ファッションサークル「早稲田大学繊維研究会」と繊維商社のタキヒヨー株式会社が11月17日(日)に コラボ展示会「夢幻泡影」を開催しました。

展示会当日には、次世代サステナブル素材PLA(ポリ乳酸)繊維を基にタキヒヨーが企画開発した生地を使って早稲田大学繊維大学研究会が制作した作品を展示。

また、タキヒヨーの森氏をファシリテーターに迎え、早稲田大学繊維研究会のほか、本展示会の会場となったクリエイティブスペース「BABABASE」を運営する広研印刷、ウェディングドレスショップを運営する「Dress the Life」も加わり「異なる視点が紡ぐ、クリエイティブとサステナブル」をテーマにトークセッションを行いました。

>>トークセッションは動画からもご覧いただけます!

参加団体

早稲田大学繊維研究会

1949年に創立された、国内最古のファッションサークル。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦、「ケイスケカンダ(KEISUKE KANDA)」の神田恵介をはじめとした多くのデザイナーを輩出。「ファッション業界を取り巻く現状に対して、ファッションを媒体として批評を行う」ことを活動の軸としており、その発表の場として、ファッションショーを毎年行っている。

株式会社渕上ファインズ(Dress the Life)

1895年に呉服屋として福岡で創業を開始。全国約40店舗の自社ドレスショップを運営し、ウェディングドレスのレンタル事業を行っているほか、オリジナルドレス / 和装 / タキシードの企画やウェディングのプロデュース、オウンドメディアの運営も行っている。

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広研印刷株式会社

大手企業の社史・年史、WEBサイトなどの電子メディア制作からイベントの企画運営までを手がける総合印刷会社。教科書、医学書、実用図書、協会団体などの一般書籍や、広告代理店からのポスター・カタログなどの受注を行っている。2015年には、クリエイティブスペース「BABABASE」をオープンし、サードプレイスとしてワークショップや展示会などを開催している。

タキヒヨー株式会社

名古屋に本社を置く繊維商社。1751年に創業以来、ファッション流通業界における有数のリーディングカンパニー。「Create Future with Passion」をビジョンに、ファッションを中心とした繊維製品の企画・製造・販売を行っている。近年ではサステナブルソリューションカンパニーとして、ファッションにおけるサステナビリティ実現にも注力。2024年1月よりオウンドメディア「__ for good(ブランク フォー グッド)」を運営。

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各者から見た、サステナブル意識に対する現状

タキヒヨー 森さん(以下、タキヒヨー 森):サステナブルという言葉の表面的な意味だけが一人歩きしてしまうと、究極的には、新たに服を作らなければいいという話になってしまう。でも、ファッションはそもそも心を豊かにするもの。いろいろな選択肢がある楽しさを、このトークセッションを通して伝えられたらいいなと思います。

森 康智(もり・やすとも)タキヒヨー株式会社採用プロジェクトチーム兼広報・IRチーム。2014年に東京大学大学院修了後、新卒でタキヒヨーに入社。新卒採用、キャリアコンサルティングやPRの専門知識を生かし、多様な人々の「問いと語り」によるシナジー創出を目指す。同社が運営するウェブサイト「_ for good」のファシリテーター。

渕上ファインズ 谷口さん(以下、渕上ファインズ 谷口):そうですね。既に日本でメジャーであるウェディングドレスのレンタル事業は環境負荷が少ないビジネスモデルですが、よりサステナブルに近づくには、使い古して傷んでしまった後にアップサイクルする取り組みなども必要。

一方海外では、レンタルではなく購入する文化が一般的です。ファッション業界を通したさまざまな社会課題がある中で、日本のようなレンタルの文化を世界にも発信していったら、社会への貢献度もますます高くなるのではないでしょうか。

タキヒヨー 森:Dress the Lifeでは、リメイクされたウェディングドレスも製作されていますよね。そういった商品を求める国内のお客様は多いのでしょうか?

渕上ファインズ 谷口:国内のお客様はまだまだ少ないですね。中古の文脈に焦点を当ててしまうと、抵抗感を感じてしまう方も多いのかもしれません。

なので、デザイン性を含めて価値を感じてもらえるプロダクト作りを目指しています。日本のようなレンタル文化がない海外では、オーダーしていただいたドレスをさらに長く使っていただくことに重きを置いて作品作りをしています。

谷口 真紀(たにぐち・まき)株式会社渕上ファインズ(Dress the Life)採用担当。寿命を迎えたウェディングドレスの再活用や、ドレスをレンタルする文化のない欧米でのレンタルドレス普及の可能性を模索している。

タキヒヨー 森:中古とは違った形で訴求するには、製品のストーリーも含めて見せていくことが大切ですよね。

広研印刷 小川さん(以下、広研印刷 小川):これまで、ワークショップを積極的に開催していましたが、これからの時代、「もの作り」から「こと作り」がより重要視されると考えています。そういったことを実験的に行う場としても、クリエイティブルームであるBABABASEを有効活用できるのでは。

小川 直人(おがわ・なおと)広研印刷株式会社営業第4部所属。営業活動とともに、「楽しいを創造する」BABABASEを活用したワークショップの企画にも携わり、「共創の場」づくりに取り組む。現在、余剰生地を活用した「やってみようえほん展」をBABABASEにて定期的に開催中。

タキヒヨー 森:サステナブルやエシカルに対して、なんとなくポジティブなイメージは付随しているけど、実際は、具体的にどう行動を起こせばいいのかなどを知る機会が少ないという課題は感じています。

早稲田大学繊維研究会 小山さん(以下、早稲田大学繊維研究会 小山):同年代と接していても、興味関心はあるけど、自分のライフスタイルや消費行動につなげるに至っていない人は多いんじゃないですかね。知識があれば、もっとアクションにつながっていくのにな、と感じます。

小山 萌恵(こやま・もえ)早稲田大学繊維研究会のコンセプト発案者。主な活動の軸となるファッションショーでも発案者として全体のディレクションを担う。

トレンドとしてサステナブルを消費しないために

タキヒヨー 森:会社説明会で自社のサステナブルな取り組み事例を紹介しても、単なる宣伝になってしまう。一方的に伝えるのではなくて、コミュニケーションを取りながら共創することも大切だと思うんですよね。

渕上ファインズ 谷口:去年から、学生との接点を増やし始めたのですが、関わっていくなかで、サステナブルはもちろんのこと、着物の文化を継承していきたいと思うように変化してきました。

昨今では、日本の結婚式の場で和装が選ばれる機会が減っています。弊社が呉服屋としてスタートしたこともあり、文化が途絶えてしまうことや関わっている職人さん達の仕事がなくなっていってしまうことに寂しさを感じます。

なので、将来、挙式を挙げる人もいる世代の学生の方とお話しすることで、着物って素敵だなと、手に取ってもらう機会が増えるのかなと期待しています。

タキヒヨー 森:若い世代からしても、熱意を持って企業や上の世代が取り組んでいる姿はポジティブに捉えられるよね。

早稲田大学繊維研究会 小山:そうですね。文化の継承は、持続可能なことにつながっているので、素敵な取り組みだと思います。

タキヒヨー 森:國澤さんは入社して2年目ですが、産学連携を経験してみて、自分の中で変化はありましたか?

タキヒヨー 國澤:消費者だった時は、製品に対して、かわいいやかっこいいなど表面上でしか判断できなかったことが多かったのですが、仕事を通して製品の背景を学んでいく中で、背景を伝えていくことの大切さを実感しましたね。

サステナブルが消費行動の選択肢になっていない方もまだ多いと思うので、消費者視点を持ち続けながら仕事をしていきたいです。

國澤 あや乃(くにさわ・あやの)タキヒヨー株式会社サステナブルセクションプロダクションチーム。タキヒヨーのもの作りやビジネスに取り組む姿勢に魅力を感じ、2023年入社。「学ぶ者」としての視点から「_ for good」に関わり、サステナビリティのプロフェッショナルを目指す。

タキヒヨー 森:必ずしもサステナブルな選択を取れるわけではない中で、どんな一歩があったら前進すると思いますか?

早稲田大学繊維研究会 小山:今あるサステナブルな商品は、アースカラーのナチュラルな商品が多く、デザインバリエーションが豊富ではない印象です。今後、いろんなデザインが増えて、サステナブルの観点を抜きにしても選びたいと思ってもらえるプロダクトを増やしていくことが大切ではないのでしょうか。

タキヒヨー 森:デザインについては、実際のところ、どうなんですか?

タキヒヨー 國澤:サステナブル素材を使用して、それをデザインに落とし込むとなると、最初に採用されるのは、シンプルなTシャツやスウェットであることが多いですね。

ただ、市場をリサーチをしていると、デザイン性がある商品でも、下げ札にサステナブル素材と書いてある商品も意外とたくさんあったりします。それを知ってもらうためにも、私たちが分かりやすいように背景を伝える努力はしないといけないと思いますね。

タキヒヨー 森:発信側と受け取る側にギャップがあるのかもしれないですね。作り手として、こういうことを知ってもらえたら広がるのに…と感じることはありますか?

渕上ファインズ 谷口:サステナブルという言葉が先行してしまっていて、その言葉があればよしとされていることも少なからずあると思うんです。

サステナブル商品であっても、大量生産されて輸入されるとなると、結局移動による環境負荷もあったりして、本当の意味ではサステナブルではない。そういった知識をしっかり持つことも大切なんじゃないですかね。

あとは、サステナブル商品や工芸品は高価で、値段が購入のハードルになってしまう一面もあると思うのですが、一つの商品を長く使うことが根付いていけば、そのハードルも超えられるのでは。

早稲田大学繊維研究会 小山:消費者代表としても共感します。なぜサステナブルな観点が必要なのかという本質的な理解を広めていかないといけないと思います。

タキヒヨー 森:今、業界として危惧されていることは、トレンドとしてサステナブルが消費されてしまうのではということ。グリーンウォッシュが横行しないことも大切です。

タキヒヨー 國澤:現在、担当している海外のブランドでは、サステナブル商品以外は輸入しないなど、法律として決まりがあることもあり、日本と比べるとギャップがあります。

もの作りに関わる方の人権にも配慮していかないと、真のサステナブルではありません。完璧なサステナブルはかなり難しいけど、できるところからやっていきたいですね。

広研印刷 小川:BABABASEでは、一冊の絵本を作るワークショップを実施しています。企画ではキャラクターの名前を考えてもらい、デザインでは色塗り、校正・校閲では間違い探しなど、絵本が出来上がるまでの各工程にアクションポイントを設けています。

このワークショップを通して、保護者の方からも学びになるという声をいただくことがあります。誰が見ても一目で分かるような砕き方をしてあげて、そこからより詳しく知りたい人に向けた動線を提供できたらいいなと考えています。

タキヒヨー森:まずは地道なところから取り組んで、アクションのきっかけになればいいですね。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。