DAY2

株式会社READY TO FASHIONは2020年7月16日(木)〜22日(水)の1週間、ファッション・アパレル業界のキャリア・市場の動向などを知るライブ配信イベント「READY TO FASHION LIVE WEEK」を開催しました。

本イベント内で業界を牽引する14社と共に各日で行った、EC・スタートアップ・業界動向・キャリア・繊維商社の5つのテーマについてのオンライントークセッションの様子をレポートしていきます。

今回のテーマは「社長に聞く!スタートアップ企業の働き方は?」。

サブスクリプション・D2C・プラットフォームといったキーワードを元に、成長中の3社の社長が登壇。後編では、ベンチャーで働くメリットやベンチャーで活躍する人の特徴などを伺いました。

前編はこちら↓


パネルディスカッション登壇者

上田徹(株式会社オムニス 代表取締役)

1982年熊本県出身。高校卒業後、アパレルショップの販売員からNZへ語学留学。その後、独学でITを学び、国内外のIT企業、日本HP、サイバーエージェント、リープマインドなどでフリーランスのPM、エンジニア、UI/UXデザインなどを経験。3社目の起業としてオムニスを設立。

清川忠康(オーマイグラス 株式会社代表取締役社長)

1982年大阪府生まれ。2005年に慶応義塾大学法学部、2006年にインディアナ大学大学院を卒業後、UBS証券、経営共創基盤を経て、スタンフォード大学経営大学院に留学。2年次在学中にオーマイグラス株式会社を創業。オーマイグラスは、D2Cメガネリテイラーとして、Oh My Glasses TOKYOの屋号で日本最大級のメガネ通販サイトと実店舗を運営。最近は、Youtuberめがねシャチョウとしても活動開始。主な著書「スタンフォードの未来を創造する授業」(総合法令出版、2013年)。

山口絵里(株式会社FUN UP 代表取締役)

文化服装学院ファッションビジネス科に進学。世界の市場を自分の目で見るため、21歳で単身世界一周の旅へ。帰国後は経営者を志し製造業界でMD、バイヤーやEコマース事業の立ち上げ、ヤフーでのWebディレクターを経験後、2011年株式会社FUN UPを設立。2016年に世界中の誰もが簡単にリスクなくアプリでブランドをつくり販売できるOEMプラットフォーム“monomy”をローンチ。同システムをto Bへも展開。クリエイターやインフルエンサーのアクセサリージュエリーのD2Cブランドを100ブランド以上立ち上げと運用を支援事業も運営し、モノを介した”個の価値の最大化“と衰退が懸念される”日本の製造業の活性化“を目指す。


ベンチャー企業で働くメリットって?

──まずは、ベンチャー企業で働くメリットとデメリットについて伺えればと思います。皆様が最初にベンチャーで働きはじめたきっかけなどもあわせて教えてください。

上田:最初は22歳頃に熊本のIT企業に入りました。ベンチャーのいいところをあえて言うならば、意思決定の早さと真新しいことにすぐに取り組める点ですね。

清川:ベンチャーで働くメリットは若い人でも仕事を任される点です。10〜20年後にはすごいと言われる会社がなくなっているかもしれないので、これからの時代は信じられるのは自分しかいないんです。これだけ世の中の環境変化が激しいなかで、自分の手で稼げる力をつけられるかどうかが重要になるので、20代中盤まで大企業で雑用なんかやってられないですよ。

転職マーケットで大企業出身の40〜50代の方が増加していますが、現状有名企業で1000万貰っている人でも300〜400万程度しか出せないレベルの人が多いんですよね。会社名が本当に何の意味もない世の中になってきていると思います。大企業のメリットは規模が大きいプロジェクトをできる点だと思いますが、リスクがありすぎるので若い人がアサインされてもまともな仕事をさせてもらえません。ベンチャー以外は選択肢がないと思いますね。

──挑戦できる環境がある点が1つのメリットということですね。

山口:私はもともと経営を学びたいと思っていたので、最初は社会人向けの英会話スクールや幼児英会話の講師派遣事業などを行うベンチャーに入社しました。決裁権を持たせてもらえたので、自分で全てを決めないといけないですし、何をやったらうまくいくのかを延々考える毎日でした。その経験はいまにも役立っています。

30代からベンチャーに転職するのは遅い?

──年齢が30代以上の方が転職してベンチャーに行くメリットとデメリットを教えてください。

上田:ベンチャー企業では何かしらのドメインエキスパートが必要な場面があるので、キャリアがある方は有利です。大企業と取引することがあるので、しっかりした経験を持つ人を求める場面というのはすごく多いのではないでしょうか。

山口:FUN UPの場合は製造とデジタルの両方の技能が必要な業態なので、製造やデジタルの領域で専門的に長く働かれていた方に入社いただくことが多かったです。ただ、その両方をディレクションできる方はとても少ないんですよね。

私の場合はその両方の現場で働いていたので両方の気持ちがわかる立場ではあるのですが、製造とデジタルの両方の能力を持っている方は強いと思うので、そういう人に入ってほしいと思っています。

清川:30過ぎての転職はちょっと遅いですね。ベンチャーに行くのであれば、27歳ぐらいまでに転職した方がいいのではないでしょうか。ベンチャーと大企業で求められるレベルは違います。例えば、僕がいた外資系証券会社からベンチャーのCFOになる方は多いですが、ベンチャーで必要なスキルは26歳ぐらいの人のレベルでも、そこからファイナンスのことを学べれば十分です。

なにより30代でも20代でもベンチャー企業が出せる給料は一緒です。僕の知り合いのベンチャー経営者に聞いても、むりやり出してる場合もあります。また、ベンチャーで働くには体力が必要です。30代後半になってくると体力が落ちてくるので、ついていくのはけっこう大変だと思いますね。

──一般的にベンチャーは忙しいイメージがあるかと思います。大企業と比べて、実際の働き方はどのような状況なのでしょうか?

上田:僕らの場合はお子さんがいる方も多く採用しているので、働き方は人によって選べるようにしています。オムニスはジョブドリブンでやっている会社なので、全員が同じ方向に向かえるよう工夫をしながら、さまざまな雇用形態のメンバーができる範囲でコミットできる仕組みになっています。

清川:オーマイグラスでは今回の新型コロナウイルスの影響を考慮して、評価制度に若干修正を加えてより成果主義にしています。効率的に働けるように整備していますが、ある程度ハードワークをしないと結果は出ないと社内でも継続的に伝えていますね。明確に長く働けとは言わないですけど。また、残業の多寡は社長の年齢にも左右されると思います。社長が若いと体力があるので、労働時間と相関があるのではないでしょうか。

社長との相性でベンチャーは選べ?

──ビジネスモデルや社長、市場などさまざまな指標があるかと思いますが、どのような基準を持って会社を選ぶべきなのでしょうか?

上田:会社規模が小さい企業であれば、まずは社長かなと思います。規模が大きくなれば成長率やビジネスモデルを軸に考えられるので、その点は分けた方が考えやすいのではないでしょうか。

清川:社長との相性が重要だと思います。僕自身もあえてわかりやすく振る舞っているのですが、ベンチャーの経営者はけっこう癖があります。企業規模や成長率があれば我慢できるかもしれませんが、性格があわなければ仕事の進め方もあわないと思います。

山口:お2人の言う通りで、共感する人がいるかどうかは重要だと思います。FUN UPはすごく泥臭いので、イメージとのギャップを感じられる方が多いです。実態含めて共感しているとフィットはするのかなと。

──もし皆様がベンチャーで働きたい転職希望者だったらまず何をしますか?

山口:私はもともと短期でトライさせてもらえる会社を探して転職していたので、私であればどの程度の決裁権を持たせてもらえるのかを面接で聞きますね。ベンチャーであれば社長と直接お話しできる機会が多いので。

上田:まずはTwitterやnote、YouTubeなどを自分で運用してみれば、自分の特徴や課題、大切な価値観が明らかになってくると思います。その特徴や価値観に合う会社を見つけて、社長と相性が合うようであれば入っちゃえばいいと思います。

ベンチャーで活躍できる人とは?

──面接ではどのような部分を見るのですか?

清川:他責傾向があるかどうかは見ますね。面接時に出来事をどのように解釈するのかを細かく聞くのですが、転職理由に環境や上司を挙げる人は基本的に他責傾向があるので採らないです。

上田:その人のスキルとマインドを見ます。コミュニケーションやプログラミング、デザインのスキルはもちろんですが、重要視しているのはマインドです。ベンチャーは不条理なことが多いので、ギブとテイクのバランスが取れないことはよくあります。それでも頑張れる人はベンチャーでもうまく働けるのではないでしょうか。

山口:ベンチャーは大変なことしかありません。キラキラした仕事を期待しすぎている方には思い通りにいかないことしかないということははっきりお伝えします。それでもやりたいという心構えや強い思いがある人は採用しますね。

──では最後に、皆様の会社で活躍している人の特徴について教えてください。

山口:自律している人は自分の中で思考停止せず自由にトライできているので、提案も多く出してくれます。仕事を待っていたり、会社のせいにしてしまう人はやらされている思考になってしまうので、自ら立ち回って現状を変えていける人は活躍しています。

清川:ベンチャーはうまくいかないことが多いので、メンタルが強い人の方がいいかなと。我慢強くやっていれば前に切り開けていくので、あまり気にしない人の方が活躍しやすいと思います。

上田:良くも悪くもカオスな環境を楽しめるかどうかは大事だと思います。もしくは嫌なこと辛いことを溜めない人。数日で悪いことを忘れられるノリは大事にしています。オンオフがしっかりしている人はよく活躍している印象ですね。


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秋吉成紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

ライター・編集者。1994年東京都出身。2018年1月から2020年5月までファッション業界紙にて、研究者インタビューやファッション関連書籍紹介記事などを執筆。2020年5月から2023年6月まで、ファッション・アパレル業界特化型求人プラットフォーム「READY TO FASHION」のオウンドメディア「READY TO FASHION MAG」「READY TO FASHION FOR JINJI」の編集チームに参加。傍ら、様々なファッション・アパレル関連メディアを中心にフリーランスライターとして活動中。