アパレル企業のオフィスを紹介する連載企画、オフィスツアー。今回は、テキスタイルの企画開発や卸、ODM業を中心に事業を展開している繊維商社、タキヒヨー株式会社の東京支店に潜入しました。

毎週100名以上の出張者が出社する東京支店

1751年に創業以来、名古屋を拠点に、繊維製品の企画・製造・販売を行うタキヒヨー株式会社。近年では、サステナブルソリューションカンパニーとして、ファッションにおけるサステナビリティ実現にも注力しています。本社を名古屋におく同社ですが、東京支店があるのは、秋葉原。

アパレル企業では珍しい場所かと思いきや、徒歩15分圏内には繊維商社や問屋が集まる馬喰町や浅草橋、御茶ノ水があり、実はアパレル企業が集まっているエリアなんです。

東京支店は、2022年に移転したばかりのオフィス。全従業員数は550名超で、東京支店で常時勤務しているのは、その2割にあたる130名ほど。

執務スペースに入ると、まず目に入ったのが、カラフルな椅子たち。

ここは、毎週、東京支店に出社する出張者のためのフリーアドレスのスペース。なんと、週中の火曜日から木曜日には130名以上の出張者が名古屋からやってくるそう!

執務スペース全体はと言うと、区切りのない仕様が特徴的。「自然と社内交流が生まれやすいですね」と話すのは、今回オフィスを案内してくださった東京人材開発チーム(※以下、組織名や役職名は取材当時のものです)の森さんです。

本社も同じく、オフィス内に区切りが設けられていないそう。

部署の島はこんな感じ。

デザイナーから営業まで、異なる職種の方が一つのオフィス空間で働いており、職種や商材ごとでざっくり分類されているレイアウトです。隣で働いている人が全く違う部署に所属している人だったりすることもあるそう。

ベビー服のデザイナーとして働く梅村さんに、タキヒヨーや仕事の魅力をインタビューをしました。

これまでのキャリアについて教えてください!

RTF編集部
RTF編集部
梅村さん
梅村さん

ベビーセクションのベビーチームでデザイナーとして働いています。担当しているのは、生まれたばかりの赤ちゃんから80cmまでのベビー服と、マタニティ服です。チーム全員で意見を出し合いながら、もの作りに取り組んでいます。

入社のきっかけは?

RTF編集部
RTF編集部
梅村さん
梅村さん

もともと雑誌の編集者を目指して学校に通っていました。ただ、編集者は実際に雑誌に掲載される洋服を選べないと知り、それなら作り手側に回ろうと考え、デザイナーを志望しました。特にディズニーのライセンス事業に携わりたかったこともあり、ライセンス商品を多く取り扱うタキヒヨーに入社しました。

仕事をしていて楽しいと感じる瞬間は

RTF編集部
RTF編集部
梅村さん
梅村さん

デザインした洋服を、ご家族がお子様に着せてSNSに投稿しているのを見ると、「実際に愛用してもらえているんだな」と実感し、とてもやりがいを感じます。

会社の魅力は何だと思いますか?

RTF編集部
RTF編集部
梅村さん
梅村さん

やりたいことに挑戦できる環境なのも、タキヒヨーで働く魅力の一つです。個人の意見を会社がくみ取り、自分の考えたものが実際に商品になるのは面白いですね。

部署や職種ごとに固まらないので、仕事においてもいろんな広がりを見せそう。

さらに奥には、テキスタイルを扱う部門や、テキスタイルOEMを担当している部署の島が。取り扱っている商材が幅広いので、レディースでもアイテムごとに部署が分かれているそうです。

次は、素材開発販売グループの後藤さんと、トップスセクションで営業担当として働く大浦さんにお話を伺いました。


▼素材開発販売グループ 後藤さん

簡単な自己紹介をお願いします。

RTF編集部
RTF編集部
後藤さん
後藤さん

素材開発販売グループの後藤です。東京駐在員として、生地の販売や卸の営業を行っています。

会社のいいところは?

RTF編集部
RTF編集部
後藤さん
後藤さん

面接の時から感じていましたが、束縛されない雰囲気があるところですね。商社にしては、いい意味で体育会系の堅苦しさがなく、おおらかな人が多い印象です。そのおかげで、働きやすさを実感しています。

仕事の魅力は?

RTF編集部
RTF編集部
後藤さん
後藤さん

もの作りに関われる点です。素材開発グループに所属していることもあり、営業職と言っても実は、もの作り的な側面もあるんですよ。もの作りが好き、というベースが自分の中にあるので、仕事をしていてとても楽しいです。


▼トップスセクション・営業担当 大浦さん

簡単な自己紹介をお願いします。

RTF編集部
RTF編集部
大浦さん
大浦さん

トップスセクションの大浦と申します。水着をはじめ、スポーツ商品の営業を担当しています。名古屋本社に在籍しているメンバーが多い中、東京支店には同じチームの方が4人ほどいます。今年で入社8年目になります。

会社のどんなところに魅力を感じて入社しましたか?

RTF編集部
RTF編集部
大浦さん
大浦さん

もともと服が好きで、服に携わる仕事をしたいと思っていました。特に、企画に近い仕事ができる会社を志望していたので、繊維商社に絞って就活をしていました。さまざまな企業を比較する中で、タキヒヨーは柔らかい雰囲気があり、いい意味で商社らしくない雰囲気に惹かれ、入社を決めました。

実際に入社してみてどうでしたか?

RTF編集部
RTF編集部
大浦さん
大浦さん

一昨年に産休を取得し、昨年復帰しましたが、産休前と変わらず同じ業務を担当しています。柔軟に自由に働ける環境が整っていると思いますね。また、1年目から意見を求められる点も、この会社の魅力の一つだと思います。

仕事をしていて楽しいなと感じる瞬間は?

RTF編集部
RTF編集部
大浦さん
大浦さん

「お客さんが着ているのを見るとうれしい」と言われることが多いですが、私の場合、トータルで提案したものが、どれだけ多くの人に「いいね」と言ってもらえるかにやりがいを感じます。業界を目指したきっかけでもある、もの作りへの興味が、その思いの原点かもしれません。

オフィス奥には、オフィスツアーではお馴染みの、リフレッシュコーナーもしっかり置かれていました。

執務スペースの中央奥、開けたデスクは社長の専用デスクだそう。

出入りは自由。森さん曰く、「上場企業にしては、社長とも距離が近い」とのこと。最終面接に社長が同席するのはもちろんのこと、最終面接の前には、社長講話会と呼ばれる、直接社長と話せる機会が設けられているそう。そういった取り組みも、人を大切にするタキヒヨーならではの魅力ですね。

その横には、雰囲気の違う一枚板の机が。

先代社長時代からのもの。オフィス移転後も変わらず置かれているそうです。

そんな長い歴史を持つタキヒヨーには、創業から270年以上受け継がれてきた大切な言葉があります。それが、「客六自四(きゃくろくじし)」。「10のもうけのうち、自分は4でよしとし、少しだけお客様に多く利益を受け取っていただく」という経営哲学を示したものです。

長い年月を経ても変わらない、精神の深さに身が引き締まりました。

執務スペースを囲むのはロッカーの数々。サステナブルチームのロッカーを見せてもらうと、商談時に使用するスワッチがびっしりと収納されていました。IT企業のように無形のサービスを提供するのではなく、繊維商社ならではの「モノ」を扱う特徴が表れていました。

素材循環スキーム「NO WASTE PROJECT」シリーズのスワッチ。サステナブル素材は年々増えてきているそう。海外ブランドの場合、要求される基準が厳しいため、最近では流通するテキスタイルの多くがサステナブル素材。

1,000点以上のサンプルを置く、ショールーム

執務室の隣には、小規模の展示会や相談会などを行うショールームも併設されていました。

企画提案のために、今シーズンのサンプルが1,000点以上も並べられています。100名を超える自社デザイナーが在籍し、年間4,500万着以上の服を生み出す同社は、「作る商社」とも称されています。

不要になったサンプルは、再生紙にしたり、スワッチの台紙にしたりしているそう。
大容量のキャリーケースは、サンプルを持参して営業に行く際の必需品。

ショールーム向かい側のリクルートルームという部屋は、個室が必要な場合の商談や、大規模な打ち合わせなどを行う際に使用されています。

中に入ると、ファッションや採用などに関する本やテキスタイルなどが飾られていました。

世界最大級の素材見本市、プルミエール・ヴィジョン・ファブリックに出展した際に展示した、独自開発の生地などが展示されている。紙からできたパルプ100%のレザー見えする「和紙レザー」や、英式紡績機を使って開発したウール100%の生地。後者はシワがいっさい寄らない機能性を兼ね備えている。
昨年の新入社員が選考時に描いてくれた採用チームの似顔絵。

海外トップメゾンと商談を行う、北参道ショールーム

最後に訪れたのは、北参道から徒歩4分、原宿駅から徒歩10分ほどのショールーム。ショールーム兼オフィスとして機能しており、グローバルトレードセクションとサステナブルセクションの約25名が働いています。

まず、入った感想は、眺めがよすぎる!

新宿まで一望できるオフィスでは、海外のメゾンブランドなどとの商談や打ち合わせが行われているのだとか。

海外ブランド向けに自社で開発した生地やサンプルが展示されていました。

天然繊維から合成繊維まで幅広い素材を扱い、ものづくりに取り組んでいます。サステナブルセクション プロダクションチームの村上さんは、「メーカーが作らないものや、世の中にまだないオンリーワンのものを求められることが多い。自身も気付けていないテキスタイルの魅力を伝えて、お客様の要望に応えられるような商品を作っている」と話します。

さらに、チームの特徴は、営業と企画が分断されていないこと。海外向けの生地は、基本的に営業が手がけているそうです。

そんなお話を聞いて、タキヒヨーの経営哲学「客六自四」の精神を改めて実感しながら、今回のオフィスツアーを終えました。

同社は、継続就業率94.4%という高い数字を誇りますが、その秘訣について森さんに尋ねると、「優しさ」だと言います。

実際、同社では産休・育休を経てスムーズに復帰できる環境の整備を進めているそうです。また、子育てと仕事を両立している社員もおり、一人ひとりのライフステージに寄り添う企業風土が根付いていることが分かりました。

実際に社員の皆さんのお話を伺い、働き方を間近で見ることで、タキヒヨーならではの魅力を感じる機会となりました。

今回ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!


タキヒヨー株式会社では、新卒やデザイナーを絶賛募集中。興味のある方はもちろん、繊維商社を見ていなかったという方もぜひチェックしてみてください!

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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