HEART CLOSET

胸の大きい女性の体型に合わせたアパレルブランド「HEART CLOSET(ハートクローゼット)」を提供する株式会社122が、カジュアル向けの新ライン「カジュアルスキッパーシャツ」の発売を開始。3色展開で、通販サイトで販売を行う。

同ブランドは「胸のサイズから発想する女性のためのアパレル」をコンセプトに、ターゲットを明確にした、いわゆるカテゴリーキラー型と呼ばれる展開を行なっている。

「胸の小さい女性向けの次は、胸の大きい女性向けに話題が移っていくのか」と表面だけを見てみると非常にシンプルに感じるかもしれないが、複雑な戦略が隠されており、実はファッション業界のトレンドをしっかりと抑えた、まさにお手本のようなブランド展開を行なっているように見える。

本記事では、そんな「HEART CLOSET」の戦略や施策を例に、ファッション業界で注目されているキーワードを紹介する。

コンセプトが明確で一点突破

HEART CLOSET

特徴としては、カテゴリーキラー型ゆえの特徴、尖ったコンセプトを持って、多様化した消費者のニーズに応えるということが挙げられる。

「HEART CLOSET」では、胸の大きな女性をターゲットに、これまでオフィス用のシャツではサイズが合わないというニーズに応え、強い支持を得た。

他の企業で例を挙げると、おしゃれなレインウェアがないというニーズに応えた、「RAINS」や、メイドインジャパンに特化した、シャツメーカ「鎌倉シャツ」などが挙げられる。

飲食業界でも特化型の流れがあり、駅前や若者の街で行列をなす、チーズケーキの「BAKE」、細長い形のシュークリーム「ザクザク」などが例にあげられる。

スイーツといった括りではなく、商品カテゴリーを複数持たずひとつの商品に特化し展開をしており、チーズケーキといえばBAKEといったようにブランド想起しやすい。ファッション性が意識されており、洋服店顔負けの空間デザインや、ビジュアルになっている点も面白い。

また、「レッドブル」は、エナジードリンクという一つの商品を徹底的なブランディングで行うことで、成功を収めている。メディアを活用したり、エクストリームスポーツに出資していたりと戦略とそれに基づいた数々の活動は参考にできる部分もあるのではないだろうか。

このように、一つのニーズを深堀りし、磨くことで、他を圧倒するというのがカテゴリーキラー型の特徴となっている。

SNSで話題になったことがきっかけに

二つ目は、SNSで話題となったこと。あまり知られていない会社でもSNSにより一瞬にして認知が世間に広まるということもめずらしくない。

『HEART CLOSET』では、”胸が大きい”人でも可愛い服を可愛く着たいという悩みを解決する方法のひとつとしてアイテムを展開している。

その役割がシンプルであることもSNSで話題になった要素のひとつではないだろうか。世の中の流れにマッチし、且つわかりやすいストーリーが乗っかることで同様の悩みを持つ方から支持を得ることができるのだ。

さらに、同ブランドはイメージモデルのキャスティングも徹底している。グラビアアイドルの「今野杏南」を起用し、”胸が大きい”というキーワードを文字だけではなく、ビジュアル/イメージを用いることでさらに強調している。

HEART CLOSET

わかりやすいストーリーがのせられた例を見ると、クラウドファウンディングを活用したプロジェクトでその手法が使用される傾向がある。

例を挙げると、「洗濯を繰り返しても、色が変わらない黒いパンツ」や、「東大生であることを誇れない君に。東大カレッジブルゾン制作プロジェクト」がある。

バイヤーに取り扱ってもらうことや、大手のメディアや雑誌に掲載されることが全てではなく、SNSを用いて直接、ターゲットに届けるということも、今後のファッション業界では必要な手法になってくることを示唆している。

ただこれらは当然バズを狙おうということで作られたものではないということを認識してほしい。

見過ごしがちな普段の生活で押し込められてきた些細な悩みを解決する方法のひとつに、受け手が共感して連鎖していったにすぎないので、これは話題になるだろうと狙って作られたものは見透かされて当然だ。

いつでも、どこからでも

今、ファッション業界で一番注目されているのが、オンラインストア(EC)での販売だ。

店舗に足を運ばなければならない時代とは異なり、欲しいと思った”今この瞬間”に購入できることが当たり前となっている。

SNSや口コミで話題となったものは、即完売するなどその影響力はバカにできないし、当然利用者もそれが便利だと思っているし、当然だと思っている。

そうすると、オンラインショップを入り口とした、購入体験の向上は当然重要なことである。

全国に散らばった、ターゲットとする消費者をいつでもどこからでも、ウェブ上でのサイト一つで対応できるという利点に合わせて、店舗にかかる家賃などが削減されることの2つも重要なポイントとなっている。

資金が多くない、若手やベンチャー企業にとっては、アイデア一つでファッション業界に挑戦できる環境が整ってきたとも言えるかもしれない。

あなただけに、特別な体験

最後に紹介するキーワードが、パーソナライズ。

細分化した、個々人の興味・関心・行動に合わせてサービスを最適化するという意味で、聞き慣れた言葉だと、オーダーメードなどがこれに当たる。

近年では、インターネット上で、個々人に合わせて、最適なレコメンドを行ったり、カスタマイズできるということで応用されており、デザイン、生地、サイズを自由にカスタマイズできる「ラファブリック」や、スタイリストがあなたに合う洋服を選んで、毎月送ってくれる月額制ファッションレンタルサービス「エアークローゼット」などが注目されている。

膨大な情報の中から自分にあった情報をピックするのはとてもじゃないけど難しい。世界がせまくなるという側面もあるが、私を中心とした世界ができあがるという側面があるのもまたレコメンとの特徴と言えます。

HEART CLOSET

「HEART CLOSET」でも、「カップ数」と「アンダーバストサイズ」を選択することで、最適な着丈・袖丈の服が選択できるようになっており、パーソナライズというキーワードもしっかりと抑えている。

個々人に合わせた施策によって、消費者に特別な体験をさせるということも、ファッション業界では近年注目され始めていることが伺える。

「HEART CLOSET」に学ぶブランド戦略

さて、胸が大きい人向けの「HEART CLOSET」にて行われている施策を簡単に紹介したが、いかがだろうか。

一見、胸が大きいというワードだけで注目されているようだが、実際には、以下のような、しっかりとした戦略が組まれていることがわかる。

①一つの分野で突出する「カテゴリーキラー型」
②認知を拡大させる「SNSでシェアされやすい施策」
③どこでも販売できる「オンラインストア(EC)」への誘導
④ユーザーへの体験「パーソナライズ」

ファッションは好きだが、「センスが良くないから」や「ファッションについて詳しくないから」といった理由でファッション業界と関わることを躊躇っている若者をよく見かけるが、”モノ”や”センス”そのものに対しての知識だけでなく、上記のように、どのように販売してかという戦略を考える仕事へのニーズはある。

ファッション業界で名前が知られている「コムデギャルソン」にも、海外に優秀なビジネスパートナーの存在があり、また、次世代のコムデギャルソンと呼び声高い、「サカイ(sacai)」にもビジネスの面で支える「島田昌彦氏」「源馬大輔氏」などのパートナーがいる。

そのため、むしろこの業界で必要とされているのは、センスではなく、いかに売っていくかという、他の業界と大きく変わらないスキルではないだろうか。

スキルを身につけるためには

一つのブランドの戦略から、ファッション業界で必要とされるスキルについてへと展開していった。

今回紹介したビジネスのスキルも現場で働くことで身に付くものだろう。この記事を通じて、将来のしごとの選択肢にファッション業界を入れる若者が1人でも増えれば幸いだ。

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READY TO FASHION MAG 編集部

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