「YouTube」というとファッション好きな方も業界人も、動画を見るツールとして一度は利用したことがあるのではないでしょうか?しかし、これまでファッションとはあまり相性が良くないという印象も同時に持っていませんでしたか?

実は、今の若者、特に10代の利用率において、「LINE(88%)」に次いで 高いのが、「Youtube(81.0%)」となっており、この数字は「Twitter(75.0%)」をも超えており、すでにSNSの一つとして影響力を持つ「YouTube」にファッション業界としても手をつけていかなければならない状況になっているのです。

業界を目指す若者、延いては業界人に向けて、本連載では、16歳の起業を目指すファッションユーチューバー”だっつ”による進行のもと、時代に先駆けて活動を行うファッションユーチューバーの声を届けます。連載第1弾では、ブランド古着の「kindal吉祥寺店」に勤めながら、ユーチューバーとしても活動するハズムさんに、ユーチューブに関するあれこれを聞きました。

最初は未承認でスタート

だっつ(画像左)・・・現在高校2年生、16歳。「もっと色々な人に服を好きになってもらいたい」という思いのもと中学三年生終わり頃からYouTubeを始める。起業家志望。企業分析IRブロガー(こちらにて連載中)。YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCBc3yOfpf5X72TJLjW8LjYg

ハズム(画像右9・・・ブランド古着屋で店長を務めながら、YouTuberとしてファッションに特化したコンテンツを提供している。YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCMvBOHekeyJQfF56PG01qhA
Photo: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)

だっつ(写真左):まずはじめに、YouTubeを始めるきっかけについて教えてください。

ハズム:僕は、20歳の時に上京してきたのですが、すぐにブランド古着屋で働き始めました。「YouTubeやっているのに?」と思われるかもしれませんが、実は、積極的じゃない性格で、どちらかというと、シャイなんです。そのため、ブランドのことは知っているのですが、接客の中で、お客様に伝わり辛いと感じることがありました。

そんなことを思っている、去年の11月くらいにカメラなどのガジェット系の動画をYouTubeでふと見てみたのですが、動画を見ただけで、すごい買いたくなったんです。そこで、これをファッションに置き換えて、魅力を伝えられればいいんじゃないかって思ったことが初めのきっかけです。最初は、顔を出すとか、自分を前に出すことが苦手で、会社の名前をアカウント名にしてやっていました。

だっつ:これって、許可とってやっていたんですか?

ハズム:いえ 、最初は未承認でした。笑 でも今では上の方からは、頑張っているねと、認知はされているという感じです。今では、会社の名前を外して、個人の名前でやっているんですけどね。

だっつ:僕もYouTubeで発信をしているんですが、最初の一線を越えることってすごい難しいですよね。何か背中を押すような機会があったんですか?

ハズム:そうですね。ちょうどそのガジェット系の動画を見た時が、23歳の誕生日を迎える時期で、「いつまでも恥ずかしがっている場合じゃない!」って自分に言い聞かせていたことですね。笑 でも、最初は、やっぱり恥ずかしさが抜けなくて、世の中に出せないくらいのクオリティーでしたけど。

YouTubeをメインにしようと思った理由

だっつ:気持ちはわかります。笑 あと、もう一つ気になっていたのですが、YouTubeって、あんまりファッション好きがやっている印象はなくて、どちらかというと、Instagramにファッション好きがコミュティーを作っているような感じじゃないですか? YouTubeをメインにしようと思った理由などってありますか?

ハズム:実は、YouTube始める前に、お店でInstagramのアカウントを運用していました。でも、お店のアカウントのフォロワーって増やすがすごい難しかったんです。そんな経験もあって、他のSNSはどうなんだろうという気持ちを持っていました。

だっつ:Instagramはおしゃれ好きがたくさんいますからね。

ハズム:そうなんです。それに加えて、YouTubeにはファッション情報を発信する人って、とても少ないんですよね。僕の周りのアパレル関係者は、「おしゃれなメディアのスナップとかそういうのには、出たい!」っていう気持ちはあるんですけど、YouTubeのことをなんか下に見ているような雰囲気があって。だからこそ、これを逆手にとってやってやろうという気持ちで、YouTubeを選択しました。

Photo: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)

だっつ:かなり戦略家ですね。笑 今年の1月に本格的に始めたということで、僕もハズムくんが投稿し始めた頃からチェックしていたのですが、そこから数ヶ月で29,000の「チャンネル登録」とすごい伸びだと思っています。ここにも何か戦略などあったのですか?

ハズム:いえ、特にないですね。自分でもどうして伸びたのかわからないです。笑 でも、最初の1ヶ月は登録者も再生数が全然伸びず、心が折れそうになっていたんですよ。2-3ヶ月で伸びなかったら辞めようとも思っていました。でも、2-3ヶ月ですぐに効果が現れ始めました。Instagramのアカウントを運用していた時にはなかった手応えのような。

毎日オフ会

だっつ:なるほど、YouTubeというメディアとしても需要があったのですかね?僕は、ウェブマガジンの記事も、SEO対策などされていて、当たり障りのない内容が多くて、あまり興味が持てないと思っていて。

ハズム:そうですね。マスメディアを代表するテレビを例にあげても、ファッションを扱うものって、お昼に紹介される一般的なものしかなく、もっとコア向けの動画メディアっていうのが、求められていたのかもしれないですね。

だっつ:先ほど、YouTubeにはおしゃれな層は少ないのではないかという話が出ましたが、さらに言うと、若い子の比率が高くないですか?視聴者の層は、どんな感じですか?

ハズム: 18-24歳の層が一番多いですね。でも、だっつくんの方が若いね。笑コメント欄とか見てみると、意外とブランドのこととか知っている人も多くて、一概におしゃれな層が少ないとはいえないですね。

Photo: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)

だっつ:視聴者とのコミュニケーションって、コメント欄以外にもありますか?

ハズム:SNSでのフォロー機能と、DM(個人メッセージ)がウェブを通じたものではありますが、お店に来てもらうことが多いです。僕が、基本的にお店にいるので毎日オフ会みたいな。笑 「長期休みができたら、会いに行きますね」っていうメッセージとか頂いたりして、かなりコミュニケーションをとっている方だと思います。

だっつ:毎日オフ会・・・笑 お話を聞いているとある意味で、これまでシャイが原因で課題と考えていた「接客」がYouTubeを通じてできているという印象ですね。

ハズム:そうですね。服屋さんって、積極的にコミュニケーションを取らないといけないところが多いのですが、僕は元々あまり声をかけないタイプだったので、お客さんから声をかけてもらえる率が高まって、互いにとってマイナスとなるコミュニケーションは減ったと思います。そう考えると、YouTubeを通じて、僕の存在を見てもらうことが接客になっているとも言えるかもしれないですね。

だっつ:そう考えると、販売員の役割っていうのが時代の流れによって変化しているようにも思えますね。販売員としても活動されているハズム君だからこそ思う、販売に対する考えってありますか?

ハズム:もともと、人見知りなので、接客に思い入れがあるわけではないんですが、先ほど話したようにお互いのコミュニケーションにおいて、どこかで良い関係を持てなくなることが、接客にはあるので、これを解決することも求められてくるんじゃないかなと思っています。

そこにいる人と会いに行きたい

Photo: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)

だっつ:ちなみに今のYouTuberとしての活動って、会社としてやっているんですか?

ハズム:勤務外に個人でやっていますよ。

だっつ:動画の編集とか、勤務外でやっているとすごい忙しいですよね。僕も放課後とか土日にやっているので。笑 販売に少し繋がる話なのですが、ハズムくんって、ある意味でスーパー販売員じゃないですか?そうすると、もし僕が、店舗のオーナーであれば、「うちの服とか会社のPRをしてよ」ってなると思うんですけどその辺どうですか?

ハズム:そう考えるのが普通だと思うんですけど、うちのオーナーは「お前が有名になればいいじゃん」くらいで考えていてくれていてます。さらに個人的な意見としては、宣伝を多めに絡めていくとリアリティーが無くなってくると思っていて、結局は自分の買い物の延長でやっていることなので、そこにお店のアイテムの紹介とか、企業のPRを盛り込むと、自分も面白くないし、見ている人を混乱させてしまうかもしれない。だから、基本的には宣伝はしない方向性で行こうと思っています。

だっつ:バランスを取っているんですね。お店としては直接宣伝しなくても、ハズムくんに会いたくて、来店したりするという効果もありますしね。最近は、他のお店紹介などもやっていますが、配信の効果ってどのくらいありますか?僕の4000のチャンネル登録でさえ、横浜の古着屋さんに5,6人の店頭送客の効果があったと聞いています。

ハズム:具体的な数字はわからないですが、結構繋がっていると聞いていますね。でも、これも自分が本当に良いと思ったお店や、そこにいる人と会いに行きたいという方針でやっています。

だっつ:今、動画で紹介している企業とかで面白いって思っているところってありますか?僕個人としては、「TOKYO BASE」さんなどは、EC(ネットショップ)の売り上げ比率が高いだけじゃなくて、販売員の方の能力が高くて、個人的は面白いと思っているのですが。

ハズム:今度、そこのブランドを紹介したいと思っているのですが、クラウドファウンディングなどをやっている「all yours」という企業です。服自体もそうですが、企業として目指している先などが面白いなと思いました。

Photo: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)

だっつ:ファッション業界が総じて苦しいと言われているこの現状を個人として打開しているハズムくんから、若者に対してメッセージなどあれば伺いたいです。

ハズム:僕もアルバイトとしてやっていたのですが、すぐには社員になれないし、そうなると店長への道も見えてこない。上が見えない状況で、毎日毎日同じ作業を繰り返していくことに不安を感じていました。僕が以前、原宿店配属だった時の同世代の子たちの中では、辞めていったという話も耳に入っています。

でも、結局は「新しい服を買うために仕事をやっている」ではなく、「仕事を通じて、先を見据える」という向上心と、さらにその中で、行動することが全てだと思っているので、これを伝えていきたいと思っています。

だっつ:ありがとうございました。


Text::S.Takano(READY TO FASHION inc.)

READY TO FASHION MAG 編集部

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