profile:柳澤春馬
1994 年生まれ。長野県出身。文化服装学院卒業。2016年よりNYへ単身留学。アートギャラリーの在り方に疑問を抱き、アーティストの作品が持つ世界観と展示空間がリンクするエキシビジョン「youth」を開催。 帰国後、NY で培った経験を生かし、アーティストとの協業によるプロジェクト「DISTRICT 24」を立案、 ディレクター務める。
Instagram : @cheesetoast22
ファッションをテーマに活動している若者のリアルや、業界に対する声をありのままに届ける連載企画「若者VOICE」。本企画vol.4は、専門大学を卒業後、弱冠22歳でフリーのクリエイティブディレクターとして活動する栁澤春馬さんに、活動の原点や、ファッションに対する考えを聞いた。
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-2017年3月19日から開催するエキシビジョン「DISTRICT 24」のディレクションを務めるなど、”ディレクター”という仕事に対して興味を持つようになったきっかけはなんですか?
いちばん初めのきっかけは高校3年生の時に、地元の松本市(長野県)にある松本城の公園でファッションショーを開催したことですね。そのショーの準備をしている時からとても大変だったけど、これって全然苦じゃないなということを感じるようになりました。幼少期の時にプラモデルやレゴのブロックを夢中で作っているかのような感覚です。それ以降、ディレクションを行う際に発生するモノ作り/空間作りが趣味の延長や娯楽の一つになるようになって、どうせ仕事にするのであれば、遊びや趣味の延長線上がいいなと考えるようになったからです。
もちろん娯楽とは言っても、重い責任がのしかかる立場なのでとても真剣に取り組んでいます。
(松本城の公園で開催したファッションショーのフライヤー)
-好きこそ物の上手なれということですね。ところで、高校生の時に開催したショーのテーマが『Resist-反抗-』となっていますが、どのような理由があるのですか?
自分を取り巻く環境とか、社会に対する不満がとてもあったからそれをそのまま表現したというのが理由です。高校の時も周りの先輩は襟足を伸ばして、田舎のヤンキー、チーマーみたいな人が多い中、僕だけはサイドも襟足もがっつり刈り上げて入学式に行って、いびりの対象になったりとか。そういったストレスが溜まっていたからでしょうかね。(笑)もっと自由で良いじゃんという意味合いも込めて『Resist』にしました。
(高校時代の柳澤さん)
-これまでや、現在の活動の源になっているものはなんですか?
一番の根底にあるのはただ面白いことがしたいっていうだけなんですよね。さらに言えば、人がこれまでやっているものよりも、面白いものを提案したいということがあります。先ほど話したファッションショーもそうなのですが、同じようにショーを開催している学生団体のイベントに参加した時、僕ならもっと面白いものができると思ったことが大きなきっかけです。自分の性格なのかもしれないですけど、悪いものに意識が向いてしまうというか。面白いものより面白くないものに目が行ってしまう癖があって。ただ、それが毎回自分のソースになっています。
-その後、文化服装学院を卒業されましたよね。就職活動をしようとは思わなかったのですか?
就活ももちろんしてたんですけど、就活に対する集中力が続かなかったんです(笑)。もともと高校を卒業したら留学に行きたいという思いがあったので、就活するか留学するか悩んでいて、もし内定がもらえたら就職しようと思っていました。それで見事に全部落ちてしまって、その時に親父から留学するなら今のタイミングしかないんだからと言われて、一年間ニューヨークに留学することに決めました。
-留学先のニューヨークでもエキシビションを開催したと伺ったのですが、その経緯は何ですか?
ニューヨークに行ってから、もともと何か大きな目標があったわけではなく、語学習得というよくある理由で行きました。朝の9時から夕方の5時まで英語を勉強し続ける日々は本当に気が狂いそうになってました。しかも僕、英語が一番嫌いな教科だったんですよ。けれども、日々の生活に飲み込まれそうになっていた自分とは対照的に、ニューヨークの人たちって一人で何枚も名刺を持っていて、どんなことにでも好奇心旺盛に取り組んでいるんです。英語だけを勉強しているのも、もったいないなと思ってやっぱり何かやりたいという思いに駆られていたら、もうやっていましたね。
—海外で活動する上で大変なことはありましたか?
ニューヨークでやるのは本当に大変でした。両面テープや釘一本買うのにも日本であれば東急ハンズやホームセンターに行くって思いつくじゃないですか。ただ、向こうだとどこに売っているのかも分からないんですよ。実際に買いに行くにしても国際免許も取得していなかったので、車を運転できなくて、電車に2メートルの材木を乗せて運んだりとか、何キロもある家までの道のりを担いで帰ったりとか、めちゃくちゃなことをしていましたね。あと場所探しもとても大変でした。英語をうまく話せない日本人の話に一切耳を傾けてくれなくて、色んな人にたらい回しにされて結果的に連絡が返ってこないということばかりで、場所探しだけで4か月も費やしました。
-ニューヨークで開催したエキシビションのテーマは『Youth』でしたが、ここにはどんな意味が込められているのですか?
パリといえばファッションの発信地というように、ニューヨークって若い子のスケートカルチャーやアートカルチャーの発信地になっていて、若いエネルギーに満ち溢れているんです。僕自身もユースカルチャーに影響されている部分は大きかったので、自然な流れで『Youth』にたどり着きました。もちろん、ベテランの方で素晴らしい方もいるんですけど、おじいちゃんが突然、革命的なことを起こしたりしない訳で、結局とんでもないことをするのはいつだって若いやつなんだなと思っています。そんな若さに惹かれたことが理由のもう一つですね。
—ここまでの連載でも継続している質問なのですが、最近のファッションを柳澤さんの立場からどのように見ていますか?
僕が特に感じるのは、日本はみんな自身のスタイルがないということ。すごいわかりやすい例でいうと、ある有名ダンスグループがあるブランドの服を着ていたら、こぞって同じブランドや同じテイストの服を着るというような。彼ら自身に、似合うとか似合わないっていう考えはないと思うんですよ、その人たちが着ているから俺もこれを着れば正解という感じが伝わってきます。でも実際、そんなことないんで、似合わない人には似合わない。誰かに憧れを抱くことは決して悪いことではありません。ただもっと自分の内面的な部分も見つめる必要があると思っています。確かに売れているモノは、かっこいいと思いますけど、僕はそれだけじゃないと思います。
—柳澤さんは、ファッションを提供する側でもあるかと思うのですが、今後、ファッション業界で必要なことはなんだと思いますか?
提供する側が、消費者のニーズに合わせ過ぎているように感じます。狭いマスに向けて深くアプローチを試みている会社の方が、意外と経営がうまく回っているという話はよく聞くので、そういう部分でみんな考えてやらないといけないと思っています。面白いものを考えるのと同時に、提供する側も、もう少し楽しむことが必要なんじゃないかなと思ったりします。
-今後どのようなことをしていきたいですか?
険しい道ではあると思いますが、ファッションやアートを軸に企業から依頼を受けてパーティや展示会のトータルディレクションを請け負っていけたらいいなと思っています。それと並行してアーティストのマネージメントもやっていきたいです。
-最後に、2017年3月19日から開催する、エキシビジョン「DISTRICT 24」について、読者の皆さんに一言、よろしくお願いします。
興味がない人やハマらない人はハマらないと思うんですけど、もんじゃ焼きを食べるついでに、ちょっと寄ってみようかなっていう感覚で来てもらえたら嬉しいです。
【エキシビジョン|展示会概要】
「DISTRICT 24」
日時:平成29年3月19日(日)~23日(木) 14時~22時(最終日のみ20時まで)
※18日(土) 18時~21時の間でOPENING PARTYを実施(どなたでも入場可能/入場無料)
場所:TEMPORARY CONTEMPORARY(東京・月島)