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ファッションをテーマに活動をしている、若者のリアルや業界に対する声をありのままに届ける連載企画「若者VOICE」。連載企画vol.1は、筑波大学3年生の声に耳を傾けた。

筑波大学というと頭が良いというイメージやスポーツのイメージが強い大学なのではないだろうか。有名人では、元政治家の杉浦太蔵さんや元バレーボール選手の中垣内祐一さんが筑波大出身だ。確かに、「筑波大学×ファッション」というイメージは湧きにくいかもしれない。それを強く感じた、ファッションが大好きな筑波大生の槇田佳一さんは、「おしゃれって楽しい!」ということをもっと多くの人に伝えるために、ファッションサークルを立ち上げ、ファッションショーを行なったそうだ。

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text : Reiko.S
photo : Satoshi.T

ー なぜこのサークルを立ち上げたんですか。筑波ではファッション系のサークルはなかったんですか?

なかったですね。もともと洋服が大好きで、おしゃれすることも大好きなんです。それに、洋服の形とか見るのも大好きなので、ああ本当に自分は洋服好きなんだなって思います。

ーいつから洋服が好きになり、どんな服が好きなんですか?

高校生くらいまでは、「おしゃれしてること」が好きでした。大学2年生くらいからは、単純に洋服というものが好きになり始めました。特にレディースのデザインなどは、形などが洗練されてるなと思います。

どこのブランドが好きというよりは、自分がこだわるのは形です。「あ、このブランドは綺麗な形を作るんだな」ということを感じた結果、そのブランドが好きになるという流れです。もともと理系なので、構造美というようなものに惹かれるのかもしれませんね。

ー構造美に魅かれるというとイッセイミヤケとかですか?

イッセイミヤケも好きですが、ジャンフランコフェレというブランドが特に好きです。彼はもともとディオールのデザイナーでした。ディオールは気品があって、とても好きだったので調べていたらそのブランドに出会ったという感じです。

ー世代も国も自分に近いところにないのに、ジャンフランコフェレが好きな理由はやはり構造美に魅かれるからなのですか?

そうですね。建築家からデザイナーになった方なので、そこから生み出されるものに興味が湧くのかなと思います。

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ーサークルを立ち上げるのはとても思い切ったことをしましたよね。

自分にはこの企画を成功させられるカリスマ性があるんじゃないかと思って(笑)あと、大学2年生の冬頃から就職のことや自分の夢を真剣に考え始めたんです。確かに洋服は大好きだったんですが、「大学出てやることじゃないな」というようなちょっとした偏見のようなものがありました。でも調べを進めていったら全然そんなことなかった。むしろ大学に行ってからやるべきだと感じたんです。それで自分はファッションの世界で生きていこうと決めました。そうなったら、大学にいる間に何かをやりたいと思うようになり、取り組みやすいのは大学の学園祭でファッションショーをやることなんじゃないかと思いつきました。大学でやるなら、会場費は無料で、しっかりとした設備のところでできますし。それに、自分の中だけで終わらせたくなかったので、ファッションショーをすることによって企業の方とも出会えるし、外に広がっていくかなと思いました。でも、やり始めてみたら、いわゆる新作の服を貸してもらうことは難しいと判断し、それなら古着屋さんに協力してもらおうと発想を変えたんです。それに今の時代ファストファッションが流行っていて、ファストファッションが良くないとまでは思いませんが、ファストファッションが出来上がるまでの工程で、現地の工場で働く人々は低賃金・重労働などで働いているということへのアンチテーゼということで古着を使うのも良いと思ったんです。

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ー今回のテーマは?

筑波大ということもあって、なかなか皆おしゃれに触れる機会が少ないというイメージが自分自身の中で強かったので、まずは「気軽におしゃれを楽しもう!」ということを投げかけるようなテーマでした。1〜3部まであって、1部は古着屋さんの服をメインにして、日常で着ることの出来るおしゃれを提案しました。2部はエンターテイメント性を持たせるために、最近流行っている「ニコイチコーデ」や「双子コーデ」からヒントを得て、デニムにTシャツという統一させたスタイルにしました。筑波大でデニムを作っている人がいたので、その方にデニムを借りたり、Tシャツはモデルさんごとに合うカラーを合わせたりして、カラフルにしました。3部は、自分の母親が洋服が大好きということもあり、高価なブランドの服を持っていたので、それを借りました。本当に日常で着る服というよりは「コレクション」に近いようなイメージにしました。「こんな服もあるんだ」ということを伝えられたらと思って提案しました。

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ーモデルさんはどうやって集めたんですか?

こちらからスカウトというような形でお願いをしました。ほとんどが筑波大生でしたが、筑波に住んでいて他の学校に通ってる人にも何人かお願いしました。あと、筑波大は留学生が多いので、留学生の方にもお願いしました。

ーモデルさんはどんなモチベーションでやってくれたんですか?

お願いした人たちは、友達が多かったので友達の頼みだからと快諾してくれたり、単純に「ショーに出てみたい」ということで受けてくれたりしました。でも終わった後は、「すごく貴重な体験だった」と喜んでくれました。

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ー運営のメンバー構成は?

ショーの企画のメンバーは自分を含めて5人、そして、音響とステージ構成を担当してくれた1人、合計で6人です。筑波大には芸術専門の学部があって、音響とステージ構成をお願いしました。「ショーで自分の作品を出すことができて良い経験が出来た」と言ってくれました。企画メンバーは自分の友達とその友達に紹介してもらった人たちです。

ー何が大変でしたか?

ないものづくしの中でやることが難しかったです。大学が都内であれば、関わる企業も宣伝のメリットがあり前向きに検討してくれたかと思うのですが、筑波という場所だとそれはなかなか難しいものでした。ゼロから始めた団体だったので、実績もなく売り文句もない中で説得するのは大変で、断られた企業もありました。でもその中でも筑波にある古着屋さんが協力してくれたりしました。来年もやれたらと思っているので、とにかく今年は実績を残さなければと頑張りました。

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ー終わってみて良かったことは?

一言で言えば「ショーを通して洋服の良さや楽しさを伝えれたこと」だと思います。そして一緒に運営してくれたメンバーもファッション業界で働くということに興味を持ってくれたことも良かったです。自分自身としても、このファションショーをやってみて、ファッションは大好きだけど、仕事にできるのかどうかということを自分自身に対して試す良い機会にもなりました。終わってみて、やっぱり洋服が好きだなと改めて感じ、将来ファッション業界でやっていきたいと思えましたし、自信に繋がりました。

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ー周囲の人がファッション業界で働きたいと思わない理由って何だと思いますか?

筑波大の人はいわゆる秀才という人が多いので、安定思考の人が多いです。そのため、ファッション業界にそもそも興味が薄いのかもしれません。ファッション業界で働くということが販売員として働くというイメージに直結しがちで、その他の職種を知らないのではないかと思います。販売員は販売員という仕事の良さがありますし、その他の職種にも良いところがあってそこを知ってもらえたら、もっと可能性は広がると思います。

ー高い洋服を着ることや自分を表現できるような服を着ることが格好悪いという風潮があったりもしますがどう感じますか?

「洋服にお金かけてそうだよね」とか言われたりすると、そこに何か含みを感じたりすることはありますね。派手めなファッションをして、ファッションで自分自身を表現しているという人は少ないかなとも思います。でもおしゃれをするって楽しいと思っているので、それを多くの人にもっと感じてもらいたいということも含めて今回のファッションショーにつながっていったのもあります。

ー最近のファッションでここはダメなのではと思うことはありますか?

洋服をキャンバスみたいにしている、ただ服にデザインを乗せただけ、というものは構造美とかを感じないのであまり好きではないですね。

ーECなどネットショップが増えていく中で、販売員という仕事は今後どうなっていくと思いますか?

確かに、店頭の在り方というものがこれから変わってはいくとは思っています。店舗にサンプルだけしか置いていない、とか。でも自分自身としては、なくなって欲しくない職業です。きちんと知識を持って、接客してくれる販売員の方も沢山います。ネットだけではわからないこともあるので、そういったプロフェッショナルな方々は店頭にいて欲しいなと思います。

ー若者がファッション業界を目指さなくなったという点に関してどう考えますか?

バブリーじゃないからかなって(笑)儲からなさそうというイメージや、会社の評判とかもあるのかもしれないかなと思います。自分自身、この業界で働きたいと思った時に色々調べていたら、SNS等で販売員の方たちが愚痴をこぼしている人が多かったです。そのイメージが先行してしまって、アパレル業界全体がブラックというようなイメージがついているのではないでしょうか。

ー将来の夢は何ですか?

将来は独立して、デザイナーになりたいです。そのために今は、商社の繊維部門やアパレルの総合職を目指して、就活をしています。これからまた専門学校に通うのは自分に合っていないかなと思って、そういった冒険をするよりは、商社やアパレルの総合職などで多くのことを学んで、きちんと地盤を固めてから独立したいと考えています。

独立したら、売れる服を作りたいというわけではなく、自分が本当に良いと思う服を打ち出していきたいと思っています。そのためには、どう宣伝していくのかが重要になっていくのかなと思っています。今はSNSの時代ですし、情報を広げるのには何かしら話題性が必要かなとも感じているので、実際にファッション業界で働いて、もっとよく知った上で、考えていかなければならないと思っています。

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筑波大という、ファッションへのイメージが湧きにくい環境の中で、周囲を巻き込んでゼロから全てを作り上げ、ファッションショーを成功させた槙田さんの行動力や「おしゃれをすることが楽しくて大好き」という純粋で原点のようなファッションへの熱い思いは、現在落ち込んでいるファッション業界にはとても貴重な存在なのではないだろうか。

ファッション業界はブラックだ。大学を出てから行く業界じゃない。そんなイメージが染み付いているが、彼のように真剣に向き合ってみて、一歩踏み込んでみれば、もっと違う世界が見えることもあるのではないだろうか。

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プロフィール

槇田佳一

筑波大学 生物資源学類 3年

所属団体 ballade代表

生年月日 1994年5月1日

2016年に同大学にてファッションショー運営サークルを立ち上げる。2016年11月5日(土)ショーを開催。

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READY TO FASHION MAG 編集部

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