしたが、この一件を通して、豊かに暮らそうとする僕らの裏に悪しき労働環境を抱えているという、激しいギャップがある業界なのだと直視させられました。それ以後、過剰生産・大量廃棄に歯止めをかけるためにも、リユース事業をファッション・アパレル業界の中の1つの軸として認めてもらいたいという意識が芽生えましたね。

弊社は地方から始まった会社です。影響力でいうとまだまだ小さいものではあるのですが、大企業でないと社会的な価値観を変えられないかというと、必ずしもそうではないと思っています。もちろん規模はある程度必要ですが、そういうマインドを社内から浸透させつつ、会社全体としてSDGsの目標に向かってチャレンジしていきたいと考えています。

※・・・2013年4月24日、バングラデシュ共和国・シャバールにて商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事件。死者約1100人超、負傷者2500人超。ファッション・アパレル業界の大量生産・大量消費の負の側面を象徴する事件として知られる。当該建物にはファストファッションブランドの縫製工場が多数入居しており、違法に増改築された建物内に設置された発電機、ミシンなどの関連機器の振動が間接的にビルの崩壊を招いた。その背景には杜撰な安全管理、不当な低賃金、劣悪な環境での強制就労などの問題もあり、安価な労働力に依存した過剰な利益追従が引き起こした業界史上最悪の労働災害と言える。

社員の豊かさを支える風土

ファッション リユース

──スタンディングポイントは離職率が低いと伺っています。社員が働きやすい環境をつくるために心がけていることをお聞かせください。

若森:スタンディングポイントは、社員の自己実現に伴走できる会社を目指しており、企業理念として「R&Eビジネスの創造を通じて社会と社員の生活向上に貢献します」を掲げています。社員の豊かさに貢献できることが、この会社の存在意義になると考えています。

毎年企業の方針を共有するために方針書を全社員に配布しているのですが、その中に「上司は部下を幸せにする権利しかない」という一文があります。そういったことを明示して管理職含め教育しているため、社員からあがってくる経営陣の耳が痛い提案でもそれに嫌な顔をするのではなく、「そう思われているよね」「改善していかないといけないね」となれている。そんな社風が離職率低下を支えているのかなと。

なにより、社員全員がなぜこの事業をやっているのか?なぜこの仕事をしているのか?を広く深く共有できています。自分たちの仕事に誇りを持ってくれているメンバーが多いため離職率が低くなっているのかなと思いますね。

ファッション リユース

──福利厚生も充実しているとお伺いしています。具体的な福利厚生に関する取り組みをお聞かせください。

若森:細々したのも含めると27個あります。グループ会社の持ち株制度など社員の資産形成的なものなどその内容はさまざまですが、入社後数年は安心してキャリア形成してもらうためにも、住宅手当などできちんとカバーできるところはカバーしてあげたいなと。

特に大事なのはお休みです。ワークライフバランスを重視する時代というのもありますが、年末年始以外にも5連休制度というものを設けていて、部長課長クラス含め全従業員100%取得しています。公休日と繋げて9連休にする社員もいますね。

また、社員に意外と珍しいと教えてもらったのですが、弊社では毎月希望休というものを募っており、毎月みんなで工夫してシフトを組んでいます。なので、銀座店で働く社員の希望休のためにEC担当が出勤したりと、部署間を飛び越えるジョブローテーションを組み込むことで、休みに柔軟性を持たせています。

たいていの社員は休みの理由もシフトに書いており、例えば子供の運動会とかですね、それをオープンにしているから他の社員もその人の希望休に協力しようとする。だから希望休はほぼほぼ通る。そういう風土なんですよね。

こうあるべきとか、いままでの当たり前とかをちょっと抜きにして、社員自身に働きやすいような提案をたくさんしてもらい、気がついたら27個になったという感じですね。

──ほかの企業では休みの理由をわざわざオープンにすることも少ないかもしれませんね。風通しの良さが伝わるエピソードのように感じます。

1人あたりの生産性が高い理由

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──株式会社スタンディングポイントは、社員教育プラットフォームクラウド「TEICHAKU」の提供もされているかと思いますが、社員教育に対する考え方をお聞かせください。

若森:スキルや知識は経験年数を積めばついてくるものだと思いますが、1番大切なのはやっぱりマインドです。そのマインドを形成するためにも、社員教育に力を入れてきました。

そこから、オンラインで学べる環境、誰が抜けても円滑に回るマニュアルが必要だなと考え、それらをプラットフォーム化してみました。マニュアルはもちろん、店長や経営層になるためのコース別カリキュラム、次のキャリアアップのために必要な学ぶべきことなど、ほとんどの情報はそのプラットフォーム上でオープンにされています。キャリアアップのために必要な情報は全てオープンにしているため、あとは頑張りたい人がきっと頑張ってくれるはず。丁寧かと言われるとそうではないかもしれませんが、自分のタイミングで成長したいと思った時に成長できる仕組みです。

本来は社内用に作成していましたが、仲のいい経営者から興味を持ってもらい、ファッション・アパレル業界の企業などで本プラットフォームを導入いただいています。

──社員ファーストな風土が伝わってきます。社員の方々に対する考え方や実際に行なっている施策などをあらためてお聞かせください。

若森:弊社では、業界平均値の1.2倍の対価を払うという方針を出しています。これは会社の気前がいいから払っているのではなく、1人あたりの生産性が高いから還元できているだけだと思っています。もちろん、必ずしも社員自身に最初からそのような自走力があるわけではないので、そういう姿勢になれる社内の雰囲気や風土があるのかなと思っています。

目標は5人の事業家を輩出

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──今後の会社としての展望や事業展開に関して、社員に期待することをお聞かせください。

若森:現在私は45歳なのですが、50歳までにエコスタイルの社長を継承して、60歳までに5人の事業家を輩出できたらと思っています。自分がこの会社を起業した時もまわりの人にたくさん助けられました。今度は自分自身の人生の集大成として、何か想いがある人を応援できればなと考えています。

会社として社員自身が構想する事業に伴走できるよう、社内勉強会などを開いたりと人材育成、環境整備を進めています。身につけてきたスキルを社会のために生かしていきたいという発想のもと、1人の事業家として社会課題を解決できる事業をもっと自由に提案してきて欲しいですね。

──最後に、どの様な人に入社して欲しいのか、会社の成長のためにどのような人が必要なのかをお聞かせください。

若森:スタンディングポイントの社員には、組織の為の個人ではなく、個人のための組織ぐらいのつもりで、自分の人生をわがままに生きて欲しいと考えています。豊かさの定義が多様になっているこの時代、自分の人生を豊かにするために必要だと思うことをこの会社で学んで、変な意味ではなく上手に会社を活用してほしいなと。

そうすることが個人の働きがいや成長に繋がり、結果的に組織も成長していくはずです。自らの人生を自分自身で豊かに一生懸命考えようとする気持ちがあると弊社はしっくりくるかもしれませんね。

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秋吉成紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

ライター・編集者。1994年東京都出身。2018年1月から2020年5月までファッション業界紙にて、研究者インタビューやファッション関連書籍紹介記事などを執筆。2020年5月から2023年6月まで、ファッション・アパレル業界特化型求人プラットフォーム「READY TO FASHION」のオウンドメディア「READY TO FASHION MAG」「READY TO FASHION FOR JINJI」の編集チームに参加。傍ら、様々なファッション・アパレル関連メディアを中心にフリーランスライターとして活動中。

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